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量子コンピューティング技術
FORTUNE 2019年7月18日

IT media


(このコンテンツは、Yahooの記事をコピペしたものです)


田楽男











Amazon、量子コンピュータに本腰 3社の量子ハードでプログラミングできる「Amazon Braket」発表 研究所設立、共同研究プログラムも

2019/12/03 13:06


© ITmedia NEWS 量子プログラミングの学習から実行・解析環境までを提供する「Amazon Braket」

 米AWSは12月2日(現地時間)、量子コンピュータのフルマネージドサービス「Amazon Braket」をAWSのイベント「re:Invent 2019」で発表した。同サービス上で記述した量子プログラムを、複数社の量子ハードウェアで実行できる。

 Amazon Braketは、量子プログラミングの学習から実行・解析環境までを提供する。学習にはステップバイステップガイドやチュートリアル、リソースライブラリを用意。プログラミングは同サービス上のJupyter Notebookで行う。記述したプログラムは従来のハードウェアでシミュレートすることで、コードに問題がないかテストできる。

 量子ハードウェアでの実行は、米Rigetti Computingの量子ゲート方式の量子コンピュータ(超電導量子ビット採用)と、米IonQの量子ゲート方式量子コンピュータ(トラップイオンによる量子ビット採用)に加え、カナダD-Wave Systemsの量子アニーリングマシン(超電導量子ビット採用)から選べる。

量子コンピュータのみの計算の他に、量子コンピュータと従来のハードウェアによるハイブリッド計算も実行可能。量子ハードウェアの実行時間分の料金がかかるという。

 計算結果やテスト結果はクラウドストレージ「Amazon S3」上に保存され、イベントログや、ステータス、実行時間などの各パフォーマンス指標は「Amazon CloudWatch」から確認できるとしている。

 Amazon Braketの「ブラケット」は、量子力学の計算でベクトル表記に用いる「ブラ-ケット記法」に由来する。
 また、AWSは量子コンピュータ技術を研究する「AWS Center for Quantum Computing」と、共同研究プログラム「Amazon Quantum Solutions Lab」の設立を併せて発表した。

 AWS Center for Quantum Computingでは、米カリフォルニア工科大学とともに量子コンピュータを大量生産できる可能性のある技術の開発や、量子コンピュータで解決できる問題の特定について取り組んでいく。

 Amazon Quantum Solutions Labは、AWSユーザーと量子コンピューティングの専門家をつなぐプログラム。ユーザーのコンサルティングには、Amazonの他、1QBit、Rakho、Rigetti Computing、QCWareなどの量子ベンチャーがパートナーとして名を連ねている。





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量子コンピューティングは夢から現実へ



ノーベル賞を受賞した物理学者のリチャード・ファインマンは、1982年、並外れて処理能力の高い計算機を構想しました。演算をごく小さな粒子に委ねる計算機です。ファインマンは、原子を構成する粒子のレベルで自然界を支配する原子物理学の法則にちなみ、このアイデアを「量子」コンピュータと呼びました。

現在では、富士通、IBM、グーグル、インテル、マイクロソフト、および中国のアリババなど、テクノロジー業界の最大手企業が、このアイデアの実現に取り組んでいます。このような最先端のマシンの開発競争には、歴史ある大企業だけでなく、米国カリフォルニア州を拠点とするリゲッティ社のような新興企業も加わり始めました。量子コンピュータが実現すれば、エネルギー、医療、金融をはじめとするさまざまな業界が、未だかつてないスピードでデータを処理できるようになり、大きな変革が起こると予測されているのです。

大手銀行のJPモルガン・チェースと自動車メーカーのダイムラーは、このテクノロジーのテストをすでに開始し、最終的にはライバル企業に先行して成果を上げることに期待しています。

各国政府も、この分野に地政学的な意味があることに気づいています。すでに中国は100億ドルをかけて量子コンピューティングの国立研究所を建設しており、西側諸国では、後れをとる可能性を懸念する声が上がっているという具合です。

先頃の、米国政府機関が機能不全に陥った時期に、共和党と民主党は両者の意見の不一致を一旦脇に置き、10億ドルを超える予算を確保して、「量子に関する統合国家戦略を策定」しました。敵対する陣営が協力に踏み切る要因として、他国に出し抜かれる恐怖心に勝るものはありません。

では、量子コンピュータの構造を生物に喩えて、その頭脳、心臓、骨格、神経、外殻にあたる部分を個別に見ていくことにしましょう。




1. 頭脳
CPUはよく知られていますが、ここで登場するのは、QPUと呼ばれる量子処理ユニットです。たとえば、スタートアップ企業のリゲッティ社による写真の量子コンピュータは、金メッキされた銅製のディスクを特徴とし、その内部に計算機の頭脳を構成するシリコンチップを備えています。コンピュータのそれ以外の部分は、ほとんどがそのチップを低温で安定的に保つために設計されたものです。

2. 心臓
ツナ缶のような熱交換器の下に、「ミキシング・チャンバー」が取り付けられています。その内部では、液体ヘリウムの同位体(ヘリウム3とヘリウム4)が混ざり合い、このヘリウムの分離と蒸発によって熱が放散されます。

3. 骨格
複数の金色のプレートは、ウェディングケーキのような量子コンピュータにおいて層を成しています。これらの層は、冷却ゾーンを隔てる役割を果たすものです。3の層でも絶対零度近くまで温度が下がりますが、さらに最下層では宇宙空間の数百倍も冷たい絶対温度0.01Kに冷却されます。

4. 神経
光子を運ぶ同軸ケーブル内のコイルは、ただの飾りではありません。これらは、内部の過冷状態によって生じるストレスを和らげ、ケーブルを保護するために存在します。コイルがなければ、ケーブルは音を立てて折れてしまうでしょう。

5. 外殻
量子コンピュータの動作中は、5つの入れ子構造の覆い(画像上部に見える白い容器など)がマシンを包んでいます。このロシアのマトリョーシカ人形のような容器は、熱シールドとして、マシン内部が過冷され、真空で密閉された状態を維持する役割を果たすものです。


「これはまるで、宇宙開発競争の現代版のようです」と話すのは、インテルの量子ハードウェア担当ディレクターであるジム・クラーク氏です。

量子コンピュータ開発の一般的なアプローチでは、これまでの半導体業界の成果を基盤とする、超伝導回路を使用します。通常のコンピュータが、「0」か「1」のいずれかの状態を保持するビットを情報の最小単位として扱うのに対し、量子コンピュータでは「キュービット」とも呼ばれる量子ビットを使用します。

不思議な話ですが、この量子ビットの粒子は、一度に複数の状態を共存させて保持することが可能です。ただし、これらの粒子の流動性を維持するためには、それぞれが分離された状態を保ち、低温を維持する必要があります。それも、ごくごく低い温度でなくてはなりません。

そのため、IBMの量子戦略責任者であるボブ・スーター氏は、同社が1月に公開した20キュービットの量子コンピュータを紹介する際に、「皆さんがご覧になっているのは、世界一高価な冷蔵庫です」と説明したほどです。

一方、IBMで量子コンピュータの構築に関わっていた物理学者が創業したリゲッティ社は、小規模であるにも関わらず、巨大企業に挑戦できると確信しています。同社は、量子コンピューティングのクラウドサービスを提供する会社であり、そのターゲットは、量子コンピュータが従来のコンピュータを凌駕することを指す「量子の優位性」を最初に実現しようと競争を繰り広げている研究者たちです。

科学者たちは、今後数年で徐々に量子の優位性が実証されていくと予測しながらも、このテクノロジーが実際に何らかの有意義な作業を扱えるようになるまでには、まだ最長で10年はかかると考えています。

量子コンピューティングの現状について、そのリゲッティ社の副社長であるベッツィ・マシエッロ氏は、次のように述べました。

「実際に機能する量子コンピュータを私たちが構築できるのか? そして、それを大きな規模で繰り返し機能させられるのか? と、いつも皆さんから質問されてきました。
それに対して、私たちは現時点の市場を対象に『イエス』と答えることができます。私たちは現実に量子コンピュータを構築でききており、それは正しく動作するものです。しかも、製品を生産するレベルで、それを繰り返し機能させることもできています。」

ということで、量子コンピューティングが、ここまで実現していることを理解していただけたでしょうか? 競争の火ぶたは、まさに切って落とされたのです。

この記事は、2019年3月に「Calculating Quantum Computing’s Future(量子コンピューティングの未来を予測)」というタイトルでフォーチュン誌に掲載されたものです。

この記事はFORTUNE向けにロバート・ハケットが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comにお願い致します。

FORTUNE   2019年7月18日




グーグルの量子コンピューター発表は、要するに何がすごいのか
10/24(木) 12:05配信ダイヤモンド・オンライン yahooの記事をコピペしました

米グーグルの量子コンピューターで使われた半導体hoto:Google


米グーグルは23日、量子コンピューターを使って、最先端のスーパーコンピューターよりも高速で計算する成果を出したと発表した。社内の研究チームによる論文は同日の英学術誌ネイチャー(電子版)に掲載され、学術的実績としても高い評価を受けている。一体この発表、何がすごいのか? サイエンスに縁遠いビジネス層にも分かるように、量子コンピューター分野の若手起業家2人に解説してもらった。
(聞き手/ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)

● 計算速度でついに スパコンを超えた

 文系記者の素朴すぎる質問に答えてくれたのは、QunaSysの楊天任代表と、Jijの山城悠代表だ。いずれも1994生まれで昨年起業した。楊氏は東京大学大学院修士課程(情報理工学系)を休学中、山城氏は現在も東京工業大学の博士課程(理学院物理学系)に籍を置いており、研究者の視点を持ちながら量子コンピューターのビジネス化に取り組んでいる。2人は週刊ダイヤモンド10月26日号の第1特集「5年で大化け!サイエンス&ベンチャー105発」で量子コンピューターについて4ページにわたって解説しており、今回の緊急解説も快く引き受けてくれた。

 ――今回のグーグルの発表は、どこがすごいのでしょうか。

 楊 研究の具体的な内容は、最速のスパコンで1万年かかる計算問題が、グーグルの量子コンピューターを使って200秒で解けた、というものです。ポイントはこの成果によって、「量子超越性(Quantum Supremacy)を達成できた」ということ。これがコンピューター研究において非常に大きな前進なのです。

 ――量子超越性って何ですか。

 楊 これまでのコンピューターでは長い時間がかかる計算を、量子コンピューターなら高速で処理できることです。量子超越性を達成できるなら、実際の社会では役に立たない問題でもよい、というところがミソでもあります。

 ――実際には何を計算したのですか。

 楊 量子コンピューターの動作をシミュレーションしました。

 ――量子コンピューターで量子コンピューターをシミュレーション、ですか。「自分の家は自分が一番よく知っている」的で、ずるい気がしますが。

 山城 問題が何であれ、これまでのコンピューターよりも速く計算できた、という意義は非常に大きいんですよ。従来の研究では、これまでのコンピューター以下の速度でしか量子コンピューターではできなかったわけですから。

 1981年に米物理学者のファインマンが原型となるアイデアを示して以降、「量子コンピューターの理論はあるが、本当に可能なのか」という状態が続きました。今回の発表に至るまでにも、重要な研究成果はいくつかあったのですが、「量子コンピューターでこそできることがある」という1点については、ざっくり言えば机上の空論状態だったのです。

● 「グーグルは大げさ」 IBMの批判は正しいのか

 ――近年はニュースでも量子コンピューターという言葉を見かけるようになっていましたが、まだ机上の空論だったのですね。そもそも量子コンピューターってどういうものですか。

  量子コンピューターは、量子力学の「重ね合わせ」を利用した計算機です。スパコンのようなこれまでのコンピューターは、ビット(論理素子)が0か1のどちらかの状態で計算します。これに対して量子コンピューターは、量子ビットの0と1を重ねた状態で計算します。そうすると計算する対象によっては、スパコンよりはるかに速く、正しい答えを得られるものがあるのです。

 ――量子力学を使うというところで、もう分かりません。

 楊 そうですよね。原案の提唱者であるファインマンも、「量子力学を理解できたと思ったなら、それは量子力学を理解できていない証拠だ」と言ったぐらいですから、専門外の人はすぐには理解しにくいと思います。

 ――米IBMは今回のグーグルの発表に対して、「スパコンで同じ問題が2日半で解けた。グーグルは大げさだ」と批判しています。

 山城 これまでのスパコンだと1万年かかる、という点は確かに議論の余地がありそうです。特に今回グーグルが計算する際に使ったアルゴリズムは量子コンピューターに合わせたものなので、逆にスパコンに合わせたアルゴリズムを作れば、もっと違う結果が出る可能性は十分にあります。研究者の間でも、今回の成果で量子超越性が「完全に」達成できた、と考えている人はほとんどいません。これから、スパコンに「やり返される」ターンになると思います。

 ただ1万年か2日半かの議論があったとしても、今回の成果は重要なマイルストーンとしての意味が十分にあります。スパコンが量子コンピューターに勝てなかった、ということ自体に意味があるのです。

● ライト兄弟の有人動力飛行に 匹敵するマイルストーンだ

  僕は今回の成果は、ライト兄弟が有人動力飛行に成功(1903年)したのと同じインパクトを持つと思います。最初に空中に浮上した時間はたった数秒。「それで飛んだことになるのか」「実際には何の役にも立たないじゃないか」とも言えますが、この数秒のブレークスルーがその後の飛行機の進化を加速させる重要なマイルストーンになったのです。

 ――重要な一歩が踏み出されたとして、今後は何が課題ですか。

  次のマイルストーンは、実用的な問題で量子コンピューターの方が速く正確だと示すこと、つまり「量子加速(Quantum Speedup、またはQuantum Advantage)」が達成されることです。そのためには、もっと量子ビット数の大きい本格的な規模の量子コンピューターができることや、優れたアルゴリズムが考案されることが必要です。

 ――今回グーグルが使った量子コンピューターは、どの程度の規模だったのですか。

 山城 53量子ビットです。研究者が考える量子コンピューターの最終形は100万量子ビットなので、まだまだ小規模なものです。ですが、グーグルは72量子ビットのものを開発中です。すごくざっくりとした表現にはなりますが、1量子ビット増えると性能は倍増します。72量子ビットが実現されれば性能は飛躍的に向上します。実際にはもっといろんな要素が絡むのでこの通りではありませんが、性能面の進歩は大きい。100~200量子ビットに達すれば、産業で実用できると言われています。

 ――今回の成果を受けて、量子コンピューターは実際に産業界で使われるようになると考えてよいですか。

 楊 グーグルは2022年までに、環境問題に役立つ成果が生まれるという主旨の主張をしています。僕の実感から言ってもこれから2~3年程度で、化学業界で量子コンピューターによる変化が起こりそう。つまり何と何を合成すればもっと環境負荷が低く、低コストで化学物質を作ることができるのか、というシミュレーションが従来のコンピューターより容易になると思います。それは決して、たくさん生まれるわけではないけれど、1つでも2つでも新しい合成方法が判明すれば、産業的インパクトは大きい。

●量子コンピューターは これから冬の時代に突入?

 山城 量子コンピューター研究者にとっては、やりがいのある数年になるでしょうね。何がどこまでできそうか、ほんのりと見えてきたわけですから。

 でも僕は、産業的にはこれから「量子コンピューターの冬」がやってくると思っています。

 ――こんなに大きな成果が出たのに冬の時代ですか。

 山城 量子コンピューターへの産業界への期待は、グーグルが成果を発表した今がピーク。量子超越性が実現したのか、じゃあ産業界でもあんなことやこんなことができるんじゃないか。そんな期待が今最大化しているわけです。

 でも量子超越性っていうのはあくまで研究上の成果です。楊君が言うような変化は確かにあるだろうけれど、幅広い産業で量子コンピューターを使うにはまだまだ時間がかかります。そういう中で、「何もできないじゃないか」と失望する企業がいくつも出てくると思います。

 ――人工知能(AI)も冬の時代を経て今に至っていますものね。

 楊 量子コンピューターを開発する企業も、利用する企業も、今後二分されていくでしょうね。経営層が量子コンピューターの現状と可能性を正しく理解して、しっかり投資を続けられるか。または「スパコンより速くて何でもできるんでしょう?」と誤解して一時的に投資してみたものの、「何も成果がない」と言って短期で撤退するか。

 山城 そして多くの企業が失望した数年後に、産業で使う上ですごく重要な量子コンピューターのアルゴリズムがぽこっと出てくる。僕はそう予想しています。その時に日本の企業や研究機関がどれだけ残っているか。

 楊 ぜひ覚えておいてほしいのは、量子コンピューターの種となる研究成果が実は日本から生まれていることです。

 今回、グーグルで成果を出した研究者は米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョン・マルティニス教授。量子コンピューターがノーベル賞を取るとしたら彼が間違いなく受賞者の1人です。そして同時に受賞すると目されているのが、東京大学の中村泰信教授。NECの研究所にいた1999年に、量子コンピューターの基本的な回路である「超伝導量子ビット」を開発しました。日本人は本来、理論物理学のような基礎研究で非常に強みがあります。これから始まる量子コンピューターの産業化でも、簡単に諦めずに存在感を示してほしいですね。

 (注)今回の記事で指す量子コンピューターは、「ゲート方式」であり、「量子アニーリング方式」には必ずしもあてはまりません。

ダイヤモンド編集部/杉本りうこ




東工大 西森 秀稔教授が語る「量子コンピューターの現在」、相次ぐ報道の考え方
11/14(木) 6:10配信


東京工業大学 科学技術創成研究院、東北大学 大学院情報科学研究科の西森秀稔教授

 近年、「量子コンピューター」への注目が集まりつつある。米国ではグーグル、IBM、マイクロソフトなどのIT大手や、政府の研究所などが量子コンピューターの研究に本腰を入れ始めている。本稿では、経済産業省政策シンポジウム「次世代コンピュータが実現する革新的ビジネス」の中から量子コンピューターの中でも、「量子アニーリング」の原理を応用したハードウェアが抱える課題と、将来の見通しを紹介する。量子アニーリングの第一人者である東京工業大学 科学技術創成研究院、東北大学 大学院情報科学研究科の西森秀稔教授が現在注目していることとは。

【詳細な図や写真】カナダD-Wave Systemsが販売している量子コンピュータ「D-Wave 2000Q」(出典:D-Wave Systems 報道発表)



●量子コンピューターの「2方式」とは

 2015年12月、グーグルはNASAとの共同研究で、量子コンピューターが一般的なデスクトップPCに比べて1億倍速く計算を処理したと発表した。この発表から、量子コンピューターが注目を集め始め、さまざまな企業が検証を始めるようになった。


 改めて説明すると、量子コンピューターにも大きく分けて2つの方式がある。1つ目は「量子ゲート方式(回路方式)」。これは現在のコンピューターの上位互換に当たるようなコンピューターだ。この方式には長い研究の歴史があり、一般に「量子コンピューター」というと、量子ゲート方式を指すことが多い。

 0、1、そして0と1の重ね合わせ状態を取れる「量子ビット(量子コンピューターの情報単位)」を操作することで、原理的にはどんな計算もできる。また、現在のコンピューターでは時間がかかりすぎて現実的な時間で解けない問題のうち一部を短時間で解くことができる。

 0と1の重ね合わせ状態を利用して、大規模な並列演算ができるからだ。2019年5月20日に開催された「次世代コンピュータが実現する革新的ビジネス~量子コンピュータ/アニーリングマシンが切り開く未来~」(主催:経済産業省)に登壇した東京工業大学 科学技術創成研究院、東北大学 大学院情報科学研究科の西森 秀稔 教授は「量子コンピューターの適用が可能な領域をまずは確認すること」と語る。

 量子コンピューターで処理の高速化が期待できるものの中でも有名なのは「素因数分解」だ。従来のコンピューターでは、数値のけた数が増えていくと計算量が爆発的に増大して、現実的な時間では計算を終えることすらできない。これが量子コンピューターなら現実的な、短い時間で解けるというのだ。

 現在、インターネット通信の暗号化で使用する「RSA暗号」という方式は、大きな値の因数分解が事実上不可能という性質を利用している。量子コンピューターが現実のものとなり、動作を始めれば、RSA暗号は役に立たなくなってしまうだろう。

 ただし量子ビット方式では、IBMやインテルが数十量子ビットの試作機を開発したところで、既存のコンピューターに対してはるかに高性能なコンピューターはまだ現実のものにはなっていない。これは量子ビットがノイズに非常に弱いためである。

 もう1つの方式は「量子アニーリング」だ。この方式は1998年に東京工業大学大学院の博士課程に在学中だった門脇正史氏(現デンソー)と、前出の西森秀稔教授(当時は東京工業大学大学院)と共同で発表したものである。そして、カナダのディーウェーブ システムズ(D-Wave Systems)が開発した、現時点で世界で唯一の商用量子コンピューターである「D-Wave 2000Q」は、この方式で動作するコンピューターだ。


 量子アニーリングとは、「イジングモデル」という物理学のモデルを利用して問題を解く方式だ。そして「量子アニーリング」が得意とする組合せ最適化処理とは、「膨大な選択肢からベストな選択肢を探索する」手法である。

 量子アニーリングは量子ビット方式に比べてノイズに強く、ビット数を増やしやすいという特徴がある。D-Wave Systemsの「D-Wave 2000Q」は2000量子ビットを集積したプロセッサを搭載している。

 ただし、量子アニーリングがその力を発揮するのは「組み合わせ最適化問題」、それを少し拡張した「サンプリング」などに限られる。量子ビット方式のように、既存のコンピューターと同じような計算もできるというわけではない。


●「量子コンピューター報道」の考え方

 ここまで読むと、量子ビット方式は開発がなかなか進まず、量子アニーリングがかなり先行しているように見えるだろう。しかし、量子アニーリングにも大きな課題が残っている。世界で初めてこの方式を発表した西森教授は、「量子アニーリングにはまだ理論的保証がない。ただ、やってみると速く計算できる例がたくさんあるというのが現状」と語る。

「量子ゲート方式は、きちんとした実機ができれば、素因数分解、暗号解読、量子シミュレーション、ある種の機械学習の計算を劇的に高速化できるということが数学的に保証されているが、量子アニーリングにはまだその保証がない」(西森教授)

 西森教授は現在、量子アニーリングを利用すれば、一部の計算処理を劇的に高速化できるということを理論的に証明することを大きな研究テーマとして取り組んでいる。

 量子アニーリングは理論的裏付けがないため、今でもさまざまな形で批判を浴びているが、冒頭に初回した「2015年12月のグーグルとNASAの共同研究」もその一例だ。

 西森教授は「グーグルとNASAの発表は、あるかなり特殊な学問的な問題を作り出して、それをD-Wave Systemsのコンピューターに解かせたところ、既存のコンピューターに比べて1億倍速かったということに過ぎない。解いた問題は実用的なものではなく、D-Waveマシンに非常に有利なものだった」と説明する。量子コンピューターの報道は多いものの、その「条件」を精査する必要があるということだ。

 それでは、グーグルとNASAの発表は価値がなかったのだろうか。批判の中には「たとえ有利な問題を設定しても、D-Wave Systemsのコンピューターはそれほど速くない」というものもあったが、西森教授はグーグルとNASAの「1億倍発表が覆した」と指摘。「グーグルの発表はとても大きな意味を持っていた」と評価している。

 西森教授は「批判はありつつも、量子アニーリングの実用例は、毎週、あるいはほぼ毎日のように新しい論文と研究成果が出てきている」と指摘する。

 たとえば、南カリフォルニア大学の研究では、ある組み合わせ最適化問題をD-Waveに解かせた場合、既存のコンピューターで解いた場合と比較して最大で1000倍速く問題を解けるという結果も出ている。西森教授によると、この問題は前述のグーグルのように、「有利に作った人工的な問題」ではないという。「実際に役立つ計算」でもこのような例があるケースが出てきているとした。

●量子コンピューターが有効に働く「3分野」

 そして西森教授は「量子アニーリングを発展させるために現在取り組むべきことは、既存のコンピューターでは処理が困難で、量子アニーリングを活用すれば現実的な時間で解ける実用例を1つでも多く見つけること」だと語る。

 その上で、量子コンピューターが力を発揮する領域として「組み合わせ最適化」「量子シミュレーション」「機械学習」の3つを挙げた。

 組み合わせ最適化の具体例としては、配送の問題や金融資産のポートフォリオ作成、仕事の割り当てなどがあり、すでに実例が出てきているという。

 量子シミュレーションとは「小さな分子や原子の世界をコンピューター上で再現する」ことを指す。これは、新薬の開発などに役立つ。また、肥料の合成時に消費するエネルギーの削減という用途もあるという。たとえば現在、肥料を製造するには百数十年前に開発された「ハーバー・ボッシュ法」で水素と窒素を反応させてアンモニアを作っているが、この工程の消費エネルギーは、「地球上の数%」を占めるほど膨大なものだ。これを少しでも改良できれば、環境への影響を大きく軽減できる。

 機械学習については、少なくともゲート方式なら高速に処理ができると証明されている。そして、量子アニーリングでも、機械学習(ボルツマン機械学習)の強化学習に必要な「サンプリング(必要なデータを収集すること)」に用いる方法が有用であるとされている。実データとの比較に必要な「擬似データ」を高速に生成するためにD-Waveマシンを利用するという試みである。

●量子コンピューター分野に“参入”すべき理由

 西森教授は、量子アニーリングについては長期的視点で取り組むべきだとも指摘する。企業が導入してすぐに、来期の収益を改善できるというものではないということだ。教授は「大きな成果を出すには10~20年かかる」と見通しを語った。

 ここで重要なことは、今の時点で“参入”することで、先行者利益が得られるということだ。「10~20年待てば、量子コンピューターを使うことはできるが、ほかの業者などが開発したものを、大きな対価を払って使うことになる」(西森教授)。

 量子アニーリングだけに当てはまる話ではない。最近はグーグルやIBM、インテルといったIT業界の世界的大手が量子ゲート方式のハードウェア開発に投資している。ごく小さい規模で始まったばかりであり、実用化にはまだまだ長い時間がかかりそうだが、各社はゲート方式が持つ非常に大きな可能性を見て投資している。

 この動きに対して西森教授は、「量子アニーリングは非常に若く、発展の余地が非常に大きい分野。5~10年先を考えても、大きな可能性があると考えている」と語る。

「量子ゲート方式、量子アニーリングに関わらず、大部分の問題を劇的に高速に解く量子コンピューターのハードウェアと、対応するソフトウェアを実現するには、単なる現状の改良の積み重ねだけでは難しいだろう。やはり大きなブレイクスルーが必要になる」

(西森教授)





司馬遼太郎「麻原は日本史上で何番目の悪人か」
9/12(木) 15:15配信

インタビューで語る司馬遼太郎さん=都内のホテルで1995年2月2日

どちらも「知の巨人」として知られる司馬遼太郎氏と立花隆氏が、1995年、オウム真理教の教祖・麻原彰晃を巡って激論を交わした。翌年に、この世を去ることになった司馬遼太郎氏のオウムへの怒りは、日本社会への遺言となった――。


 ※本稿は、松井清人『異端者たちが時代をつくる』(プレジデント社)の第1章「『オウムの狂気』に挑んだ6年」の一部を再編集したものです。Yahooの記事をコピペしました。


■「オウム事件のときどう思った? 」という問い

1995年5月16日、オウム真理教の教祖・麻原彰晃が第6サティアンの小さな隠し部屋で発見され、逮捕される。傍らには、966万2483円の現金と、菓子の「カール」や飲料水があった。捜査員が壁にあけた穴から担ぎ下ろしたとき、麻原は「重くてすみません」と呟(つぶや)いたという。

 同年の『週刊文春』8月17日・24日合併号と翌週号は、オウム事件を巡る司馬遼太郎さんと立花隆さんの対談を掲載している。「知の巨人」2人の議論は、オウムの本質を見事に衝いていた。少し長くなるが引用する(原文を適宜、改行した)。



【立花】先生は事件についてどのような印象をお持ちですか。

【司馬】難しいですねえ。高度な意味ではなくてね。いまの若い人も、歳をとったら、自分の孫に「おじいちゃん、オウム事件のときどう思った? 」ときかれる。しかしなかなか一言では言えないと思うんです。

人類に先例がないですね。人間たちがああもロボット化されるものかということ。人間の本性に惻隠(そくいん)の情というのがあって、だれもがひとの不幸を気の毒だと思うものですが、彼らは利害や感情の動機をもたず、芝生を草刈り機で刈るように不特定の大衆をガスで殺したこと。これはなにかなど、僕にはうまく言えないけれど、無理に言ってみましょう。




■史上稀なる人殺し集団


【司馬】僕は、オウムを宗教集団と見るよりも、まず犯罪集団として見なければいけないと思っています。とにかく史上稀(まれ)なる人殺し集団である。このことを最初に押さえておかないと、何を言っても始まりません。

この事件が起こってから、小説の売れゆきが落ちたらしい。テレビのドラマを見ている人も現実のオウムの報道のほうが、人間とは何かを生々しく語っているので、アホらしくなったと言っていました。

実際、麻原をはじめ、一見個性ありげないろいろな人物が次々に登場してきて役どころを演じるんですね。たとえば、村井秀夫という人。殺人手配人だったそうですが、有能な陸軍大尉のようにふるまったあげく、殺される。そのシーンなどが頭に焼きついていて、まるでシェイクスピア劇のような展開がある。

彼らは閉鎖社会をつくっていて、彼ら以外の人間は別の世界に住んでいる。お釈迦さんの時代の用語を中国語化したものに「外道」というのがありますが、外道の集団がいて、外道の思想をつくりあげて、外道同士も殺しあっている。で、外道の集団は疑似国家をこさえて、他の世界に対して戦争を準備している……。

シェイクスピアでもこんな話は書けなかったですね。こんなことが世の中にあるものかと思って見ていた。それが第一印象でした。



■司馬遼太郎「21世紀の日本社会へ伝えたかったこと」

【立花】ほんとですね。信じられないような話が次から次に展開した。いまだに訳がわからない部分がいっぱいある。いちばんわからないのは、やっぱりあの人間の殺し方ですね。どうしてあんなに安易に人を殺せるのか。

【司馬】人類の歴史で、こんなに冷酷に無差別殺人を犯した集団はないでしょう。古い仏教用語の悪鬼羅刹が日常人の顔をして出てくる。これを憎まなければ日本は21世紀まで生きのびることはできません。


 いつも沈着冷静な司馬さんが、感情を剝き出しにしている。オウムを厳しく糾弾するだけでなく、21世紀の日本社会に向けて警告を発している。

 さらに、麻原を〈史上最悪の人間〉と断じ、すべての罪を自分が背負うならまだしも、弟子のせいにするなら、単なる詐欺師だと斬り捨てる。



【立花】日本史における「悪」の系譜を考えますと、麻原みたいな存在は他にいたんでしょうか。

【司馬】いないでしょう。よく言われるように、日本人には強烈な善人も少ないかわりに、強烈な悪人も少ない。それがわれわれの劣等感でもありました。ここにきて初めて、史上最悪の人間を持ったのかもしれませんね。

もし麻原が「全部俺がやったんだ。俺はかくかくしかじかの考えがあったんだ」と言えば、強烈な"悪の栄光"に照らされ、悪人殿堂におさまることができるんです。しかし「私は目が悪いからそんなことはできない、見えるはずがない」などと言って誰かに責任を押しつけている。それではただの詐欺師になってしまいます。



■若い人はオウムの持つ毒の部分に引きつけられた


 議論が進むにつれ、司馬さんの麻原・オウム批判は、さらに苛烈なものになっていく。


【司馬】麻原は、平凡な精神医学者が鑑定しても、まず誇大妄想と言うでしょう。自分の妄想をほんとに信じて次の妄想を生む、そういう性質だと。僕は、麻原にどんな宗教的権威も、哲学的権威も与えたくないものだから、こんなふうに言いきってしまいたいんですがね。

【司馬】よく言われるように、宗教はたしかに狂気の部分を孕んでいる。また狂気の部分を孕んでいなければ、宗教が宗教たるゆえんはないのかもしれません。だけど、「宗教は狂気でなければならないんだ」という意見には、僕は反対なんです。(中略)

【立花】でも、宗教というのは、もともと無害なものじゃないでしょう。キリスト教だって、社会的に認められたのは、キリスト死後300年もたってからで、それまでは、こんな有害な宗教はないと思われていたから、信者は片端から処刑された。仏教の出家思想だって、反社会的なものとみなされた。

既成宗教がみんな無害なものになってしまったから、若い人はかえってオウムの持つ毒の部分に引きつけられたんじゃないでしょうか。


■人間は、もう宗教に救われてなくていい

【司馬】法隆寺が風景になっているように、既成宗教は風景になっている、だから人を救えないんだという意見がある。しかしそういう言い方は現代人をなめすぎています。

人間はね、もう宗教に救われなきゃいけない具合にはなっていないんです。人間の方が進化して、耐性をもったいろんな抗体もできている。いまイエス・キリストが出てきても、そのへんにいる普通のおじさん、おばさんでもたじろがないですよ。

オウム論をする場合、狂気こそ宗教だ、従ってオウムが狂気であるのは当然だというのは、僕は大学の研究室の中の言葉にしておいてほしいんです。


 司馬さんは翌年、21世紀を迎えることなく、突然に世を去る。

 この発言が「遺言」であったかのように。




松井 清人(まつい・きよんど)
文藝春秋 前社長
1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)卒業後、74年文藝春秋入社。『諸君!』『週刊文春』、月刊誌『文藝春秋』の編集長、第一編集局長などを経て、2013年に専務。14年社長に就任し、18年に退任した。







戦争不拡大・反東条」を主張したカリスマ軍人・石原莞爾はなぜ“満州事変”を計画したのか

小池 新 2019/09/15 17:00


解説:天才か異端児か 石原莞爾が満洲で繰り広げた謀略の実態は?
 現代の日本人が、70数年以上前の日本人にとって「満州」(現中国東北部)がどんな意味を持っていたのかを想像するのは難しい。戦争の結果を見れば、そこにすさまじい悲劇を見るのは当然だが、ゆかりのある人々にとって満州は、いまも痛切で複雑な感情をよびさます土地だ。「満州」はもともと民族名だったのが地名になったとされる。現在の中国・遼寧省、吉林省、黒竜江省、内モンゴル自治区東部を合わせた地域。かつては愛新覚羅一族が支配していて、それが中国全土を収めたのが清王朝。清は中国の五行では「水」が表象なので、本当は「満州」ではなく「満洲」が正しいという。万里の長城最東端の山海関より外という意味で「関外の地」、厳寒の自然環境から「不毛の地」とも呼ばれた。


© 文春オンライン 自治指導本部建国宣言のポスターを貼る様子(満州国) ©文藝春秋



資源豊富で人口が希薄な満州は「夢の土地」だった

「十万の英霊、二十億の国帑(こくど=国家財産)」「満蒙特殊権益」「満蒙はわが国の生命線」。これが戦前戦中、満州の重要性を指摘するために、日本人の間で語られた3つの象徴的なキーワードだ。

日清、日露戦争で日本軍は満州を舞台に激烈な戦闘を繰り返し、血を流して多くの人命を失い、膨大な国家予算を費消した。それを忘れるな、というのが「十万~」の意味。そして、その結果、日本は満蒙(満州と内モンゴル)に特別な権益を持ったというのが「特殊権益」。

具体的には
(1)関東州の政治的・軍事的・経済的な施設経営
(2)南満州鉄道(満鉄)付属地の行政施設
(3)撫順などの炭鉱経営――などだった。

そして、「満蒙はわが国の生命線」は、満鉄総裁を務め、その後外相となる松岡洋右が政友会議員として国会で演説した中で言い出した。「今日の満蒙の地位はわが国にとっては単に国防上重大のみならず、国民の経済的存立に欠くべからざるものとなっている」(「動く満蒙」)ことを意味している。

 国土が狭く、資源に乏しいのに人口が多い日本にとって、面積広大、資源豊富で人口が希薄な満州はかねてから「夢の土地」だった。さらに、そこを押さえることは、対ソ連(当時)戦略上も、そして朝鮮支配にも有益とされた。軍国主義が蔓延する中、日本の資本階級や軍部は、満州を中国から切り離して領土化し、資源を手に入れるのを虎視眈々と狙っていた。

そこに登場するのが、「帝国陸軍の異端児」「軍事の天才」と呼ばれた石原莞爾という軍人だ。「満州事変」は彼の構想によって引き起こされたといっていい。


「陸大創設以来の頭脳」とされた軍人・石原莞爾とは

 最近、NHKの人気番組「ファミリーヒストリー」に俳優の小澤征悦氏が登場。父で満州生まれの世界的指揮者・征爾氏の名前が、当時満州にいた2人の軍人の名前からとられたことが紹介された。

それは、当時関東軍の高級参謀だった板垣征四郎(のち陸相、戦後の東京裁判で死刑)と作戦主任参謀の石原莞爾。満州事変の首謀者とされた2人だった。

筆者が昔、石原について取材したとき、彼を信奉する人たちは「満州事変で手を下したのは石原将軍ではない」と主張した。しかし、多くの証言から、石原が事変の中心人物だったことに疑いはない。

瀋陽(当時奉天)の事件現場にある「九・一八歴史博物館」には、事件の主謀者として板垣と石原のレリーフが飾られている。そして、敗戦に至るその後の15年を振り返ったとき、戦争の時代へと突き進む歴史の大きな転換点となったのは、「二・二六事件」(1936年)と並んで、この1931年9月の柳条湖(当時から近年まで柳条溝と誤記され、本編もそうなっている)事件だったのではないかという気がする。

 石原莞爾は山形県・庄内地方の出身。陸軍士官学校(陸士)を優秀な成績で卒業したが、教官に反抗的な態度をとるなど、操行に問題があったという。陸軍大学校(陸大)では2番で「陸大創設以来の頭脳」とされたが、性格は「性粗野にして無頓着」という評価だった。

その後連隊勤務の後、ドイツに留学。フランスのナポレオンやプロイセン(現ドイツ)のフリードリッヒ大王らの戦史研究に力を入れたという。その彼が陸大教官を経て関東軍作戦参謀の中佐として満州に現れたのは1928年10月。翌1929年7月、ハルビンなどへの参謀演習旅行が行われたが、その際、石原は「国運展回の根本国策たる満蒙問題解決案」を示す。

その骨子は「満蒙問題の解決は日本が同地方を領有することによりて始めて完全達成せらる」。参謀らの論議の中から、満州占領と統治計画の具体的な研究が始まった。


「謀略により機会を作製し、軍部主動となり国家を強引する」

 石原の満州構想は「満蒙問題私見」にまとめられている。政治的、経済的価値を論述して、日本軍が撤退し「漢民族の革命とともにわが経済的発展をなすべしとの議論は、もとより傾聴検討を要するものなるべしといえども」、漢人が「果して近代国家を造り得るやすこぶる疑問」だから、日本の満蒙領有は正義だと強調している。

そして、「謀略により機会を作製し、軍部主動となり国家を強引する」という結論へ。このころの石原の考えは、台湾のように総督を置いて自治をある程度認める形だったようだ。のちに、新国家建設を容認するようになるが、その先の現実において、日本の権力中枢、陸軍と石原の満州に対する思想の違いが際立ってくる。

 そして、9月18日の柳条湖事件となるのだが、実は今回の本編には問題が多い。というより、筆者の花谷正・元中将(事変当時少佐)は“うそっぱち”を書いている。本編では、満州事変がどのように起きたかには全く触れず、その後の内田康哉総裁を中心とした南満州鉄道(満鉄)とのやりとりが、自慢話のようなトーンで書かれている。

この「昭和の35大事件」が出たのは1955年。ところが、翌1956年の雑誌「別冊知性・秘められた昭和史」で、花谷元中将は「満州事変はこうして計画された」と題して、事変が自分も含めた関東軍の謀略だったことをはっきり認めた。これが事変の真相を明らかにした最初の証言だった。さらに、清朝の「ラストエンペラー」溥儀を引っ張り出す工作まで述べている。要するに、文藝春秋は“ガセネタ”を書かれたといえる。


太平洋戦争の引き金となる「柳条溝事件」へ

 この花谷元中将は、昭和の軍人の中でも特に悪名の高い人物で、例えば、鉄道爆破後、森島守人・奉天(現瀋陽)領事が奉天特務機関に駆け付け、「外交交渉で解決できる」と話すと、いきなり軍刀を抜き、「統帥権(天皇直属の陸海軍の軍令権)に容喙するものは容赦しない」と恫喝したという(森島守人「陰謀・暗殺・軍刀」)。

その後、師団長時代は、いまで言うパワハラを日常的にふるい、多数の部下を自殺や病気に追い込んだとされる。それにしても、本編で「勿論日本は満州を領土とする意志があってはならぬ」と語るなど、臆面もないというしかない。

「満州事変はこうして計画された」によると、実行行為に至る経緯は大筋でこうだった。「昭和六年春ごろには柳条溝事件のおよその計画が出来上がっていた」。「満州事変を遂行した中心は何といっても石原であるが」「このころには既に軍事学の立場に立った一つの世界観を持っていた」。石原、花谷と、その後高級参謀として着任した板垣を中心に計画が進む。

彼らは張作霖爆殺事件で満州南部を制圧しようとして失敗したことから「二度と過ちを犯してはならない」と周到に計画を練っていく。朝鮮軍や陸軍中央に同志を募り、信用できる人物を次々引き入れる。動きを察知した陸軍中央から「止め男」として派遣された建川美次・参謀本部第一部長を奉天の料亭に連れ込んだ。

その間に“実行犯”の中尉が部下とともに現場に行って、満鉄線路の一部を爆弾で小規模破壊した。同時に奉天城を始め、営口、鳳凰城、安東などを制圧。満州南部の要地を抑えた。朝鮮軍も越境して進入。さらに全満州を占領しようとしたが、陸軍中央の反対に遭って不成功。しかし、その後も軍は増派を続け、これがその後に続く日中全面戦争――太平洋戦争の引き金となる。


「時期としても方法としても決して誤っていたとは思えない」

 花谷元中将は「満州事変はこうして計画された」でこう書いている。「あの時、満州事変を起したことは、時期としても方法としても決して誤っていたとは思えない」「世界情勢の危機にあって、日本の進むべき道は満州の中国本土からの分離のみである」「虐げられた満州住民に王道楽土を建設してやることが、東亜安定の最も好ましい政策であると信じたのであって、中国本土と果てしない大戦争に入るという愚を冒すつもりは毛頭なかった」……。

この文章は元中将の口述を基に、雑誌編集部が構成。必ずしも証言とはいえないようだが、それにしても、戦後11年たった時点でこの自己弁護と居直りはどういう神経だろう。


「竹光であっても、学良軍閥打倒のごときはそれで十分だ」

 小澤征爾氏の名前の由来は書いたが、それは征爾氏の父で歯科医だった小澤開作が、満州の開拓と発展に強い使命感を燃やした日本人が結成した「満州青年連盟」の中心人物だったからだ。

 小澤らは関東軍参与となって板垣、石原と深い親交を結ぶ、というより、石原の一種カリスマ的な強烈な魅力にひかれたと言っていい。一つのエピソードがある。関東軍幹部の会合で、青年連盟幹部らは中国の排日運動で日本人が困窮していることを訴え、関東軍に決起を迫った。軍人らに「腰のその軍刀は竹光か?」とまで言った。

石原はこう答えた。「竹光であっても、学良軍閥打倒のごときはそれで十分だ」「いざ事あれば、奉天撃滅は二日とはかからん。事は電撃一瞬のうちに決する」。

奉天を拠点とする満州軍閥の張学良(張作霖の息子)軍は約23万、対する関東軍はわずか約1万3000といわれた。青年連盟のメンバーらは大言壮語と受け止めたが、実際に柳条湖事件の直後、張学良軍が無抵抗策をとったこともあって、関東軍はあっと言う間に周辺から駆逐した。花谷元中将も「満州事変当初の作戦は、世界軍事学界の驚嘆の的となったといわれる」と述べている。


石原が目指した「五族協和」と「王道楽土」

 石原は日蓮宗の熱烈な信者で、日蓮の予言に基づく独自の世界観を持っていた。それを集大成したのが1940年に発表した「世界最終戦論」。

(1)最後の決戦は東洋代表の日本と西洋代表のアメリカの文明対決
(2)その後、世界は統一され、絶対平和が訪れる
(3)それに備えて中国とは東洋同士提携する――と主張した。

満州についても、のちに満州国の公的なスローガンとなった「五族協和」(日本人、漢人(中国人)、朝鮮人、モンゴル人、満州人の五族の共生)「王道楽土」を本気で構想していたようだ。日本人は大規模企業と知能を用いる事業、朝鮮人は水田の開拓、中国人は小規模労働と分担も考えていた。

彼が満州に設立した満州建国大学では五族協和の実践を図ったほか、講師にスターリンとの争いに敗れて亡命したトロツキーを呼ぼうとした。軍人として規格外の発想の持主だったことは間違いない。

「赤い夕陽」「新天地」「農業の理想郷」……。農業移民の満蒙開拓団が続々組織され、将来展望のない農家の二、三男が農業経営の大きな期待を持って海を渡った。当時の小説や映画などでも、国内の閉塞状況から飛び出していく舞台として、常に満州は取り上げられた。

結局、日本人の農業移民は成人、青少年合わせて、敗戦直前の段階で約22万6000人に上った。その現実は、日本人が現地の「満州人」らから土地を取り上げる結果に終わった。現地での日本人と他民族の差別は歴然で「五族協和」は名ばかり。石原の理想の国は「砂上の楼閣」だった。現地体験を持つ日本人は、戦後も満州にノスタルジーを抱く人が多いが、スローガンと実態の乖離は明らか。敗戦と引き揚げ時の悲惨なドラマは枚挙にいとまがない。


「満州事変当時、あなたが模範を示したことをやっているだけだ」

 石橋湛山(戦後首相)は既に1921年7月の時点で、本拠としていた「東洋経済新報」の社説に「一切を棄つるの覚悟」を掲載。「利害得失を冷静に勘案すれば、植民地は利益にならない」という“植民地コスト論”を展開して、満州などの「放棄」を訴えた。

そうすれば、インドやエジプトなどの西欧列強の植民地の人々が発奮して立ち上がるだろう。それが「わが国際的位地をば、従来守勢から一転して攻勢出でしめるの道である」とした。比較は難しいが、現在の観点から見ると、石橋の論に軍配を上げざるを得ないのではないか。

 石原はその後、参謀本部作戦部長の時に盧溝橋事件に遭い、日中戦争「不拡大」を主張するが、部下の作戦課長だった武藤章大佐(戦後、東京裁判で死刑)に「私たちは、満州事変当時、あなたが模範を示したことをやっているだけだ」と言われるなどしたうえ、結局戦争拡大を防ぐことができなかった。

1937年、関東軍参謀副長として満州に舞い戻るが、既に満州は彼の理想とは懸け離れた植民地だった。そして、東条英機参謀長(のち首相)と対立して辞任。その後も「反東条」を徹底して、閑職に追いやられる。「東亜連盟」という民族主義団体を結成して運動を拡大。東京裁判では戦犯とならず、山形県・鳥海山のふもとで開拓に従事したが、病気のため、敗戦から4年後の1949年8月15日に死去する。

 石原は敗戦の1945年8月15日当日、「都市解体、農工一体、簡素生活」という「平和三原則」を提唱する。彼の考えを継承した団体「石原莞爾平和思想研究会」がいまも存在するが、その中心だったのが、日本新党で参院議員を務めた武田邦太郎氏(故人)。

田中角栄・元首相の「日本列島改造論」を審議する懇談会の委員を務めたが、筆者の取材に「日本列島改造論は石原イズムだと思った」と語った。東亜連盟の支持者には理化学研究所の中興の祖・大河内正敏所長がおり、そのつながりから、石原の死後、このスローガンをそのまま使って最初に衆院選に出馬(落選)したのが田中元首相だった。

 武田氏は晩年、かつて石原らと過ごした鳥海山麓に居住。師事した晩年の石原について「やはり、神がかり的なところのある人だった」と振り返った。石原莞爾平和思想研究会の会員だったのが、歌手・加藤登紀子さんの夫の藤本敏夫氏(故人)。

筆者は、病気入院していた藤本氏にその死の直前呼ばれて懇談したが、別れ際、最後に彼が言った言葉は「やっぱり石原莞爾ですよ」だった。筆者も、石原の思想の中にはいまに生かすべき点があるような気がする。



本編 「満洲事変の舞台裏」 を読む
【参考文献】
▽松岡洋右「動く満蒙」 先進社 1931年
▽石原莞爾「満蒙問題私見」 1931年「ドキュメント昭和史2満州事変と二・二六」平凡社 1983年所収
▽花谷正「満州事変はこうして計画された」「別冊知性・秘められた昭和史」河出書房 1956年所収
▽森島守人「陰謀・暗殺・軍刀」 岩波新書 1950年
▽石原莞爾「世界最終戦論」 立命館出版部 1940年
▽山口重次「悲劇の将軍 石原莞爾」 世界社 1952年
▽石橋湛山「一切を棄つるの覚悟」 東洋経済新報社説 1921年「石橋湛山評論集」岩波文庫 1984年所収
▽武田邦太郎、菅原一彪編著「永久平和の使徒 石原莞爾」 冬青社 1996年


(小池 新)




えっ、そんな国だったの?」孫崎享・元外務省情報局長が分析する「日本の正体」―孫崎 享『日本国の正体 「異国の眼」で見た真実の歴史』はじめに
9/30(月) 11:30配信 Yahoo記事をコピペしました。


『日本国の正体 「異国の眼」で見た真実の歴史』(毎日新聞出版)

刊行するやいなや、たちまちSNSで話題沸騰の孫崎享著『日本国の正体』(毎日新聞出版刊)。元外務相情報局長を務め、『戦後史の正体』等、数々のベストセラーを世にはなってきた孫崎氏は、日本の「弱点」とは「自分自身が何者かを知らないことだ」と分析しています。

「歴史を通じ、他者の声に耳を傾けなくなった時代には、必ずといっていいほど『重大な戦略ミス』を日本は犯してきた」と訴える孫崎氏は、今なぜ「外国人の眼を通じた日本人論」を世に問うのでしょうか。本書からの抜粋をお届けします。


◆「えっ、日本はそんな国だったの?」

孫崎享・元外務省情報局長が分析する「驚きの正体」とは?

◇日本の戦略はなぜいつも間違うのか?

孫子に、「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)ふからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦ふ毎に必ず殆(あや)ふし」という言葉がある。一見あたり前の事に見えて、これが極めて難しい。

自己について判断し、相手について判断することは、次に私たちがとる行動の前提になる。私たちにはもともと、「将来に向かってこうしたい」「こうありたい」という願望がある。だが自分の客観的位置、相手の客観的な位置によっては、自分の願望を実現するのが難しくなってしまう。

そのため、自己の願望を実現できるように、自分の客観的位置であるとか、相手の力を歪めて見るような力が働くのが人間である。こうした誤った判断を避けるうえで、極めて有効な手段は、第三者の評価に耳を傾けることである。

この本でしばしば指摘することになるが、日本の特色は「①孤立性」と「②均一性」にある。「個」を排する力がどの社会よりも強い。多様性を排する力がどの社会よりも強い。そのため、自分とは違った視点の評価に耳を傾ける機会が少なく、それが「自己」の評価や、「相手」の評価を歪めてしまう、という傾向を日本は内蔵している。


◇日本の「歴史」と「特異性」から何が分かるのか?

考えて見ると、国際的に見れば、日本は特異な存在である。日本はユーラシア大陸の東の端に位置する島国である。この地政学的特徴によって、中国や朝鮮半島において繰り返し発生した政変は、日本に大きな影響を与えなかった。外国からの侵略は元寇のみであり、これも不成功に終わっている。

日本の歴史上、次に列挙するような大きな圧力が外国からかかった時、日本の対応は総じて稚拙であった。

①元寇
②キリスト教の布教と、鎖国へ繋がる動き
③黒船から開国への動き
④富国強兵後の列強との摩擦
⑤第二次大戦敗戦後の占領体制とその後の対米関係



国際関係が一段と緊密化する中で、国家間の折衝は今後ますます増加するだろう。その際に判断を誤らないためには、「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)ふからず。彼を知らずして己を知れば一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば戦ふ毎に必ず殆(あや)ふし」という知恵が、これまでのどの時代よりも、今後重要になる。

我々は自己を見る時、第三者の眼が自分を客観的に眺める時に極めて有効であることを知っている。幸い、世界の様々な人が日本を見て、様々な評価をしている。またそれ以上に幸運なことは、極めて知的な人々がこぞって日本を訪れ、日本について語っていることである。知的好奇心の欠如した人が、「極東」までわざわざ足を運ぶことはなかったのだろう。

本書はそうした外国人たちによる「日本論」を集め、筆者が解説と分析を加えたものである。「外国人による日本人観」を多数集めることで、歴史的にみて日本人が苦手としてきた「自国の能力の客観視」に役立てるのが筆者の願いである。また箸休めの番外編として「日本人による外国人観」についても考察している。

日本とは何か、日本人とは何か、という問題については、歴史認識をめぐる論争もあって、近年イデオロギー的な議論に偏っているのではないか、という危惧が筆者にはある。また、引用元を明確にしなかったり、元の資料を改変したりといった、知的手続きの問題が議論をいたずらに複雑化した結果、左右対立ばかりが煽られ、建設的な議論が妨げられているという懸念も強く持っている。

外国人の述べる「日本論」「日本人論」を知ることで、我々自身の自己への認識の客観性、正確性が一段と増すことを筆者は確信している。

[書き手]孫崎享(元外務省情報局長)

[書籍情報]『日本国の正体 「異国の眼」で見た真実の歴史』
著者:孫崎 享 / 出版社:毎日新聞出版 / 発売日:2019年09月20日 / ISBN:4620326046
毎日新聞出版






地球のN極とS極が入れ替わる現象、5億年前に頻繁に起きていた2019.10/5のYahoo記事をコピペしました。


 大昔、地球のN極とS極が入れ替わる現象は、今よりずっと頻繁に起きていたらしい。シベリア北東部の岩場で調査を行ったフランス、パリ地球物理学研究所のイブ・ガレ氏らは、その証拠をつかんだ。

 彼らが9月20日付けで学術誌『Earth and Planetary Science Letters』に発表した論文によると、ちょうど5億年ほど前のカンブリア紀中期(ドラム期)に、100万年あたり26回のペースで地磁気が逆転していたという。これは、過去1000万年間と比べると5倍以上のペースだ。

 地球を包む地磁気は、常に太陽から降り注ぐ放射線から私たちを守っている。地球の46億年の歴史の中で、地磁気の向きは何度も逆転し、北磁極と南磁極が入れ替わってきた。

 地磁気の逆転が、かつて考えられていたよりも頻繁に起こりうることを示唆する証拠は、数多く集まってきている。米フロリダ大学の古地磁気学者ジョゼフ・メールト氏は、今回の結果もそうした証拠の1つだと言う。なお氏は今回の研究には関わっていない。

 かつての地磁気を示す記録は、こうした研究により少しずつ穴が埋められていて、逆転のタイミングや原因の解明に役立つだけでなく、古代にあった激しい変動が初期の生命に及ぼした影響まで教えてくれる可能性がある。


この78万年ほどは逆転していない


 地磁気が生じるのは、地下2900kmほどの深さにある地球の外核で、液体の鉄とニッケルが流動するためだ。地磁気の向きは、小さな方位磁針がそのまま凍りつくように、堆積岩や火山岩ができる際、それらに含まれる鉄分の多い鉱物によって記録される。

 こうして岩石に刻まれた記録から、地磁気はこの78万年ほど逆転していないことがわかっている。一方、過去には約20万年ごとに逆転していた時期もあった。長い間逆転がなかった時期は大昔にもあり、例えば約1億年前の白亜紀には、4000万年ほど地磁気がほとんど動かなかった。

 地磁気の逆転はどのくらい頻繁に起こりうるのだろう? ガレ氏らは答えを求めて、ヘリコプターとゴムボートを乗り継ぎ、最後は徒歩で危険な崖を訪れた。約5億年前のカンブリア紀中期のなかでも、まだほとんど調査が及んでいない時期に形成された地層だ。ここの岩石は、はるか昔に暖かく浅い海だった頃に、砂が磁性鉱物を閉じ込めながら堆積してできたものだ。

 ガレ氏らは2000年代初頭にこの地を初めて訪れ、ほぼ垂直に切り立った崖から119点のサンプルを採取し、分析した。その結果、カンブリア紀中期に、地磁気の逆転が100万年あたり少なくとも6~8回起きた時期があったことがわかった。

「これほど頻繁な逆転は予想していませんでした」とガレ氏はメール取材に答えるた。当時は4、5回でも多いとされていたのだ。

 この結果が気になった彼らは、もっとサンプルを採取しなければと考えた。2016年の夏に現地を再び訪れて、今度は10~20cmごとに岩を切り出し、550点の小さなサンプルを採取した。分析してみたところ、300万年の間に、地磁気は78回も逆転していたことが判明した。

「かなり大きい数字になるとは思っていましたが、ここまでとは思っていませんでした」とガレ氏は言う。しかも、22回も逆転が記録されていた岩があり、実際の頻度はさらに高かった可能性が示唆された。


生物への影響は?


 現段階では、今回の研究は、答えよりも多くの新たな疑問をもたらした。当時、地球磁場の活動がそこまで激しかった理由も、さらに興味深いことに、その活動が突然落ち着いた理由もよくわからない。

 1つの可能性は、古代の地磁気の逆転が、固体である地球内核の冷却および結晶化と結びついていることである。多くの研究から、それはおそらく6~7億年前に始まったと考えられているため、内核形成の終盤が地磁気の頻繁な逆転を引き起こしたのかもしれない。しかし、まだ不確実な点は多い。

「核とそのふるまいについて知ることは非常に難しいのです」と英リバプール大学の地質学者アンニーク・ファン・デア・ブーン氏は言う。「私たちは地球の核を見ることも、そこに行くこともできないからです」。なお氏も今回の研究には参加していない。

 ほかに地磁気の逆転がこれほど頻繁に起きていたのは、エディアカラ紀にあたる5億5000万~5億6000万年前の時期だけだ。メールト氏によると、非常に興味深いことに、ちょうどこの時期に大量絶滅が起きているという。

コロコロと逆転していたこの時期の地磁気は、極端に弱かった。おそらくそのせいで、地球に登場したばかりの複雑な生命が、過酷な状況にさらされることになったのかもしれない。

「『スター・トレック』的な言い方をすると、私たちのシールドに不具合が生じて、地球の表面が宇宙線やその他の放射線の爆撃を受けたのです」とメールト氏は言う。エディアカラ紀のぐにゃぐにゃした動物の多くは、有害な太陽の放射線から逃げられずに死んでいったのだろう。

 しかし、5億年前のカンブリア紀中期に大量絶滅は起きていない。むしろ、この時代にはさまざまな形の生命が繁栄していた。もしかすると、進化がこれらの生物に救いの手を差し伸べて、有害な太陽光線から身を隠せる動物を爆発的に生み出したのかもしれない。とはいえ現段階では、すべては推測にすぎない。


次なる活動期に向かっている?


 とはいえ、地磁気の変化に周期性があるように見えるのは興味深い。1億5000万年ごとに、地磁気が逆転しなくなる期間が長く続くのだ。それ以外では、100万年に5回のペースで地磁気は逆転し、その間にはさらに異常に活発な活動期もある。

 この大まかな周期性から言うと、現在は次なる活動期に向かっているのかもしれないが、まだ不確かな点が多いとメールト氏は言う。それに、たとえ地磁気の逆転が近いとしても、磁極は何千年もかけて移動していくものなので、人間の尺度からすれば非常に遅い変化だ。

「映画のように、昨日は北を指していたコンパスが今日は南を指しているというようなことはありません」とメールト氏。

 これらのパターンを読み解くうえで大きな問題となるのは、まだ地磁気の状況がわからない年代があることだ。今回のカンブリア紀ぐらい古い岩石となると、通常は大陸どうしの衝突によって破壊され、変性してしまうため、記録の多くが不明瞭になってしまうとファン・デア・ブーン氏は説明する。氏は、地磁気の逆転が頻繁に起きていた可能性がある、さらに希少な約4億年前の岩石記録を調べている。

「彼らのデータがうらやましいです。本当に良いデータだと思います」と氏は言う。

 今回の研究者たちは困難な状況下でベストを尽くしたが、これが本当に地球規模で起きた出来事だったと証明するには、ほかの地域からの証拠による裏付けが必要だとドイツ、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの地磁気学者フロリアン・ルイリエ氏は指摘する。また、堆積岩だけでなく火山岩の記録も見たいと話す。

形成時に粉砕・圧縮され、変性することもある堆積岩では、地磁気の記録が影響を受けている可能性があるからだ。

 とはいえ今回の研究は、大昔の地球の活動の激しさを垣間見せ、取り組むべき新鮮なデータをたっぷり提供してくれた。リバプール大学の地球科学者コートニー・ジーン・スプレイン氏は、データをコンピューター・モデルと比較してみたいと言う。
「いくつかのモデルを走らせて、その意味を考えたいと思います」

文=Maya Wei-Haas/訳=三枝小夜子









山中伸弥が「人類は滅ぶ可能性がある」とつぶやいた「本当のワケ」10/5(土) 9:01Yahoo配信 の記事をコピペしました。


タモリさんと山中伸弥さんが司会を務めたNHKスペシャル「シリーズ人体Ⅱ遺伝子」は、今年高視聴率を獲得した番組として話題になった。背景にあるのは、現在急速に進む「遺伝子」研究への期待と不安――。技術は日々進化し、テレビで遺伝子検査のCMが流れる時代にあって、ゲノム編集で人体が「改造」されるのもそう遠くないのではないかと考える人もいるだろう。


死ぬ直前に人間が体験する「虫の知らせ」と「お迎え現象」の正体

 今回、そんな『シリーズ人体 遺伝子』書籍化のタイミングで、特別対談が企画された。生命科学研究のトップリーダー山中伸弥さんと浅井健博さん(NHKスペシャル「シリーズ人体」制作統括)が、いまなぜ生命倫理が必要か――その最前線の「現実」を語り明かした。


山中さんの踏み込んだ発言
 「人類は滅ぶ可能性がある」――これは収録中、司会の山中伸弥さんがつぶやいた言葉である。


 私たち取材班は、番組を通じて、生命科学の最前線の知見をお伝えした。どちらかといえば、その内容は明るく、ポジティブな未来像を描くものだった。

 それだけに私(浅井健博)は、山中さんの踏み込んだ発言に驚かされたが、同様の不安を視聴者も感じていたことを後に知った。

 Twitterや番組モニターから寄せられたコメントの中に、未来に期待する声に交じって、生命科学研究が際限なく発展することへの漠然とした恐れや、技術が悪用されることへの不安を指摘する意見も含まれていたからだ。

 それにしても「人類が滅ぶ可能性」とは、ただごとではない。山中さんは日本を代表する生命科学者であり、iPS細胞の作製という最先端技術を生み出した当事者でもある。だからこそ生命科学が、人類に恩恵をもたらすだけでなく、危険性も孕んでいることを誰よりも深く認識しているのではないか。

 そう考えた私は、山中さんの話を聞くため、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の所長室を訪ねた。


「こんなことまでできるのか」

 浅井 まず今回の番組の感想をお聞かせください。山中さんのご研究と関連して、興味を持たれたところ、面白いと感じられたところはございますか? 

 山中 番組で扱われた遺伝子やゲノムは、僕たちの研究テーマですから、内容の大半に馴染みがありました。しかし、DNAから、顔の形を予測する技術には、正直、ビックリしました。

 浅井 どのあたりに驚かれたのですか? 

 山中 研究の進展のスピードです。僕の予想以上のスピードで進んでいる。番組の台本をいただく前に、取材先の候補とか、番組の中でDNAから顔を再現するアイデアをあらかじめ教えていただきましたね。その段階では、DNAからの顔の再現は、将来は実現可能だとしても、まだしばらく無理だろうと思っていました。

 しかしその後、関連する論文を自分で読んだり、実際に映像を見せていただいたりして考えをあらためました。「こんなことまでできるのか」と。

 僕たちも、以前は自分の研究とは少し異なる分野の関連する論文も読んでいましたが、今は数が多くなりすぎて、とてもすべてをフォローできません。番組のもとになった、中国の漢民族の顔の再現の研究についてはまったく知りませんでした。もっと勉強しないとダメだと思いましたね。

 浅井 今回の番組をご覧になった視聴者の方が寄せた声から、研究の進展のスピードや精度の向上が大きな驚きを持って受け止められたことがわかりました。

 一方で、「悪用も可能ではないか」「遺伝子で運命が決まるのではないか」と不安や恐れを感じられた方もいました。山中さんは、こういった技術に対する脅威あるいは危険性を、どう考えておられますか? 
 
山中 以前はDNAの連なりであるゲノムのうち2%だけが大切だと言われていました。その部分だけがタンパク質に翻訳されるからです。

 ところが、タンパク質に翻訳されない98%に秘密が隠されていると、この10年で劇的に認識が変わりました。ジャンク(ゴミ)と言われていた部分にも、生命活動に重要な役割を果たすDNA配列があることが明らかになったのです。

 さらにDNA配列だけでは決まらない仕組み、第2部で登場したDNAメチル化酵素のような遺伝子をコントロールする、いわゆるエピゲノムの仕組みの解明も急速に進みました。

 iPS細胞も遺伝子を導入して作りますが、そのときエピゲノムに大きな変化が起こって細胞の運命が変わります。ですから、最先端の生命科学研究のひとつひとつを詳しくフォローできないまでも、その研究の持つ意味については、僕もよく理解していたつもりです。

 もちろん理解できることは大切ですが、それだけでは十分ではありません。すでにゲノムを変えうるところまで技術が進んでいるからです。

 宇宙が生まれて百数十億年、あるいは地球が生まれて46億年、生命が生まれて38億年、その中で僕たち人類の歴史はほんの一瞬にすぎません。しかしそんな僕たちが地球を変え、生命も変えようとしている。

 長い時間をかけてできあがったものを僕たち人類は、今までになかった方法で変えつつある。よい方向に進むことを祈っていますが、一歩間違えるととんでもない方向に行ってしまう。そういう恐怖を感じます。番組に参加して、研究がすさまじい速度で進展することのすばらしさと同時に、恐ろしさも再認識しました。

外形も変えられ病気も治せるが……

 浅井 番組の中では、どこまで最先端の科学が進んでいるのかをご紹介しました。それは、私たち素人にとってもとても興味深い内容でした。中でも、先ほど山中さんがおっしゃったゲノムを変える技術について、おうかがいしたいと思います。

 ゲノムを人為的に変える技術は昔からありましたが、最近になってゲノム編集と呼ばれる新しい技術が登場して、従来よりも格段に簡単にゲノムを改変できるようになりました。この技術に注目が集まると同時に、生命倫理の問題も浮上しています。

 山中 ゲノム編集は、力にもなれば、脅威にもなると思います。僕たちの研究所でも、ゲノム編集を取り入れていますが、ゲノムをどこまで変えていいのかという問題に、僕たちも今まさに直面しています。

 浅井 ゲノムを辞書にたとえると、自由自在に狙った箇所を、一文字単位で書き換えられるのが、ゲノム編集ですね。

 2012年に、アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授とスウェーデンのウメオ大学のエマニュエル・シャルパンティエ教授らの共同研究チームによって開発された「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」と呼ばれる技術が有名です。

 山中 今では生命科学研究に欠かせない技術です。

 浅井 番組の中で、鼻が高くなる、低くなるといった身体的特徴の違いや、あるいはカフェインを分解しやすい、分解しにくいといった体質の違いなど、いろんな性質を決める仕組みが遺伝子研究によって明らかにされつつある状況を紹介しました。

 こういうさまざまな性質は今後、コントロールできるようになるのではないかと考えられています。本当に顔の形や病気のかかりやすさなど、コントロールすることはできるのでしょうか?
 
 山中 たとえば、ミオスタチンと呼ばれる筋肥大を抑制する遺伝子をゲノム編集によって破壊すると、種を超えていろんな動物の筋肉量が増えることが知られています。

 遺伝情報に基づいて外見的、生理的に現れた性質を「表現型」と呼びますが、病気を含め、いろいろな表現型をゲノム編集によって実際に変えられることが示されています。

 ただしわかっていないこともたくさんあります。どこまで正確に変えられるのか。表現型を変えたとして1~2年はともかく、何十年か後に影響が出ることはないのか。

 生殖細胞を改変した場合、つまり次の世代に伝わる変化を起こしたとき、何百年という単位でどういう影響がありえるのか。これらは未解決の問題です。

 今の段階では、人類がゲノムを完全に制御できるわけではなく、リスクがある。やはりリスクとベネフィットを評価して、ベネフィットが上回ると考えられる場合に限って、慎重に進めていくべきです。規制も必要でしょう。逆に、規制がないと大変なことになるという漠然とした恐怖感が常にあります。

 浅井 恐怖と言えば、世代を超えて恐怖が遺伝するという研究も番組で紹介しましたが、ゲノムを改変すれば恐怖をコントロールすることすら可能かもしれないですね。

 山中 知らないうちに記憶を植えつけられるといったモチーフを使ったSFもあります。言い古されていることですが、SFで描かれている内容は現実になることが多い。さらにSFで描かれていない、SF作家ですら想像できないことを科学が実現することもよくあります。

 どういう未来が来るのか、本当にわかりません。科学者として、僕も人類を、地球をよくしたいと思っています。しかし科学は諸刃の剣です。

 浅井 人類のために良かれと思ってしたことが、災いをもたらす可能性もあります。山中さんがスタジオトークで「人類が滅ぶ可能性もある」とおっしゃったとき、ハッとさせられました。

 山中 僕たち人類は、1000年後、1万年後も、この地球に存在する生物の王として君臨していると思いがちですが、自明ではありません。1万年後、私たちとは全然違う生物が、地球を支配していても不思議ではありません。しかも、自然にそうなるのではなく、人間が自らそういう生物を生み出すかもしれません。

 うまくいけば人類は地球史上最長の栄華を誇ることができるかもしれないし、一歩間違うと、新たな生物に地球の王座を譲り渡すことになります。

 今、人類はその岐路に立っていると思います。ゲノムを変えることだけではありません。大きな電力を作り出すことができる原発ですが、ひとたび事故が起きると甚大な被害が発生します。

 暮らしの中のあらゆる場面で活躍するプラスチックですが、海を漂流するゴミとなり生態系に影響を及ぼしています。科学技術の進歩が、人間の生活を豊かにするのと同時に、地球、生命に対して脅威も与えているのです。


研究者の倫理観が弱まるとき

 浅井 遺伝子には多様性を広げる仕組み、あるいは局所的な変動に適応する仕組みが組み込まれています。遺伝子は、今現在の僕らを支えつつ、将来の変化に対応する柔軟性も備えているわけです。その仕組みに人の手を加えることはどんな結果につながるのでしょうか? 

 山中 ダーウィンは、進化の中で生き残るのは、いちばん強い者でも、いちばん頭がよい者でもなく、いちばん適応力がある者であると言いました。

 適応力は、多様性をどれだけ保てるかにかかっています。ところが今、人間はその多様性を否定しつつあるのではないか。僕たちの判断で、僕たちがいいと思う方向へ生物を作りかえつつあると感じています。

 生物が多様性を失い、均一化が進むと、ちょっと環境が変わったとき、たちどころに弱さを露呈してしまいます。日進月歩で技術が進む現代社会は、深刻な危うさを孕んでいると思います。

 浅井 しばらくは大丈夫と高をくくっていましたが、あっというまにそんな事態に陥るかもしれません。だからこそわれわれは番組制作を通して、警鐘を鳴らす必要があると考えています。

 一方、山中さんは番組の中で「研究者としてどこまでやってしまうのだろうという怖さがある」と発言されています。

 多くの研究者の方々はルールに従い、何をしていいのか、してはならないのかを正しく理解していると思いますが、研究に歯止めが利かなくなると感じるのはなぜでしょうか? 


人間の残虐性に迫ったアイヒマン実験


 山中 人間は、特定の状況に置かれると、感覚が麻痺して、通常では考えられないようなひどい行動におよぶ場合があるからです。そのことを示したのが、アイヒマン実験です。裁判を受けるアイヒマン(Photo by: gettyimages)

 浅井 有名な心理学実験ですね。アイヒマン(アドルフ・アイヒマン)はナチス将校で、第二次大戦中、強制収容所におけるユダヤ人大量虐殺の責任者でした。

 戦後、死刑に処されました。彼は裁判で自分は命令に従ったにすぎないと発言しました。残虐というよりは、内気で、仕事熱心な人物に見えたとも言われています。

 山中 そんな人物がどうして残虐になり得るのか。それを検証したのが、イェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラムが行ったアイヒマン実験です。

 この実験の被験者は教師役と生徒役に分かれ、教師役が生徒役に問題を出します。もし生徒役が問題を間違えると、教師役は実験者から生徒役に電気ショックを与えるように指示されます。

 しかも間違えるたびに電圧を上げなければなりません。教師役が電気ショックを与えつづけると生徒役は苦しむ様子を見せます。ところが実際には生徒役はサクラで、電気など通じていない。生徒役の苦しむ姿は嘘ですが、叫び声を上げたり、身をよじったり、最後には失神までする迫真の演技なので、教師役は騙されて、生徒役が本当に苦しんでいると信じていました。

 それでも、教師役を務めた被験者の半分以上が、生徒役が失神するまで電気ショックを与えた。教師役の被験者がひとりで電気ショックのボタンを押すのなら、そこまで強いショックを与えられなかったでしょう。

 ところが、白衣を着て、いかにも権威のありそうな監督役の実験者から「続行してください」とか「あなたに責任はない」と堂々と言われ、教師役はボタンを押すのをためらいながらも、どんどんエスカレートして、実験を継続したんです。

 浅井 ショッキングな実験結果ですね。権威のある人のもとで、人間は際限なく残酷になってしまう。


チームのほうが誘惑に弱くなる

 山中 研究にも似ている側面があるのではないか。ひとりで研究しているだけなら、生命に対する恐れを感じて、慎重に研究する。そういう感覚はどの研究者にもあると思います。

 ところがチームになって、責任が分散されると、慎重な姿勢は弱まって、大胆になってしまう。たとえルールがあっても、そのルールを拡大解釈してしまう。気がついたらとんでもないことをしていたというのは、実際、科学の歴史だけでなく、人類の歴史上、何度も起きたし、これからも起こりえます。

 科学を正しく使えば、すばらしい結果をもたらします。しかし今、科学の力が強すぎるように思います。現在ではチームを組んで研究するのが一般的です。そのため責任が分散され、倫理観が弱まって、危険な領域へ侵入する誘惑に歯止めが利きにくくなっているのではないかと心配しています。

 浅井 山中さんご自身も、そう感じる局面がありますか?
 
 山中 そういう気持ちの大きさは人によって違います。

 僕はいまだにiPS細胞からできた心臓の細胞を見ると不思議な気持ちになる。ちょっと前まで、血液や皮膚の細胞だったものが、今では拍動している、と。

 ヒトiPS細胞の発表から12年経ちますが、この技術はすごいと感じます。しかし人によっては、毎日使っているうちにその技術に対する驚きも消えて、当たり前になる。

 歯止めとして有効なのは、透明性を高めることだと思います。密室で研究しないことです。研究の方向性について適宜公表し、さまざまな人の意見を取り入れながら進めていくことが重要ですし、そうした意見交換をしやすい仕組みを維持することも大切だと思います。

(構成・執筆:緑慎也)









吉野彰氏にノーベル化学賞 リチウムイオン電池を発明

2019/10/09 19:00 msnの記事をコピペしました。

© 産経新聞社 吉野彰氏にノーベル化学賞 リチウムイオン電池を発明

 スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2019年のノーベル化学賞を、リチウムイオン電池を発明した旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71)ら3氏に授与すると発表した。小型で高性能の充電池として携帯型の電子機器を急速に普及させ、IT(情報技術)社会の発展に大きく貢献した功績が評価された。

 吉野氏はビデオカメラなど持ち運べる電子機器が普及し、高性能の電池が求められていた昭和58(1983)年にリチウムイオン電池の原型を開発した。ノーベル化学賞を受賞した白川英樹筑波大名誉教授が発見した電導性プラスチックのポリアセチレンを負極の材料に使い、これに米国研究者が開発したコバルト酸リチウムの正極を組み合わせて作った。

 その後、負極の材料を炭素繊維に変更することで小型軽量化し、電圧を4ボルト以上に高める技術も開発。同じ原理で平成3年にソニーが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化した。

 繰り返し充電できる電池はニッケル・カドミウム電池などが既にあったが、性能を飛躍的に高めたリチウムイオン電池の登場で携帯電話やノートパソコンなどが一気に普及。スマートフォンなど高機能の電子機器を持ち歩く「モバイル(可動性)社会」の実現に大きな役割を果たした。

 リチウムイオン電池の市場規模は世界で4兆円超に拡大。近年は電気自動車や人工衛星などにも用途が広がっているほか、再生可能エネルギーを有効に利用する手段としても期待されている。

■ 授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金計900万スウェーデンクローナ(約9700万円)が贈られる。

 よしの・あきら 昭和23年1月、大阪府生まれ。45年、京都大工学部卒。47年、京大大学院工学研究科修士課程修了。

同年、旭化成工業(現旭化成)入社。平成4年、イオン二次電池事業推進部商品開発グループ長。9年、イオン二次電池事業グループ長。13年、電池材料事業開発室室長。15年、同社フェロー。27年10月、同社顧問。29年、名城大教授、旭化成名誉フェロー。

 16年、紫綬褒章。24年、米国電気電子技術者協会(IEEE)メダル受賞。26年、全米技術アカデミー「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」受賞。30年、日本国際賞。令和元年6月、欧州発明家賞。



追伸 ノーベル化学賞・リチウムイオン電池 スマホから自動車まで生活支える

2019/10/09 19:23 msnの記事をコピペしました。

© 産経新聞社 ノーベル化学賞・リチウムイオン電池 スマホから自動車まで生活支える

 今年のノーベル化学賞に、リチウムイオン電池を実用化した旭化成の吉野彰名誉フェローが選ばれた。リチウムイオン電池は今や、スマートフォンから自動車まで、日常生活のあらゆる場面で使われている。平成26年に日本人研究者3人が物理学賞を受賞した青色発光ダイオード(LED)と同様、基礎技術を製品に落とし込むのが得意な日本の象徴的存在でもある。

 リチウムイオン電池は吉野氏が実用化した後、ソニーが3年にデジタルビデオカメラを小型化する目的で初めて製品化した。その後は、ノートパソコンやスマートフォンといった携帯機器を中心に搭載。最近は電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の動力源としても欠かせないほか、太陽光発電で生み出した電気を蓄える用途でも需要が拡大している。

もしリチウムイオン電池がなければ

 もしリチウムイオン電池がなければ、これらの製品も普及していないと考えれば、その社会的、経済的な影響は極めて大きい。
 韓国サムスン電子のスマホが発火・爆発事故を起こすなど、安全性を懸念する声もあるが、それ以上に貢献の大きさが評価された形だ。

 調査会社の富士経済によると、リチウムイオン電池の世界市場は2022(令和4)年に17年比で2・3倍となる7兆3914億円まで拡大するとみられている。近年は、価格競争力に勝る韓国勢や中国勢に押され気味とはいえ、今もパナソニックなど日本メーカーが一定の世界シェアを堅持している。


 正極材や負極材といった主要部材も、日本が健闘している分野だ。旭化成などの日本メーカーは、正極材と負極材を隔ててショートを防ぐセパレーター(絶縁体)で他をリードする。

 EVメーカー、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は以前、パナソニック製電池を採用した自社モデルを「日本の心が組み込まれている」と表現して自画自賛したことがある。そこには日本のリチウム電池の技術に対する尊敬の念が込められている。

 日本が実用化を主導する技術には、光触媒やカーボンナノチューブ(筒状炭素分子)、超伝導もあり、吉野氏に続く受賞が期待される。

井田通人






019年ノーベル物理学賞、宇宙の姿を変えた発見とは
10/16(水) 6:01配信 Yahooの記事をコピペしました。


2019年ノーベル物理学賞の発表の瞬間。宇宙物理学関連の3氏の受賞が決まった。(2019年10月8日撮影、写真:ロイター/アフロ)
 
 2019年のノーベル物理学賞が10月8日(日本時間)に発表されました。今年は宇宙物理学関連の2分野3氏が受賞しました。

 アメリカ・プリンストン大のジェームズ・ピーブルス名誉教授(1935-)が、「宇宙論における理論物理学上の発見」で2分の1を受賞し、残る2分の1をスイス・ジュネーブ大のミシェル・マイヨール名誉教授(1942-)とディディエ・ケロー教授(1966-)が「よその恒星を周回する惑星の発見」で分け合いました。

 天文・宇宙物理学分野にノーベル物理学賞が分配されるのは、(最近やや増加の傾向がありますが)3~4年に1回程度の珍しい出来事です。宇宙と天文が大好きなこの連載としては、めでたい受賞を大喜びで解説いたします。



■ ピーブルス名誉教授と宇宙論のバイブル

 「宇宙論」とは物理学の一分野で、この宇宙がいつどのように始まったか、宇宙全体がどのような構造を持つか、といったことを研究します。この哲学的で格好いい学問は、宇宙の存在する理由を明らかにすると期待されますが、今のところまだその答は得られていません。

 今回ノーベル物理学賞を受賞したピーブルス名誉教授は、もちろんこの分野に大きな貢献をしてきたことで名高いのですが、それに加えて、何冊もの宇宙論の教科書の著者として、業界では有名です。それらの本は後のものほど厚くなり、1993年に出版された『Principles of Physical Cosmology(物理的宇宙論の原理)』に至っては700ページを超える大著です。

 宇宙論を先導してきたピーブルス先生によるこれらの本は、この分野を学ぶ学生や研究者の必読書です。筆者もこの教科書で勉強しました。宇宙論のバイブルと呼んでいいでしょう。この受賞を機に、先生の名著が邦訳されることを期待しましょう。


■ 研究テーマは宇宙から来るマイクロ波

 ピーブルス先生の宇宙論への貢献は、「宇宙マイクロ波背景放射」の発見と共に始まります。

 この宇宙マイクロ波背景放射という、長たらしい呪文のような専門用語は、いったい何を意味するのでしょうか。

 実はこれは、宇宙がどうなっているかを教えてくれる超重要な物理現象で、これを調べるとノーベル賞がごろごろ転がり出てくるのです。

 マイクロ波とは、電波のうち、波長が1mm~1mのものをいいます。電子レンジは食品にマイクロ波を照射して温める装置です。

 1964年、ベル研究所のアーノ・アラン・ペンジアス博士(1933-)とロバート・ウッドロウ・ウィルソン氏(1936-)は、衛星からの電波を受信する実験を行なっていて、奇妙な雑音に気づきます。アンテナを空に向けると、マイクロ波が入ってくるのです。装置に不具合がないかどうか確かめ、巨大なアンテナについた鳩の糞を掃除することまでしましたが、雑音は消えませんでした。

 この宇宙からのマイクロ波は、特定の天体からやってくるのではなく、空のどの方向からも降り注いでいます。まるで空全体を覆う壁が星々の背後にあって、それがマイクロ波を放射しているかのようです。これが宇宙マイクロ波背景放射、英語で“Cosmic Microwave Background Radiation”、略して「CMBR」の発見です。

 この不思議なマイクロ波について知った、ピーブルス先生を含む宇宙論研究者は、その正体に気づきます。この宇宙マイクロ波は、100億年以上の遠い過去、宇宙が超高温・超高密度の火の玉だったとき、宇宙を満たしていた放射の名残です。100億年以上経って宇宙は膨張して冷え、その時の放射が今頃になってアンテナに届いたのです。

 この宇宙マイクロ波背景放射は、発見された瞬間に、宇宙が高温・高密度のビッグバンによって誕生したことを証明しました。ペンジアス博士とウィルソン氏は1978年のノーベル物理学賞を受賞しました。宇宙マイクロ波背景放射によるノーベル賞第1号と第2号です。


■ 宇宙マイクロ波はノーベル賞の鉱山

 宇宙マイクロ波背景放射は、宇宙空間を100億年以上飛び続けている古い光です。これを観測することは、100億年以上前のビッグバンを観測することです。化石を調べると地球の過去が分かるように、宇宙マイクロ波背景放射を調べると宇宙の過去が分かるのです。

 宇宙の過去、100億年以上前のビッグバンのさなかでは、何もかも溶けてしまう超高温・超高密度の空間で、クォークやらレプトンやら人類がまだその貧弱な加速器の中で見たことのない未知の粒子やらが飛び交い、衝突し、水素の原子核やヘリウムの原子核が大量に生じ、それからたぶんもっと大量の、ダークマターと呼ばれる正体の分かっていない「物質」が生じました。

 宇宙マイクロ波を観測すると、そういうありさまが観察でき、水素やヘリウムやダークマターがどれだけ生じたか分かり、現在の宇宙がどうしてこのような姿なのか、分かっちゃうのです。

 1989年、宇宙背景放射探査機コービー(COBE;Cosmic Background Explorer)が打ち上げられ、宇宙マイクロ波背景放射の詳細な観測を行ないました。コービーはマイクロ波放射のわずかなむらむらを検出することに成功しました。

 このむらむらは、ビッグバン当時の宇宙の情報を豊富に含んでいます。宇宙がどんな状態にあったかによって、このむらむらのサイズや強度が違ってきます。

 このむらむらを20年前から予想し、計算して、待ち構えていたのがピーブルス先生です。コービーの測定結果はピーブルス先生の計算に当てはめられ、宇宙の年齢や物質量やダークマター量などの「宇宙論パラメーター」が精密に決定されました。

 他の観測結果を合わせた最新の測定値だと、たとえば宇宙の年齢は、13799000000±21000000年、つまり約138億年前です。宇宙の観測可能な範囲は約467億光年です。宇宙空間の温度は2.718±0.021K、つまり-270.432℃です。宇宙空間には通常の物質の5.354倍のダークマターが存在し、さらに「ダークエネルギー」というわけの分からないものが14.22倍存在します。人類が知っている種類の物質は宇宙の約5%だけです。

 宇宙マイクロ波背景放射を測定することで、宇宙論はとんでもなく精密な科学になったのです。

 コービーのチームは、2006年のノーベル物理学賞を受賞しました。宇宙マイクロ波背景放射関連の第3号と第4号です。

 宇宙マイクロ波で5番目にノーベル賞を受賞したピーブルス先生は、ここで紹介しきれないほど多くの理論的な発見を行なっています。現在の人類が理解している宇宙の姿は、ピーブルス先生の予想に基づくといっていいほどです。


■ ペガスス座51番星b

 さて今回のノーベル物理学賞を受賞したもう一方の研究は、よその恒星を周回する惑星の発見です。

 よその惑星発見物語は、この連載の大好物で、これまで何回も紹介してきました。以下にリンクを示します。今回の受賞は、ようやくスウェーデン王立科学アカデミーもこの重要性を理解したか、という感じです。

 「4番目に近い恒星、バーナード星にも惑星があった」
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54850)

 「人類が大捜索!  『地球外生命』発見計画が発動へ」
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50451)

 「系外惑星」、つまりよその惑星は、今ではすっかり当たり前の存在になっています。2019年現在で4000個以上が確認されていて、なおも指数関数的に増えています。

 けれども、ついこのあいだの1995年までは、人類の知っている惑星といえば、水金地火木土天海冥の9惑星(当時)しかなく、よその恒星に惑星が見つかる日が果たして来るのかどうか、誰も知りませんでした。

 1995年、マイヨール名誉教授とケロー教授は、ここから45光年離れた恒星「ペガスス座51番星」を周回する巨大惑星「ペガスス座51番星b」を発見したと発表します。(惑星の名前には「b」がついてます。) 人類の初めて知るよその惑星です。

 このノーベル賞級の発見は、世界に衝撃を与えました。よその惑星は実在し、そして発見可能なのです。


■ ホットジュピター

 初めて見つかったよその惑星ペガスス座51番星bは、いろいろ特殊な性質を持っていました。太陽系の惑星と全然違うのです。

 この惑星は、我らが木星の0.47倍以上の質量を持ち、たった4.23日で主星を周回します。つまり、ペガスス座51番星bの1年は地球の4.23日です。

 軌道周期が短いということは、この惑星が主星のすぐ近くを周回しているということです。その軌道長半径は0.05天文単位、なんと我らが水星と太陽の距離よりも短いです。このため、この惑星の表面温度は1300℃以上と見積もられました。


よその惑星第1号は、木星に匹敵する巨大な惑星が、水星よりも短い軌道長半径でぎゅんぎゅん周回しているという、想像もしていなかった姿をしていたのです。

 このような主星に近い巨大惑星は、その後「ホットジュピター(熱い木星)」と呼ばれるようになります。

 これまで太陽系の惑星しか知らなかった人類は、「よその惑星も、主星に近いなら地球のような岩石惑星になって、遠ければ木星のような巨大惑星になるんじゃないかな」などと漠然と考えていたのですが、ペガスス座51番星bはそういう予断を吹き飛ばしました。

 その後、主星から逃げだしそうにひしゃげた楕円軌道を描く巨大惑星だとか、巨大な岩石惑星など、太陽系の惑星とは似ても似つかない惑星が多数見つかります。太陽系は全然スタンダードな惑星系ではありませんでした。

 井の中の蛙のような人類の予想を、広い宇宙は常に上回るのです。


■ 今では惑星4000個

 さてマイヨール名誉教授とケロー教授によって、よその惑星が発見可能であると実証されると、その後の進歩は目覚ましいものでした。ドップラー法、トランジット法などの手法で次々とよその惑星が見つかります。

 特に、2009年に打ち上げられて2018年まで活躍した惑星発見機「ケプラー」は、なんと5000個以上の惑星候補を発見します。

 ケプラーの発見した惑星候補は、地上望遠鏡などの他の手法で惑星と確認され、現在では4000個以上のよその惑星がリストに載っています。また、TESSなど次世代の惑星発見機も運用を開始しています。

 こうして、惑星の概念は、20世紀と現在ではまったく異なるものになってしまいました。というより、現在の人類にとって、夜空を見上げると見える星々の意味するところが変わってしまったのです。あの星もあの星も惑星をくっつけていて、そこには太陽系とはまったく様子の異なる世界が存在しているのです。

 マイヨール名誉教授とケロー教授の発見は宇宙を変えたのです。


(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)




「ラストエンペラー」愛新覚羅家“末裔”が語った中国建国70年
10/18(金) 11:30配信 (このコンテンツは、Yahooの記事をコピペしたものです)


清朝王室の姓「愛新覚羅」

「令和」の文字を手にカメラに向かう高齢男性。書家の愛新覚羅恒徳(あいしんかくら・こうとく86歳)氏だ。満州族の姓である愛新覚羅と言えば、映画でも有名な「ラストエンペラー」こと清王朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀(あいしんかくら・ふぎ)が有名だが、溥儀とは遠縁に当たり、清の皇帝の血を引く”末裔“だ。


【画像】1枚の書に1万元(約15万円)ほどの値段が付くという書家としての恒徳氏

激動の時代を生きた恒徳氏に中国建国70年について聞いた。

「王府」の生活から「平民」へ

辛亥革命によって既に清王朝は滅亡し、国民党の下で中華民国が成立していた1933年、恒徳氏は北京で生まれた。当時一族は故宮近くにあった皇族の邸宅である「王府」で暮らしており、恒徳氏を取り上げたのは日本人女医だったという。「王府で暮らしたのは2,3歳のころまでだった」と言い、王府を出た後もしばらくは皇族時代の金銀財宝や家具もあり、召使いや家庭教師を雇うなど、幼少期は比較的裕福な生活を送っていた。

しかし、その後一家の収入が、頤和園(清王朝の庭園。中華民国時代に現在の公園となり、その後ユネスコの世界遺産に)で総務関連の仕事をしていた父親の給与だけとなった。祖母が養っていた孤児も含めると10数人の大所帯だったこともあり、次第に生活が苦しくなり、財産を切り売りしながら生計を立てるようになった。

中国共産党が国民党との内戦に勝利し、1949年中華人民共和国が成立した頃、恒徳氏は高校入学直後だった。

共産党が政権を取った後は「都市平民」という身分を与えられ、父親にはネズミなど病院の実験で使う小動物を管理する仕事が与えられた。「王府の生活からは完全にかけ離れ、普通の市民の生活になった」という。

家に売れるものはほぼなくなり、生活苦から恒徳氏は高校1年生の時、南方への集団就職に応募した。しかし出自が“悪い”ため北京に残され、思想改造の一環として配属された警察学校を経て、公安局の警察官となった。


文化大革命、元皇族への迫害

元皇族という出自のため当初は公安局の反スパイ秘密機関に配属され、家族との連絡も許されなかった。しかし、成績がよかった恒徳氏は1年後には「思想改造が成功し反革命的ではない」と判断され、警察に転属になったことでようやくそれも許されるようになる。警察では事件を担当する部署に配属され、「成績が良く、ほぼ毎年表彰された」という。

そして、1952年18歳の時、当時の情勢の中で生き残るため、共産党の意見に従い入党することになった。

しかし、1960年代に文化大革命が始まると「皇族の血を継いでいる」という理由で、職場の「批判闘争大会」で何度か吊し上げられた。集会で群衆の前で跪かされ、反革命分子として、罵詈雑言を浴び、自己批判を迫られた。それでも「元皇族を守ってくれる派閥もあり、三角帽子は被らずに済んだ」(注・文化大革命では、批判を受ける者に「反革命分子」などと書かれた、大きな三角帽子を被せたり、プラカードを首に下げさせ吊し上げた)などと半世紀前の記憶をよどみなく語った。

「私は皇族という“悪い”出自だったので職を解かれることが一番心配だった。当時は出自が “悪い”と仕事も見つけられなかったからだ」。

1969年には北京郊外の収容施設「労働改造所」に入れられ、農場などで働いた。そして翌年農村に「下放」され(注・都市部の知識人、青年らを農村に移住させる当時の運動)、農作業のほかトイレの汲み取り作業や石炭の運搬作業にも従事したという。北京に戻ることが出来たのは労働改造所に入れられてから6年後の1975年だった。

一族には更に悲惨な運命を辿った人もいる。恒徳氏の叔父は、過去に国民党の特務機関や、日本の傀儡政権だった満州政府で働いていたなどと無実の罪を着せられ、「反革命的」だとして一家は苛烈な攻撃を受けた。

家に何度も「紅衛兵」がやってきて、清王朝から伝わる宝物(ほうぶつ)から、金品、家具・調度品に至るまで破壊、没収された。破壊が行われている間、一家6人は家のトイレに閉じ込められ、家が壊される音を聞いているしかなかったという。叔父はやがて紅衛兵から受けた暴力や精神的苦痛から病気になり、60歳代で亡くなった。

また、恒徳氏の母親は清王朝で新疆を治める将軍の娘だったことから、街中の「批判闘争大会」で吊るしあげられた。「母は嫁いでからは何の仕事もしておらず、専業主婦だったのに」と当時の無念さを語った。


書家として

文革が終わると、恒徳氏は役所の末端の仕事を与えられたが、その後かつての警察幹部を復帰させる政策が打ち出され、警察に復職。出世を重ね、最後は警察組織内の党幹部として退職した。今は月8000元(約12万円)の年金をもらい、書家としても活動している。

「周りが書家と呼ぶだけで、自ら書家と認めたことはない」と謙遜するが、展示会に出展したり、書家に関する本にも度々書が掲載されるほどの腕前だ。1枚の書に1万元(約15万円)ほどの値段が付くという。皇室には代々、唐時代の書家の書体が伝わっていて、恒徳氏は「その中でも比較的“正体”なのが自分の字の特徴だ」と語る。


ラストエンペラー溥儀の思い出

恒徳氏自身が溥儀を見たのは一度だけ。溥儀が労働改造所から釈放された後、街で自転車に乗って出勤する姿を見かけただけだ。映画にも登場する弟の溥傑(ふけつ)とは何度か家に行って話したこともあるという。「溥傑は猫を飼うのが好きな人で、家にたくさん猫がいた」と恒徳氏は振り返った。

父親から聞いた話として覚えているのは、溥儀が満州国の皇帝になった頃、父が満州へ行って、「龍袍」という皇帝が着用する装束を贈ったところ、満州を実際に支配していた日本の関東軍が着ることを許さなかったという。「父は満州が完全に日本人に操られているのを見て、すぐに北京に帰ってきてしまった」。


建国70年を迎えて

国慶節を間近に控えたこの日、かつての宮殿、故宮の入り口にあたる天安門では、建国70周年の軍事パレードに向けて準備が進められていた。恒徳氏が子供のころは親に天安門周辺には連れてきてもらえず、初めてここへ来たのはちょうど70年前、毛沢東が「中華人民共和国成立」を宣言したその日だった。「あの時は東側の壁の下にいた。学校の生徒がここで集合した」「当時門はこんなに大きくなかった」などと思い出を語った。

「70年の変化はとても大きかった。改革開放以降は生活が向上した」
「政治、経済、国際関係も良くなった」
「今は元皇族でも差別なく平等に扱われている」。

恒徳氏は、現在の生活が安定していることから70年間の歩みを評価している。一方で、共産党に対しては、「何も悪いことをしていないにもかかわらず、度々不公平な扱いを受け、悔しい思いをさせられたこともある」と、複雑な気持ちを持っている。しかし、恒徳氏は時代を生き抜くうえで共産党に入ったことは「賢明な判断だった」と考えている。結婚したばかりの恒徳氏(20歳頃)

今、共産党政権は改革開放以降の発展ぶりを前面に掲げ、建国70年の輝かしい成果を強調している。しかし同時にこの70年は、共産党の強い統制の下、政治や社会の激しい変化によって多くの人々の運命が翻弄されてきた時代でもある。

【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】
70年前の中国写真集









日本経済をスカスカにした真犯人、
日本発「多国籍企業」の罪と罰

11/20(水) 5:00配信


新聞各紙は今冬のボーナス支給額、そしてトヨタ自動車の純利益がそれぞれ過去最高を記録したと伝えていますが、我々一般庶民が「好景気」を肌で感じることは難しいと言っても過言ではありません。その一因に「日本経済の分断」があるとするのは、米国在住の作家・冷泉彰彦さん。冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、このような分断が生じた理由を明らかにするとともに、日本経済が「スカスカ」になった原因を考察しています。

● もはや先進国ではない。なぜ、日本経済はスカスカになったのか?

引き裂かれた日本経済 日本的空洞化の研究その1

日本経済の空洞化が止まりません。いつの間にか、日本経済はスカスカになっています。格差、貧困、ブラック労働に子どもの貧困、こうした問題が国内では進行しています。今回の消費税アップでは、前回の3%アップ時に消費が低迷したことの再来を恐れて、軽減税率やポイント還元が行われましたが、逆に考えれば、そうした対策をしなくては2%アップのインパクトが吸収できない、そのぐらいに日本国内の購買力は弱っているのです。

その一方で、多国籍企業は空前の利益を挙げています。そしてアベノミクス効果で株高となり、都心のタワーマンションなどは高騰しています。いったい日本経済に何が起こっているのでしょうか?このシリーズでは、「空洞化」それも「日本型空洞化」をキーワードとして、このスカスカになった日本経済の状況に迫ってみたいと思います。最初に取り上げたいと思うのは、日本経済の分断、つまり日本経済というのが2つに分裂しているという問題です。分裂の第一は「正社員経済」と「非正規経済」の分裂です。

毎年のことですが11月になると、経済ニュースとして「冬のボーナスの増減」が話題になります。例えば、2019年の場合11月14日付の日本経済新聞(電子版)には次のような記事が掲載されています。経団連は14日、大企業が支給する冬の賞与(ボーナス)の第1回集計をまとめた。平均妥結額は96万4543円となり、前年比で1.49%増えた。主に春先までの堅調な企業業績を反映し、2年連続で過去最高を更新した。造船や自動車、建設が全体をけん引した。プラス幅は昨年(3.49%)より鈍ったが、経団連は「賃金引き上げの流れは継続している」とみている。

東証1部上場で従業員が500人以上の82社分を集計した。製造業は94万7400円で、前年比1.54%増えた。非製造業も2.01%増え、132万7787円となった。業種別にみると7業種が増額、5業種が減額だった。要するにボーナスの支給額が、2年連続で「過去最高」だったというのです。しかも平均妥結額は全体で96万とか、非製造業では132万という高額になっています。これは非常におかしな話です。

日本の現在の労働慣行では、正規労働、つまり正社員の場合、給料の5ヶ月分とか7ヶ月分がボーナスとして別に用意されて、夏(6月)と冬(12月)に分けて支給されています。一方で、非正規労働の場合は、会社によって呼び方は違いますが、契約社員など月収の高い契約でも、それ以外のパートや派遣社員の場合でもボーナスはありません。

正規と非正規の違いは、ボーナスの有無だけではありませんが、給与体系ということで見れば、この2つを分ける大きな違いとなっています。勿論これは問題です。どうしてボーナスがあるのかというと、給料が毎月の生活費分に消えるとして、それとは別に耐久消費財を買ったり、住宅購入の頭金にしたり、あるいは住宅ローンのボーナス返済に使ったりするためです。

つまり、ボーナスのある正規雇用と、ない非正規雇用の間には、生活スタイルの決定的な違いがあるわけです。違いが連続している中での差ではなく、全く別の所得階層と言っていい差があるわけです。

百歩譲って、そうした制度があるということは前提にするにしても、今回の経団連の発表では、膨大な数の「ボーナスがゼロ」だという非正規の人はそもそも調査の対象に入っていないのです。そもそも、膨大な数の「ゼロ」を計算に入れるのであれば、絶対に「史上最高額」などというセリフは出てこないはずです。仮に正社員への支給額の平均が100万円でも、正社員と同数の契約社員がいて、彼らのボーナスがゼロであれば、平均は半額の50万円になります。

ですが、そうした計算は行われません。それは、経団連という団体が、終身雇用で守られてボーナスの支給対象となる正社員共同体の利害を代表する団体だからです。そもそも6月12月になると、ボーナスの季節になったとか、史上最高額だというのは、対象外の非正規の人々には腹立たしいだけです。にも関わらず、そうした表現が平気で使われているのです。

なぜかとというと、経済新聞を読んだり、こうした統計を見たりする人、は非正規労働者のことをほぼ100%無視しているからです。ということは、経済が2つに分かれているということです。つまりボーナスがあって、史上最高額のボーナスを受け取れる正規労働者の属している経済と、ボーナスのない非正規労働者の属している経済、日本経済と言っても、その2つは完全に分断されていると言っていいでしょう。

分断の一方である非正規労働者は、どうしてそんなに低い処遇で甘んじているのでしょうか?よく言われるのは「派遣労働法を作ったのが悪い」とか「就職氷河期があったので不公平だ」という批判ですが、そうした問題は結果に過ぎません。多くの企業が、日本国内の事務仕事に高い給料が払えなくなったので派遣労働が必要になったのであって、派遣労働法ができたから非正規が増えたのではありません。またいわゆる氷河期には、日本企業の業績が著しく落ち込んで、回復の見込みがなかったから新卒採用が極端に抑制されたのであって、これも結果としてそうなっただけです。

何が問題なのでしょう?そこにはもう第二の分裂という問題が絡んできます。それは「多国籍企業の全世界連結決算」と「国内経済への貢献」という分裂です。ボーナスが史上最高額という記事と並んで、最近よく目にするのが「企業の業績が史上最高」というニュースです。例えばトヨタの場合は、2019年4~6月期の売上高と当期利益は過去最高を記録したそうです。間違いではありません。ですが、問題はその「過去最高」の意味です。

トヨタの構造を見ると、年間の生産台数は約1100万台(最新の2019年4月~9月では545万台)ですが、大雑把に言って国内での生産は440万台で海外生産660万台で、海外生産の方が多いわけです。

また、国内生産のうち半分は輸出となっていて、つまり総生産台数1100万台のうち80%は海外市場向けです。国内販売は年間ベースで220万台で、全体の20%となっています。しかも、この220万台のうち、3分の1に当たる65万台はトヨタグループ内の「ダイハツ」の販売となっています。要するに軽四なのです。ということは、例えば北米向けの車両の平均価格と比べると売上ベースでは半分以下ということです。

また220万を輸出していると言っても、中身は決して昔とは同じではありません。昔は、トヨタの場合、アメリカ向けには「輸出台数の自主規制」というものがあり、その枠を最大限に利用するために、「レクサスなど高級車、高付加価値者」を日本で作って輸出していました。

ですが、現在は違います。北米向けレクサスの生産も、ES(ケンタッキー)、RX(オンタリオ)など海外に出してしまっているのです。また国内で生産して輸出する場合は、国内経済への貢献は「卸値」だけです。そう考えると、トヨタ全体の中で日本のGDPに貢献しているのは10%ぐらいであると考えることができます。

ということは売り上げが過去最高とか、空前の利益といっても90%は日本のGDPとは無関係だということが言えます。雇用ということでも、基幹の技術職、マネジメント職も含めて、トヨタの場合はグループの中での外国人比率は50%を超えています。また出資している株主も海外が中心、取引される市場はNY、したがって配当金の行く先も海外です。

私はグローバル経済を基本的に支持しています。自由な国際市場があって、自由な競争がされることで、多様な人材のコミュニケーションが生まれ、新しいアイディアが実現されていき、人類全体としては生活水準の向上につながるからです。自由貿易も同じ理由から賛成です。

また、空洞化といわれる現象、つまり多国籍企業がモノを作る場合に、先進国である本社で製造してしまうと、コストが高いので途上国で生産してコストを抑制するとか、そうした途上国も販売先に加えていくというのは、水が高いところから低いところへ流れるように、仕方のないことだし、余程の弊害がない限り運命として受け入れるべきと思ってきました。

同時に、市場によっては「生産を現地でやって、雇用を創出しないと輸入関税をかける」という地域があり、その場合も現地生産を進めることで本体は空洞化することがあります。これも場合によりますが、避けられないケースが多いと思います。

ところが、現在の日本発の多国籍企業の場合は、生産と販売だけでなく、研究開発からマーケティング、あるいは経営戦略までドンドン外に出してしまっています。例えばトヨタの場合では、多くの予算を使ってCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、EV化)分野向けの研究開発をしていますが、そのほとんどは海外でやっています。

そうなると、研究開発費を払う先、研究開発のために雇用する人材への給与なども海外になっていきます。そしてノウハウは海外に蓄積されて、徐々に「日本発の多国籍企業」であったものが事実上は「無国籍企業」になっているわけです。

そうなのですが、今でも「トヨタが最高業績」だと日本の新聞は喜ぶわけです。また、日本の鉄道車両メーカーが、ヨーロッパで大量受注に成功したり、アジアで新幹線プロジェクトを請け負うことが決まると、メディアは良いニュースだとか、これで日本経済も元気になるなどという言い方をします。

悪いことではありませんが、実際は鉄道のような公共インフラの場合は、特に車両の大量受注のようなケースですと、各国は雇用保障のために、現地で生産することがディールの条件になっているわけです。そうなると、例えば英国の鉄道車両を日立が受注したとしても、日本経済への貢献は一部の技術に関するライセンス料ぐらいにしかならないのです。

つまり、日本経済といってもトヨタとか日立という多国籍企業の「全体の業績」と、純粋に日本に金が落ちて、日本で金の回る日本のGDPとは全く別物だということになります。この点が、どうにも誤解が多いわけです。どうしてかというと、経済新聞とか経済記事を読む人は、圧倒的に正規雇用の人が多いわけです。彼らの感覚は、まず自分の会社、日本における自分の業界の発展・成長が大事だという考えが中心になっています。ですから、トヨタが市場最高益だとか、日立が欧州で大型受注をしたというと、喜ぶわけです。

ですが、純粋に国内の税収とか、雇用とか、消費という点では、確かに海外で稼いだ金で日本勤務の正社員のボーナスが増えたり、アベノミクス効果も加わって、日本での株価が上がれば、多少は日本での消費にはいい影響はあるでしょう。日本での採用とか雇用には若干プラスかもしれません。ですが、それだけです。

とにかく海外で稼いだ金は、日本には還流しません。多くの場合は、海外に再投資されます。その結果として、日本経済といっても2つの経済に分断されているわけです。1つは多国籍企業が世界中で稼いだ「連結」の数字です。もう1つは、日本国内の経済活動の全体を表す「GDP」です。

昔は、この2つの数字には相関関係がありました。ですが、今は違います。多国籍企業が世界中でどんなに稼いでも、GDPへの貢献は少ないのです。だから、日本国内の経済はスカスカになっています。いつまでも牛丼店が思い切った値上げができないのも、無料の花火大会ばかりに人が殺到するのも、ブラックな外食産業が学生バイトを酷使してそれでも大した利益が出ないのも、日本国内の格差、貧困、社会苦がドンドン悪化して閉塞感が広がっているのも、この「日本型空洞化」に原因があると思うのです。

こう申し上げると、それではトランプと同じ「経済ナショナリズム」だという批判が来そうです。それは私としては気持ちのいいことではありません。先ほど申し上げたように、日本は自由貿易によってグローバルな世界で勝って来たという感覚があるのです。ですが、もしかしたら、そこで勝って来たのは日本発の多国籍企業だけであって、日本経済は負け続けて来たのではないか、それが「スカスカ」ということの意味なのです。

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プリンストン通信の著者
冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。






ユヴァル・ノア・ハラリが警告する「データの罠」
11/26(火) 6:30配信 Yahooの記事をコピペしました。


■土地と機械は影が薄くなり、21世紀の最も重要な資産はデータとなる

『サピエンス全史』が日本国内90万部、第2作の『ホモ・デウス』が同37万部となり、世界では著作の累計部数が2000万部を超える社会現象となっているユヴァル・ノア・ハラリ。最新の第3作『21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考』(以下『21Lessons』)では、「現在」に焦点を当て、自由、平等、コミュニティ、ナショナリズム、テロ、戦争、ポスト・トゥルース、教育、人生の意味など、われわれ人類が直面している21の重要課題を取り上げている。

ハラリがとりわけ力を入れて論じているのが、データの所有をめぐる問題である。私たちが日々、何気なく行っていることがいったい何を招くのか。ハラリが警鐘を鳴らしている新刊の「平等」の章から抜粋してお届けする。

 もし、一握りのエリート層の手に富と権力が集中するのを防ぎたいのなら、データの所有権を統制することが肝心だ。古代には、土地はこの世で最も重要な資産であり、政治は土地を支配するための戦いで、あまりに多くの土地があまりに少数の手に集中したときには、社会は貴族と庶民に分かれた。

 近代には機械と工場が土地よりも重要になり、政治闘争は、そうした必要不可欠な生産手段を支配することに焦点を合わせた。そして、あまりに多くの機械があまりに少数の手に集中したときには、社会は資本家階級と無産階級に分かれた。


■なぜ巨大企業はデータ蓄積に価値を置くのか

 それに対して21世紀の最も重要な資産はデータで、土地と機械はともにすっかり影が薄くなり、政治はデータの流れを支配するための戦いと化すだろう。もしデータがあまりに少数の手に集中すると、人類は異なる種に分かれることになる。

 データの獲得競争はすでに始まっており、グーグルやフェイスブック、百度(バイドゥ)、騰訊(テンセント)といった巨大なデータ企業が先頭を走っている。これまでのところ、こうした巨大企業の多くは、「注意商人(attention merchant)」というビジネスモデルを採用しているようだ。彼らは無料の情報やサービスや娯楽を提供することで私たちの注意を惹き、その注意を広告主に転売する。

 とはいえ巨大なデータ企業はおそらく、従来のどの「注意商人」よりもはるかに上を狙っている。彼らの真の事業は広告を売ることではまったくない。むしろ、私たちの注意を惹いて、私たちに関する厖大な量のデータを首尾良く蓄積することだ。そうしたデータはどんな広告収入よりも価値がある。私たちは彼らの顧客ではなく、製品なのだ。

中期的には、このようなデータの蓄積は、これまでとは根本的に異なるビジネスモデルへの道を拓く。その最初の犠牲者は、広告業界そのものになるだろう。新しいモデルは、物を選んで買う権限を含め、さまざまな権限を人間からアルゴリズムへと移すことに基づいている。いったんアルゴリズムが私たちのために物を選んで買うようになれば、旧来の広告業界は壊滅する。

 グーグルを考えてほしい。グーグルは、私たちが何を尋ねても、世界一の答えを与えられる段階にまで到達することを望んでいる。私たちが、「こんにちは、グーグル。あなたが自動車について知っていることのいっさいと、私(私の必要や習慣、地球温暖化についての見方、さらには中東の政治についての意見まで含む)について知っていることのいっさいに基づけば、私にいちばんふさわしいのはどの自動車?」とグーグルに訊くと、どうなるか? 

 もしグーグルが適切な答えを与えることができ、もし私たちが、簡単に操作されてしまう自分自身の感情ではなくグーグルの知恵を信頼することを経験から学べば、自動車の広告など、なんの役に立つだろう? 


■個人データを簡単に手放すと取り返しがつかない事態に

 長期的には、巨大なデータ企業は十分なデータと十分な演算能力を併せ持つことで、生命の最も深遠な秘密をハッキングし、そうして得た知識を使って私たちのために選択をしたり私たちを操作したりするだけでなく、有機生命体を根本から作り直したり非有機生命体を創り出したりできるようになりうる。

 巨大なデータ企業は、短期的には経営を維持するために広告の販売を必要とするかもしれないが、アプリケーションや製品や企業を、それらが生み出すお金ではなく獲得するデータに即して評価することが多い。人気のあるアプリは、ビジネスモデルを欠いていて、短期的には損失を出しさえするかもしれないが、データを惹き寄せてくれるかぎり、莫大な金銭的価値を持ちうる。

 たとえ今はそのデータからどうやって利益をあげるかわからなくても、データは持っておく価値がある。なぜなら、将来、生命を制御したり、生命の行方を決めたりするカギを握っているかもしれないからだ。巨大なデータ企業がそれについてそういう形で明確に考えているかどうかは、はっきりとはわからないが、彼らの行動を見ると、ただのお金よりもデータの蓄積を重視していることがうかがわれる。

普通の人間は、この過程に逆らおうとしたら、ひどく難儀するだろう。現時点では、人々は自分の最も貴重な資産、すなわち個人データを、無料の電子メールサービスや面白おかしい猫の動画と引き換えに、喜んで手放している。色鮮やかなガラス珠や安価な装身具と引き換えに、ヨーロッパの帝国主義者に図らずも国をまるごと売ってしまったアフリカの部族やアメリカの先住民と少し似ている。後で普通の人々がデータの流れを遮断しようと決めたとしても、そうするのはしだいに困難になるだろう。自分のありとあらゆる決定はもとより、医療や身体的生存のためにさえ、ネットワークに頼るようになれば、なおさらだ。

 人間と機械は完全に融合し、人間はネットワークとの接続を絶たれれば、まったく生き延びられないようになるかもしれない。子宮の中にいるうちからネットワークに接続され、その後、接続を絶つことを選べば、保険代理店からは保険加入を拒否され、雇用者からは雇用を拒否され、医療サービスからは医療を拒否されかねない。健康とプライバシーが正面衝突したら、健康の圧勝に終わる可能性が高い。

 あなたの体や脳からバイオメトリックセンサーを通してスマートマシンへ流れるデータが増えるにつれて、企業や政府機関は簡単にあなたを知ったり、操作したり、あなたに代わって決定を下したりするようになる。なおさら重要なのだが、企業や政府機関は、すべての体と脳の難解なメカニズムを解読し、それによって生命を創り出す力を獲得しうる。

そのような神のような力を一握りのエリートが独占するのを防ぎたければ、そして、人間が生物学的なカーストに分かれるのを防ぎたければ、肝心の疑問は、誰がデータを制するか、だ。私のDNAや脳や人生についてのデータは私のものなのか、政府のものなのか、どこかの企業のものなのか、人類という共同体のものなのか? 

 政府にそのデータを国有化するよう義務づければ、おそらく大企業の力を制限できるが、ぞっとするようなデジタル独裁国家を誕生させかねない。政治家はミュージシャンのようなもので、彼らが演奏する楽器は人間の情動系と生化学系だ。彼らが演説を行なう。すると国中に恐れの波が拡がる。彼らがツイートする。すると憎しみの爆発が起こる。こうしたミュージシャンにこれ以上高性能の楽器を与えて演奏させるべきではないと思う。

 いったん政治家が、直接私たちの情動のスイッチを入れて、不安や憎しみ、喜び、退屈を意のままに生み出せるようになれば、政治はただの情動操作の茶番と化すだろう。私たちは大企業の力を恐れるべきではあるが、歴史を振り返ると、やたらに強力な政府の管理下に置かれるほうが必ずしもましではないことが見て取れる。

2018年3月現在、私は自分のデータを提供するのならウラジーミル・プーチンよりもマーク・ザッカーバーグのほうがましな気がする(もっとも、ケンブリッジ・アナリティカ・スキャンダル〔訳註 データ分析会社のケンブリッジ・アナリティカがフェイスブックユーザーのデータを不正に収集したとされる事件〕からは、あまり選択の余地がないことが明らかになった。ザッカーバーグに託したデータは何であれ、プーチンの手に落ちる可能性が十分あるからだ)。


■データの個人所有をどう守り、規制べきか

 自分自身のデータの個人所有は、前述のどちらの選択肢よりも魅力的に思えるかもしれないが、それが実際には何を意味するかははっきりしない。私たちは土地の所有の規制については、何千年にも及ぶ経験がある。農地の周りに柵を巡らし、門に番人を置き、出入りを制限する方法は心得ている。

 過去2世紀の間に、私たちは産業の所有を非常に巧妙に規制するようになった。たとえば、今日私は株式を買うことで、ゼネラルモーターズやトヨタの一部を所有できる。だが私たちには、データの所有を規制する経験はあまりない。それは本質的に、はるかに難しい任務だ。データは土地や機械とは違い、どこにでもあると同時にどこにもなく、光速で移動でき、好きなだけコピーを作れるからだ。

 だから私たちは弁護士や政治家、哲学者、さらには詩人にさえも、この難問、すなわちデータの所有をどう規制するかという問題に注意を向けるよう求めたほうがいい。これこそおそらく、私たちの時代の最も重要な政治的疑問だろう。早々にこの疑問に答えられなければ、私たちの社会政治制度は崩壊しかねない。人々はすでに、来るべき大変動に感づいている。だから世界中の人々が自由主義の物語への信頼を失いかけているのかもしれない。ほんの10年前にはたまらないほど魅力的に見えた、自由主義の物語への信頼を。

 それでは、私たちはここからどうやって前へ進み、バイオテクノロジー革命とIT革命がもたらす途方もない課題の数々に対処するべきなのか?  そもそも世界を混乱させた当の科学者や起業家が、ひょっとしたら何らかのテクノロジー上の解決策を立案できるだろうか?  

たとえば、ネットワーク化されたアルゴリズムは、あらゆるデータを集団的に所有し、将来における生命の発展を監督するグローバルな人間コミュニティの足場を形成できるだろうか?  グローバルな不平等が増し、社会的な緊張が世界中で強まったら、ことによるとマーク・ザッカーバーグは、自分の20億の友達に呼びかけ、力を合わせて何かいっしょにやろうとするだろうか? 


ユヴァル・ノア・ハラリ :歴史学者














2019.10.31 THU 07:00:07
ビットコインの開発者「サトシ・ナカモト」の正体は、裏社会の帝王なのか?(前篇)


テクノロジー界隈でいまだに解き明かされていない最大の謎のひとつ──ビットコインを開発した「サトシ・ナカモト」とは、一体何者なのか? その答えを求め、深い迷宮の入口に足を踏み入れた者の多くは、努力の甲斐もむなしく無駄骨を折ることとなった。そして次なる挑戦者、ジャーナリストのエヴァン・ラトリフが選んだのは、国際的な犯罪組織の黒幕である“ポール・ルルーの迷宮”だった。ビットコイン誕生の謎を追うサスペンスドキュメンタリーの前篇をお届けする。

TEXT BY EVAN RATLIFF
TRANSLATION BY NOBUYOSHI EDO / LIBER
ILLUSTRATIONS BY AMARENDRA ADHIKARI
エヴァン・ラトリフ


ジャーナリスト。『WIRED』をはじめ、さまざまな雑誌で記事を執筆。オンラインメディアプラットフォーム「Atavist」共同設立者・編集主幹。著書に『Mastermind: Drugs, Empire, Murder, Betrayal』(2019年)がある。

メッセージが届き始めたのは、5月半ばの日曜日の午後のことだった。「ちょっとお耳に入れたいことがありまして」という内容に続き、次の人物は「こんなうわさが立っているんです」と教えてくれた。「あなたがどうお考えになるか、ぜひ知りたいです」。3人目のメッセージにはそうあった。

こうした連絡をくれる人のほとんどは面識がなく、文面はどれも丁重だが、どこか拒絶を許さないところがあった。誰もが、過去10年のデジタルテクノロジー分野で最も大きな関心を集めてきた謎のひとつについて、インターネット上で新たに拡まり始めた説に対するわたしの意見を知りたがっていた。そう、「サトシ・ナカモト」の正体は誰か、という謎だ。

わたしのTwitterアカウントに、DMで次のような単刀直入な質問が寄せられた。「あなたは、ポール・ルルーがビットコインの生みの親のサトシだと思いますか?」

ある意味で、彼らは正しい人にメッセージを送ったと言えるのかもしれない。というのも、わたしは5年にわたって、グローバルな麻薬や武器取引の帝国を築き、21世紀で最も成功した(それゆえ最も厳しく追われる身になった)犯罪者のひとりに数えられる南アフリカ人のプログラマー、ポール・カルダー・ルルーの足跡を追い続けていたからだ。

その間、彼の人生──暗号化プログラマーを振り出しに、オンライン処方薬ビジネスを数億ドル規模の事業に育て上げ、密輸や武器取引、狼藉などにも手を拡げるも、2012年に米麻薬取締局(DEA)に逮捕され、その捜査に協力する──を、とりつかれたように調べ上げていた。


裏社会の帝王の姿

ルルーはこうした活動の過程で、米国ではオピオイドの蔓延を助長し、ソマリアには自身の作戦基地を設けて武装組織に守らせた。また、アフリカの6カ国ほどで、金の採掘や森林伐採などの事業を手がけ、香港で巨額のマネーロンダリングをした。セーシェルでは一時、クーデターを画策し、拠点としていたフィリピンでは、法執行官を買収している。北朝鮮からは覚醒剤のメタンフェタミンを密輸した。このほか、イラン向けのミサイル誘導システムや、麻薬配送用のドローンなどを製造する技術者チームを自ら統括してもいた。

わたしはマニラに飛んでその裏社会を取材して回り、ルルーの用心棒だった元雇兵を含め、彼の下で働いた人たちを見つけ出した。そして、数百回のインタヴュー、数万ページに及ぶ記録を『The Mastermind』という400ページの本にまとめ、そのなかでルルーの栄枯盛衰を描き出した。

ただ、サトシについての質問には、正直なところ独特の恐怖心を覚えた。なぜなら、わたし自身、過去にサトシの迷宮に入り込み、結局何も見つけられずに戻ってきたという経験があったからだ。16年、わたしはルルーのいとこのマシュー・スミスにこう書き送っている。

「じつはひそかに、ルルーがビットコインを発明したという説を立てているんです」。だが、スミスも、組織のメンバーや警官も、わたしが取材した100人以上のほかの関係者も、この説を裏づけるようなものは、見たことも聞いたこともなかった。だから、本を書き終えた18年末には、もうこの説はほぼ放棄していた。「(ルルーとサトシを)結びつけるものが何かないか突き止めようとして、膨大な時間を無駄にしてしまった」。

最終稿にわたしはそう書いている。「筆者が調べた限りでは、それは、なかった」

こういう結果にも、少し慰められるところはあった。それまでに何人もの人が「サトシ狩り」に出かけては屈辱を味わわされていて、わたしは少なくともそういう目に遭うのは免れていたからだ。ビットコインという、通貨のあり方から契約の形式まで、さまざまなものの未来をかたちづくることになりそうなテクノロジ

ー──「ハイプ・サイクル」の谷を越えた今日でもそう言えるだろう──をあとに残して、サトシが仮想通貨の世界から姿をくらました11年以来、ジャーナリストはその生みの親探しにいざなわれてきた。サトシが誰であれ、その人(たち)は、09年のビットコイン導入時に「採掘(マイニング)」したと推定されているおよそ100万ビットコイン(現在の価値で約1兆800億円)を保有している。そして、その正体を暴こうという試みはことごとく失敗に終わっていた。

だがいまは、ルルーに関するメッセージがひっきりなしに届き続けている。実はそのころ、サトシの正体を巡って非常に興味をそそる手がかりが新たに浮上し、ネット掲示板の「4chan」やITニュースサイトの「ハッカーニュース」で次々にスレッドが立っていた。わたしへのメッセージも、それに触発されたものだったのだ。その手がかりというのは、数十億ドル相当のビットコインを巡ってフロリダ州の連邦地裁に起こされた訴訟に関連し、裁判所に提出された文書に記載されたある脚注だった。


もう一度サトシの迷宮に下りてみる

話はここから奇妙になっていく。その訴訟の被告は、オーストラリア人コンピューター科学者のクレイグ・ライトという人物だった。「サトシ伝説」をずっと追ってきた人なら誰もが知っている通り、ライトは、15年末に『WIRED』US版とギズモードによって、サトシ・ナカモト本人の可能性があると報じられた人物だ。ただ両メディアとも、依拠していた文書が偽造されたり、改変されたりしたものだったらしいとわかって、のちにこの説から距離をとっている。

ライト自身は、当初は自分がサトシかどうかを明かすのを拒んでいたが、その後、自分がサトシだと証明しようとするようになる。だが、ビットコイン・コミュニティの大半はその説明に納得せず、ライトがPR目的の告白イヴェントで提出した証拠が容易に信ぴょう性を否定できるものだったことから、彼のことをペテン師と見なすようになる。ただ、彼のほうは現在も自分がサトシだと言い張っており、運営する会社「nチェーン」

──オンラインカジノの大物経営者だったカルヴィン・エアーの出資を受けている──は、ビットコインに代わる「ビットコイン・サトシ・ヴィジョン」という仮想通貨を発行している。

ポール・ルルーをこの泥沼に引きずり込むことになる訴訟は、18年、ライトの友人にしてビジネスパートナーだったコンピューターセキュリティの専門家で、13年に死去したデーヴ・クライマンの弟 、アイラ・クライマンによって起こされた。強力な法律事務所ボイス・シラー・フレックスナーが代理人を務めるアイラ側は、デーヴとライトは共同で数十万ビットコインを採掘したと主張しており、デーヴの死後、ライトが彼のもち分を自身とその会社に移し、現在の価値で数十億ドル相当の資産をデーヴから奪ったとしている。

ここで問題の脚注が登場する。19年4月、ライトの弁護団は、デポジッション(証言録取)と呼ばれる手続きの質問に対する回答の一部を非公開にするよう、担当判事に申し立てた。それらの回答は、ライトとデーヴが法執行当局による逮捕を手助けしたとされる人々にかかわるものであるため、公開されれば「彼(ライト)やほかの人たちを危険にさらし」、また「国家安全保障上の懸念を招く」恐れがあるというのがその理由だった。

申し立てのなかでは、ふたりが逮捕に協力したとされる人々の名前や、ライトの回答に関する脚注については編集が加えられていた。だが、弁護団はその際にミスを犯したようで、脚注のひとつを黒塗りにしていなかった。そこには、ポール・カルダー・ルルーについての記事とウィキペディアのページへのリンクが記されていた。

この脚注に関するニュースがネット掲示板からビットコインニュース界へ拡がり、さらにわたしの受信ボックスにまで届くようになったころには、このかすかなつながり──実際に手がかりとするにはあまりにも薄いつながり──は、いつの間にか、ルルーこそサトシに違いないという臆測へと驚くような変貌を遂げていた。クレイグ・ライトはルルーのことを知っていたに違いない。

ルルーがビットコイン誕生の裏にいる人物だと知っていたはずだ。もしかすると、彼はルルーと協力していたのかもしれない。しかし、ルルーが米国で拘束下に置かれ、外部と連絡がとれなくなったことに15年までには気づき、自分がサトシだという工作を始めると同時に、アイルと共に、ルルー=サトシが秘匿するビットコインの暗号解読に乗り出した──。率直に言ってついて行くのも難しかったが、だいたいそんな話になっているらしかった。

全体としてうんざりさせられる話に思えたが、わたしは結局、もう一度サトシの迷宮に下りてみることにした。それは、ばつの悪い思いをすることへの恐れが勝ったからだった。もし、本当にルルーがサトシだったとしたら? ルルーのことを何年もかけてあれだけ調べたのに、そのことをほかの人に証明されてしまったら? そんな不安に駆られたのだ。

ルルーがサトシだとする根拠の薄い説を唱える人に加わってみるのと、答えが目の前にあるのに、インターネット最大の謎を解くのに失敗することになるのとでは、どちらがぶざまかと想像した。わたしは、本を書くためにつくったルルーのアーカイヴを開き、資料に当たり始めたのだった。
 

数日のうちに、ルルーとサトシの、以前は気づかなかったり、軽視したりしていた意外な関係性が浮かび上がってきた。さらに数日後には、この説に有利な証拠と不利な証拠をまとめたスプレッドシートを作成していた。わたしは数週間かけて、ルルーとサトシがそれぞれ確実に書いたと言える文書を、一点一点、綿密に読み込んだ。

そして、スプレッドシートの「有利」の列の項目がどんどん増えていくことに当惑していた。何人かの専門家にも相談し、自分が見つけた根拠について検討してもらったが、それを論駁(ろんばく)できた人はひとりもいなかった。作業を始めてから1カ月後、わたしは、暗号通貨に関する深い知識をもち、サトシ伝説の展開をくまなく追ってきた知り合いに向かって、ビットコインの生みの親は誰かという謎に対して、ルルーは有力な答えだと説得できるまでになっていた。

そういうわけで、ポール・ルルーがサトシ・ナカモトだとする説に、わたしも公に賭けようという気になっていた。これまでに見つけたすべてのことを根拠に、この説を支持しようとした。だが、ここまで来たところで、わたしは、これまでに見つけられていないことが気になり出した。


ルルーとサトシを結びつけるもの

ルルーは確かに、ビットコインを生み出すのに必要な技術的スキルをもっていた。この点は、わたしが以前の段階で結論づけていたことだ。彼は独学のプログラマーで、さまざまなプログラミング言語を使いこなしていたが、なかでも、ビットコインの開発言語である「C++」を得意としていた。

また、暗号化とネットワーキングの両方に精通しており、その広範な知性によって驚くほど多種多様な分野(多くは非合法なものだったが)の専門スキルを身につけていた。「彼は非常に才能に恵まれたソフトウェア開発者で、わたしがこの業界での30年の経験を通じて会ったなかでも、ひときわ優秀な人物でした」。暗号化プログラマーとして彼と一緒に働いた経験があるショーン・ホリングワースは、ルルーのことをそう評している。

サトシと最も関係してくるのは、ルルーにも自分のソフトウェアを開発し、普及させた経験があるところだろう。しかも、このソフトウェアは多くの点でビットコインと似ていた。彼は1990年代末、日中はプログラミングの仕事をしながら、夜間や週末の時間を使って「Encryption for the Masses(大衆のための暗号化、略称E4M)」という複雑なディスク暗号化ソフトウェアを開発していた。

99年に暗号化技術のメーリングリストでE4Mを発表し、「e4m.net」というウェブサイトを開設して、そこでオープンソースコードとしてリリースする。公開後は精力的に、技術的な質問に答えたり提案を受け付けたりしている。その後、後継ソフトウェアのTrueCrypt(トゥルークリプト)」が同じような手順で公開され、さらに有名になった(TrueCryptはこれまで、ルルーと直接関連づけられてこなかったが、わたしの情報源の数人は彼がかかわった可能性が高いとの見方を示している)。

ビットコインはE4MやTrueCryptとよく似た仕方で登場している。サトシも数年間かけてそれを開発したとみられ、08年10月にどこからともなく現れて、いまや有名な例のホワイトペーパーを「Cryptography」というメーリングリストで公開し、ビットコインを発表する。続いて、「bitcoin.org」というウェブサイトでそれをリリースし、以後数年にわたって、やはり熱心に技術的な質問に答えたり提案を受け付けたりしている。

ルルーとサトシがそれぞれ書いたものを比べると、ふたりのスタイルは多くの点で似ているように思えた。サトシは一般に、単語の使い方やcolourなどのつづり方から英連邦の国出身の英語のネイティヴスピーカーだったと考えられているが、ときどき(理由は不明だが)米国ふうの言葉の使い方もしている。一方、ルルーはジンバブエと南アフリカで育ち、オーストラリアにも何年か住んだ経験があるが、20代初めの人格形成期を米国で過ごしてもいる。ルルーの親族には、彼は米国ふうの発音で話すこともあったと証言している人もいるのだ。

ふたりの書いたものをさらに詳しく検討してみると、数年前には気づかなかった、もっと微妙なつながりらしきものも見えてきた。サトシには、ビットコインをリリースする前に、それに先行する仮想通貨の開発者ふたりに送ったメールがあることが知られている。彼はそれらのなかで、ビットコインの開発プロジェクトについて説明したうえで、開発者が自分であることを示す適切な方法を尋ねている。実は、その10年前に、ルルーも似たようなやりとりをしていた。

彼も、E4Mのために使おうと計画した暗号化プロトコルの著者にメールを送っていたのだ。両者のメールを読み合わせると、言葉遣いこそ違っているものの、言っていることは同じだと感じた。サトシがメールを送った仮想通貨開発者のひとりであるアダム・バックに、わたしが入手したルルーのメールを読んでもらったところ、彼も同意見だった。「ぶっきらぼうと言ってもいいほど淡々とした書きぶりですね」とバック。「すぐ本題に入っています。『あなたの成果を正しく引用したい』と。確かに(ふたりのメールは)よく似ていますよ」

サトシはフォーラムへのある投稿のなかで、どのように「強力な暗号化は大衆に使われるようになったか」に言及している。ルルーのE4Mというソフト名──大衆のための暗号化──と薄気味悪いほど符合する表現だ。また、ビットコインソフトウェアの最初のヴァージョンには、一種のオンラインポーカーソフト向け基本インターフェイスを示す不可解なコードが埋め込まれている。

一方、わたしが調べたところでは、ルルーは何年かオンライン賭博ビジネスに手を染め、自らカジノのソフトウェアも制作している(彼のいとこのマシューの話では、ルルーはその何年も前に、何らかの方法で賭博業界の大物として知られたカルヴィン・エアとつながりをもつようになり、エアのためのパスポートを入手しようとしていると語ったこともあったという)。ビットコインソフトウェアに紛れ込んだこの謎のコードも、ふたりの隠されたつながりを示唆するものなのだろうか。

夜遅くまで、わたしは両者のソフトウェアライセンスを、一行ごとに突き合わせて比較するようになっていた。頭のなかでは、大まかなパターン照合を試しにやってみているだけだと言い聞かせていたが、完璧なストーリーを欲しがる気持ちに突き動かされていたのだった。ストーリーはどんどん進んでいった。サトシがビットコインを開発しようとした思想的もしくは実践的動機──政府による管理に対する嫌悪や銀行システムに対する不信、新たなデジタル決済手段への願望──を検討していくと、ルルーはビットコインの考案者として、恐ろしいほど完璧だった。

暗号化の研究者で、プライヴァシー指向の暗号通貨プロトコルの開発に自らかかわった経験もあるジョンズ・ホプキンズ大学のマシュー・グリーンはこう語っている。「サトシについてひとつ言えるのは、彼が異様に反政府的で、経済に関しても異様な考え方をしていたらしいということだ」

そしてルルーも、オンラインフォーラムへの投稿やE4Mのリリースノートのなかで、政府による管理へのいら立ちをあらわにしている(もっとも、国際的な犯罪組織を築くことになる人物の振る舞いとしては、特別驚くべきものではないかもしれないが)。実際、彼には、自分が経験してきたことから、デジタル通貨を考案する動機がたくさんあった。1990年代半ば、オーストラリアに住んでいた時期には、ある掲示板にこう不満を書き込んでいる。「(ここの)銀行は、しかじかの額の現金取引も含めて、客がすることを逐一(当局に)報告しやがる」。

ルルーはその後、グローバル金融界の内部メカニズムを熟知するようになっている。わたしが入手したルルーの履歴書(裁判資料に含まれていたものだが、それまで公表されていなかった)によれば、彼は長年、契約プログラマーとして働き、オランダのABNアムロ、オーストラリアのコモンウェルス銀行といった金融機関向けの国際銀行送金システムのプロトコル実行などの業務に携わっていた。

やがてルルーは、このシステムのデジタル技術としての制約に直面することになる。2000年代半ば、運営していた処方薬のオンライン販売網が巨大になると、客が支払った莫大な代金の回収や移動にいつも苦労することになったのだ。そこで彼は、この販売網がオンラインクレジットカード決済業者から遮断されないように複雑なスキームを構築したほか、銀行に見つからないようにダミーの会社やトラストの網を張り巡らせた。

いとこによれば、銀行の送金システム全体を迂回(うかい)すべく、マニラで自分の銀行を設立すると話していたこともあったという(実際は数億ドルの資金を金に換え、アフリカや東南アジア各地の隠れ家に保管した)。

ルルー=サトシ説に有利な証拠が積み上がっていた。それでも、別の種類の確証、ルルーが実際に、デジタル通貨に対する積極的な関心を示していたことを裏づける証拠も必要だった。わたしは、フィリピンでルルーのプロジェクトが行なわれていた施設を管理していた情報源に連絡を取った。そのプロジェクトの多くは、ドローンや、ミサイル誘導用のソフトウェアといった気宇壮大なもので、プログラマー(ずばりC++のプログラマー)チームが開発に携わっていた。

ルルーは東欧から人材をリクルートしていた。ルルーがビットコインについて話していたことはありますか、とその情報源に質問した。返信には「彼は(マニラの)事務所にルーマニア人プログラマーのグループを擁していたんだ」とあり、こう続いていた。「彼らはオンライン通貨について話し合っていたよ。ビットコインがリリースされるより前の、07〜08年のことだ」

ルルーの高位の部下だった別の人物にも聞いてみたところ、同じころ、ルルーはこんなふうに語ったことがあったという。「カネ、本物のカネをつくりたけりゃ、(偽造)紙幣を刷ってる北朝鮮のようにやるしかないな。それか、自分で通貨をつくっちまうかだ」
「サトシ・ナカモト」を巡る議論




2019.11.07 THU 07:00:34
ビットコインの開発者「サトシ・ナカモト」の正体は、裏社会の帝王なのか?(後篇)

「サトシ・ナカモト」の正体を暴こうと、国際的な犯罪組織の黒幕である“ポール・ルルーの迷宮”に足を踏み入れたジャーナリスト、エヴァン・ラトリフ。「サトシ=ルルー説」を有利にする判断材料が少しづつ積み上がる一方で、別の視点で状況を整理してみると、新たな可能性が浮上し始める。ブロックストリームの共同創業者であるグレゴリー・マクスウェルの力も借りて、異なる角度からラトリフの考察がはじまった。ビットコイン誕生の謎を追うサスペンスドキュメンタリーの後篇。

TEXT BY EVAN RATLIFF
TRANSLATION BY NOBUYOSHI EDO/LIBER
ILLUSTRATIONS BY AMARENDRA ADHIKARI
エヴァン・ラトリフ


ジャーナリスト。『WIRED』をはじめ、さまざまな雑誌で記事を執筆。オンラインメディアプラットフォーム「Atavist」共同設立者・編集主幹。著書に『Mastermind: Drugs, Empire, Murder, Betrayal』(2019年)がある。

ポール・ルルーとサトシ・ナカモトに共通するスキルや動機、利害関係のほかに、もうひとつ、わたしをルルー=サトシ説のほうへ傾かせていたものがあった。それは、匿名性だ。サトシの正体が謎に包まれてきたのは、彼が匿名性を確保するために異常な努力を払ったからだ。その手法を簡単には見つけられないということは、わたし自身の体験からもよくわかっていた。10年にわたって匿名性を暴こうとしても、これらの攻撃に耐えてきたからである。ルルーが生涯を通じて磨いていたのは、まさにこの、身元がばれないようにする能力だったのだ。

ルルーは、自分のビジネスが次第に犯罪の性格を帯びていくなか、何年かをかけて身元がわからないようにしていった。部下には、暗号化ツールや使い捨てメールアドレス、追跡不可能なプロキシの使用について、細かい指示を出していた。政府の監視が及ばない、暗号化されたメールサーヴァーを自分で構築してもいた。複数の名義で活動し(ルルーから信頼されていた部下ですら、彼の本名を知らない人がいた)、偽造パスポートも何冊か所持していた。


サトシとサロチ

そうした名義のひとつに、サトシとの薄くはあるが興味深いつながりを示すものとして注目されてきたものがある。それは、コンゴ民主共和国の外交パスポートに記されていた。ルルーは外交特権を隠れみのにしようと、長年、外交官ら用のパスポートの入手を企てていて、ようやく手に入れたのがコンゴ民主共和国のものだった。そのパスポートの氏名はこう記されている。「ポール・サロチ・カルダー・ルルー」──。サロチとサトシ。16年にわたしがこのパスポートのコピーを公表したとき、ネット上で指摘された通り、ここでふたつの偽名が交差していた。

ひょっとしてルルーは、ビットコインで使った偽名をほんの少し変えて使い回したのだろうか? 当時、わたしはこの偶然の一致をあまり重視しなかった。ひとつには、腐敗した現地の当局者に渡す現金10万ドルを胸に巻いて、コンゴ民主共和国に出向いた部下ふたりのうち、ひとりを実際にインタヴューしていたからだ。彼によると、ルルーは「サロチ」という名前を自分で選んですらいなかった。それはおそらく、その当局者がパスポートを本物らしくみせるために選んだ、コンゴ人ふうの名前だったのだ。

だが、このパスポートについてあらためて考えてみると、自分は当時、順序を逆に見ていたのかもしれないと思えてきた。つまり、「サトシ」を少し変えて「サロチ」にしたという話ではなく、「サロチ」という名前から「サトシ」が生まれたのだったとしたら? もしかするとルルーは、新しいプロジェクトを匿名で始めるために名前を探していていたときに、大切にしている外交パスポートの名前をちょっぴり変更して、いかにも日本人ふうの名前にしようと思いついたのかもしれない。わたしはそのパスポートの発行日をもう一度確認してみた。08年8月とあった。サトシがバックに初めて連絡をとる2週間前だ。

そう気づいた瞬間、ルルー=サトシという大団円に向かうストーリーが頭のなかで止まらなくなった。ルルーの経歴は、サトシの登場や彼の手法と適合するばかりか、彼が消えた謎もうまく説明できるように思えてきた。サトシは、内部告発サイト「WikiLeaks」 が──彼の公然の反対にもかかわらず──ビットコインでの寄付を受け付け始めた直後の10年12月に、ビットコインのフォーラムからこつぜんと姿を消す。

「WikiLeaksがスズメバチの巣を蹴り、その大群がわれわれのほうに向かってきている」。サトシはその直前にそんな有名な投稿をしている。生まれたばかりの通貨がネガティヴなかたちで注目されることを懸念するのは、当然と言えば当然だ。だが、サトシはなぜフォーラムから完全に姿を消したのだろうか?

ルルーには、WikiLeaksがもたらすような注目を恐れる理由が誰よりも多くあったのではないだろうか。そのころまでに、彼はマニラにある米国大使館の内通者から、米国政府が自分の行方を追っているという情報をつかんでいた。また、10年末は彼にとって忙しい時期だった。同年12月、彼は自身の右腕を含む部下3人の殺害を手配し、その遺体を海に沈める手助けもしていたからだ。

サトシは11年半ばを最後に消息がわからなくなる(14年、フォーラムに当初はサトシのものとされていた投稿があったが、いまでは流出したサトシの昔のメールアドレスを使ったなりすましだったとみられている)。ビットコインの生みの親はそのころまでに、責任の大半をほかの人、なかでもマサチューセッツ在住のソフトウェア開発者、ギャヴィン・アンダーセンに引き継いでいた。

「わたしは別のことに着手しています」とサトシはほかのビットコイン開発者に書き送っている。「(ビットコインは)ギャヴィンやみんなに任せて安泰です」。11年4月、アンダーセンがサトシに、中央情報局(CIA)でビットコインについて話そうと計画していると伝えると、サトシは以後、一切返信しなくなる。当時、CIAと聞いたとたんに連絡を絶ちそうな人物は、誰よりもまずポール・ルルーだったはずだ。

このころから、サトシを巡る出来事の時系列が、まるで無限に採掘される仮想通貨のように頭のなかに浮かんでは離れなくなっていた。友人の誕生日パーティーに参加したとき、知らない人から何をたくらんでいるんですかと無邪気に訊かれて、この謎の講釈を垂れている始末だった。「いいですか、ルルーが12年に逮捕されたことで、サトシをとり巻く最も興味深い疑問のひとつが片づけられるのです」。相手がそろそろとバーのほうへ逃げて行くのを尻目に、わたしは続けた。「初めに採掘された100万ビットコインを、なぜ誰も動かしたり、使ったりしていないんでしょうか」

考えてみると、その通りだ。これまで、サトシはお金を必要としていない、もしくは欲しがっていない個人あるいは集団に違いないと想定されてきた。そうでなければ、秘蔵の通貨へのプライヴェートキーをすでに墓場まで持って行ったはずだと考えられてきた。これに対して、ルルーは第3の可能性があることを示した。12年9月の時点で、サトシが保有するビットコインは1200万ドル(約13億円)前後の価値があった。

そのころのルルーにとってはとるに足らない額で、いずれにせよ当時はこれほどの量のビットコインをハードカレンシー(国際決済通貨)に交換するのは不可能に近かった。その後、ルルーは突然動きがとれなくなった揚げ句、おとり捜査で逮捕され、かねて彼にとっては無用だった財産へのプライヴェートキーも利用できなくなった──。


湧き出る不利な証拠

言うまでもなく、わたしはジャーナリストであり、スプレッドシートの一方の列にずらりと並んだものが壮観だからといって、それに気おされて終わりというわけにはいかない。というわけで、シートのもう一方の列、つまり、ルルー=サトシ説に「不利」な証拠のほうもしっかり見直してみることにした。

例えば、ビットコインのホワイトペーパーがアカデミックな文体で書かれていることは、ルルーの独学の、どう見てもアカデミックでない、形式張らないスタイルとはそぐわない。ただ、ホワイトペーパーはビジネスの世界でもよく発行されるものだし、またE4Mをリリースしたころまでさかのぼると、ルルーは明らかにアカデミックな暗号学に傾倒していた。

もっと細かい部分でも疑問点があった。これまで数多く行なわれてきたサトシ探しのひとつで、ある人は、彼の書いたものではほぼ例外なく、ピリオドのあとにスペースがふたつ置かれていることに気づいていた。これは比較的珍しい癖だと言える。だが、ルルーが書いたものでは、わたしの読んだ限り、スペースはひとつだった。また、「ソースコード」という単語を、サトシが「sourcecode」と続けて書いているのに対して、ルルーは「source code」と2語に分けて書いているという違いもあった。

とはいえ、わたしが調べてみたところ、サトシの書いたものには、ピリオドのあとのスペースがひとつだけのものも、数は少ないがあることがわかった。もしかすると、サトシはスペースを一定の方式でオートコレクトするエディターをときどき使っていたのかもしれない。あるいは、ルルーもそうしていたのかもしれない。

ふたりの間には、基本的な考え方の面でも少し違いがあるようだった。例えば、サトシはビットコインについて、スパムに対する解決策になりえるという考えを平然と示したことがある。これに対してルルーは、処方薬のオンライン販売網を運営していたころ、その「営業」のために世界でも類を見ないほど膨大な数のスパムを自ら発信していた。もっとも、ルルーは多面的な人物であり、親族のひとりからは、彼は長らく、紀行作家(!)になることをひそかに夢見ていたと聞いたこともある。少なくとも彼が、自分自身がつくり出した問題に対して解決策を出しても全然おかしくないような人物なのは確かだ。

だが、こうした食い違いはどれも、ルルーとサトシが重なり合うように見える部分、つまり、ふたりが同一人物であれば、非常に多くの面でつじつまが合いそうなところに比べると、分が悪いと言わざるをえなかった。両者が交錯する点には、ルルーを巡って新たに明らかになった事実も含めてよいだろう。

それは、彼が悪名高いハッカー集団「UGNazi」に属するミア・イスラムという人物とつながっていたことだ。これは、ルルーを巡る話で最近では最も奇妙と言ってよいかもしれない展開だった。イスラムは、うその通報によって警察の特殊部隊などを派遣させるスワッティング の常習犯、ネット上の騒ぎの扇動者として知られ、クレジットカード詐欺で投獄された。

ルルーとは、ニューヨークの同じ施設に、数カ月にわたって入れられていたときに知り合った。イスラムが別の施設に移されたあと、フィリピンでの事業再開に向けてルルーが彼と電話で(パラリーガルに協力させたのだった)打ち合わせをしていたことが発覚している。イスラムは18年5月に出所し、当局によると、その後行方をくらませた。

同年の秋、セキュリティが保護されたチャットを通じて、わたしの元にイスラムから連絡があった。彼は、実はマニラに移住していて、ルルーと話し合った「暗号(crypto) プロジェクト」に取り組んでいると明かした。彼はいまや、ルルーのことを「おやじ」と呼ぶようになっていた。

数週間にわたる会話のなかで、イスラムは、ルルーの出所に備えた下準備をしているとも説明している。わたしは、ルルーのフィリピンのとり巻きグループ内での活動には注意したほうがいい、と忠告した。「そちらの悪者たちは、何の意味もなくあなたを殺しますよ」

「そうだな、人は意味もなく殺すもんだ」と彼は答えた。「お互い様ってわけだ」

その2日後、イスラムは、UGNaziのメンバーだったもうひとりの男と共に、その男の米国人ガールフレンドの遺体をマニラ湾に遺棄しようとしていたところを発見されている(イスラムは現在、殺人罪の公判開始を待っていて、この奇妙な事件についての説明は二転三転している)。

彼との会話の記録をあらためて読み直してみると、イスラムのあるコメントに目が留まった。それは、「ポールがあれだけのことをやった本当の理由」をあなたは理解していない、というものだった。彼はこう書いていた。「それは名声のためじゃなかったし、最終的な目標はカネだけじゃなかったんだ」

「では、何が理由だというんですか」とわたしが訊ねると、「自分にそれができると証明してみせること。まあ、退屈に聞こえるだろうけどな」と彼は答え、こう続けていた。「あんたがまだ解き明かしていないことが山ほどあるぜ」

原文: WIRED(US)
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仮想通貨「Libra」を生んだフェイスブックの大志と野望

フェイスブックが発表した仮想通貨「Libra(リブラ)」。なぜフェイスブックは独自の“通貨”をつくるのか。あえて自社が完全にコントロールできない運営団体を設立した理由は何か。パートナーや競合たちの思惑は。そして、フェイスブックは各所から向けられる疑いの目を晴らせるのか──。フェイスブックの大志と野望を、さまざまな視点と関係者への取材から読み解く。
2019.07.06 SAT

BitTorrentの開発者、「ビットコインより優れた仮想通貨」の実用化に動く

P2Pのファイル共有プロトコルとして一世を風靡した「BitTorrent(ビットトレント)」の開発者、ブラム・コーエンが再び表舞台に戻ってきた。新しいプロジェクトは、「ビットコインより優れている」という仮想通貨(暗号通貨)の開発だ。サトシ・ナカモトが考案した仕組みの弱点を研究して生み出したという「Chia(チア)」は、金融機関や当局にも受け入れられる存在になれるのか。
2018.10.25 THU

暗号通貨ブームの裏側で顕在化してきた、その基盤技術の「構造的な問題」

ビットコインの価格は1月に入って暴落したとはいえ、まだ高い水準にある。そんななか、暗号通貨にまつわるデータ処理の遅さやそれに伴う売買手数料の高止まりなどの問題が改めて浮き彫りになっている。こうした基盤技術の構造的な問題は、いかに解決されていくものなのか。

2018.01.22 MON



ビットコイン誕生から10年、シリコンヴァレーがたどった「バブルへの道筋」を振り返る

仮想通貨のビットコインが、2019年1月に誕生から10年を迎えた。ビットコインが世界を変えるのだという高い理想が掲げられていた一方で、そこには投機へとつながる動きが明確に隠されていた──。10年の軌跡から、いま改めてビットコインの功罪を考える。
2019.04.01 MON

実録:1,000万円相当のビットコインは、こうして永久に失われた

2013年にビットコインの採掘を始めた『WIRED』US版の編集部は、現在のレートにして1,000万円以上に相当するビットコインを手にした。しかし、そのビットコインは永久に失われてしまった。いったいどうして? 信じられないような実体験の経緯を、編集部のメンバーが振り返る。
2018.07.02 MON


ぼくはクリプトアナキスト──21歳の天才ハッカーがブロックチェーンにみる夢

父にもらったコンピューターと、Linuxのフリーソフトウェア。スペインの片田舎で生まれ育った天才少年は、それらを通じて初めて世界に自分の居場所を見つけ、他者との接点をもつことができた。そこは彼にとって、自由で民主的な唯一の場所。ブロックチェーンというテクノロジーの力でヒューマニティを奪還するべく権威と戦う静かなるアナキスト、ルイス・アイヴァン・クエンデの肖像。

(雑誌『WIRED』日本版VOL.25より転載)
2017.03.26 SUN
原文: WIRED(US)
TAGS: #Bitcoin#Blockchain#Satoshi Nakamoto#WIRED US


Block Chain




Photon belt

2012年、人類は進化する!?フォトンベルトの謎
2012年12月、太陽系はフォトンベルトに突入すると言う話があります。フォトンベルトとは光の粒子が集まって巨大な帯のようになった物ですが、それに突入する事によって人類は進化すると言う説があります。マヤの予言では2012年、12月に人類は滅亡すると予言されていますが、関係があるのでしょうか? 更新日: 2012年04月14日

フォトンベルトとは

太陽系は銀河系の中を一定の速度で周回しています。銀河系の中にひときわエネルギーの高いドーナッツ状の光の帯があることが、ハレー彗星の発見で有名なエドムンド・ハレー氏によって発見され、これがフォトンベルトと呼ばれているものです。
人工衛星によりその存在が確認され、写真にも撮られています。
フォトンとは光の粒子という意味です。
出典
http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3697/fotonn.htm


太陽系はプレアデス星団の一番明るい星アルシオーネを中心に約26,000年周期で銀河を回っており、その際11,000年毎に2000年かけてフォトンベルトを通過するとされる
地球が次に完全突入するのは2012年12月23日(JSTでは24日)で、その時には強力なフォトン(光子)によって、人類の遺伝子構造が変化し進化を引き起こすとも言われる

出典
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88


フォトンベルトの影響-磁場の減少-

「フォトン・ベルト」が地球に与えるもっとも深刻な影響は、
地球磁場の減少であるといわれる。地球磁場は現在過去100年の間に
なんと5%も減少し、その減少率は年々高まっているのが現状だ。
特に南米地域での磁場の現象は、深刻な影響をもたらし始めている。
地球磁場は2000年前には40ガウス(ガウス=磁気の単位)もあった
といわれるが、現在では世界の平均で0.4ガウスでしかない。
何故、このように地磁気の現象が続くのか、地球物理学的にも謎と
されている。

磁場は宇宙からの有害な宇宙線の浸入を防いでいることは良く知ら
れている事実だが、磁場が著しく減少している南米では有害な宇宙線
を多量に浴びることが原因とみられるガン患者が急増していて、
きわめて憂慮すべき問題となっている。
出典
http://20121221.seesaa.net/article/123653647.html

フォトンベルトの影響-生命体の進化-

「フォトンベルト」は強力な磁場を持ち、フォトンエネルギーはすべての生命体を原子レベルから変成させ、遺伝子レベルの変容も行い生命を進化させると言われています。また生命体に限らず地球などの天体レベルの存在にも多大な影響を与えます。
出典
http://blog.goo.ne.jp/photon1122/e/b56cea08fb3938184faf0a67016f5fa2


フォトンエネルギーは当然ながら我々人間の肉体や精神に徐々に影響を与えています。日常的に自覚できる症状としては「爪や髪の毛の伸び方が早くなる」原因不明の「関節の痛み」「発熱」「循環器の障害」などがあると言われます。端的な例としては最近誕生する子供たちにはDNAの螺旋構造が2本ではなく、3本ある子供が各地で報告されており、その子供たちは病気に対する抵抗力が圧倒的に強いのだそうです。
出典
http://blog.goo.ne.jp/photon1122/e/b56cea08fb3938184faf0a67016f5fa2


フォトンベルトの影響-氷河期-

地球には氷河期と間氷河期が交互に到来し、現在の状態が間氷河期であるそうです。氷河期と間氷河期は一瞬で移り変わると言われており、その一瞬こそが12月23日なのではないかということです
出典
http://www.zen-healing.com/kokoro/photonbelt/2012-ascension/

フォトンベルトの影響-電子機器は使えなくなる-

地球が「フォトン・ベルト」の影響を強く受けはじめると、われわれ人類はきわめて深刻な事態に陥ることが予測されている。
  たとえば、フォトン・ベルトは電磁気的なパワーに満ちているため、電気を原動力とするものは一切使用できなくなるという。もちろん、自動車やバイクからエレベーターを含むすべての交通機関もストップすることになる。
  より深刻なのは核への影響である。核物質の核分裂連鎖反応、あるいは大きく致命的な放射性の爆発のいずれかの可能性がある。「フォトン・ベルト」の実態が明らかになるにつれ核保有国は、すぐさま核兵器を処分するように迫られるはずだ(このようなフォトン対策のために、地球連合政府が生まれる可能性も予測される)。
出典
http://stl3968164.exblog.jp/13241083/


マヤの予言の正体?

太陽系も1万数千年の周期で、このフォトンベルトの中を通り抜けます。通りぬけるのに2000年かかると言われています。
前回、フォトンベルトを通り抜けた1万3千年程前にはムーやアトランティス大陸が姿を消したと伝えられています。そして今また、太陽系がこのフォトンベルトに入りつつあります。
一説によると2000年に太陽がこの中に入り、2013年までに太陽系がすっぽりと入ってしまうと言われています。今年は6~7ヶ月がフォトンベルトの中を進んでいるという説もあります。
2012年12月20日ごろを境に地球もスッポリフォトンベルトの中を漂うことになるそうです。
そしてなぜかこの日、マヤ暦が終わっているという不思議な話もあります。
出典
http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3697/fotonn.htm


フォトンベルト突入後のスケジュール

第1日目 ヌルゾーン(フォトン・ベルトの外側の部分)に突入、太陽が視界から見えなくなる。
     極寒、電気が使えない、磁力エネルギーしか使えなくなる。
     ライトボディが形成され、三次元の制限された現実の中で生きてはいない。
     最低三日間、暗黒と寒さ、光と穏やかな暖かさを体験。

第2日目 フォトンに包まれることで大気が圧縮され、膨張したように感じる。
     地震が多発。
     太陽が冷却され、地球を冷やす氷河期タイプの気候となる。
     核連鎖反応か放射性爆発の可能性がある。
第3~4日目 ヌルゾーンを脱出することで暗闇脱出。
     フォトン・エネルギー装置が作動可能となる。
     星も見え始める。
第5~6日目 昼間ばかりで夜のない状況となる。
     地球全体の気候は温暖となり、あらゆる生命体が活気付けられる。
     12本のDNAが復元される(現在2本しか働いてない)。
     食事なしに生きられるようになる。
     テレパシーや念力などの霊的な成長を促進。
2012~2013年にかけて
     太陽系全体が銀河の中心よりに瞬間移動し、それまでのプレアデス進化系列から
     シリウス進化系列に移行。
     昼と夜のスケジュールが戻ってくる。
     人間は完全に5次元の存在になるが、平均寿命は1000歳。
http://mayabunmei2012.blog69.fc2.com/blog-entry-19.html

出典
nikusiminorensa.at.webry.info




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現代における最強の人物とは

私たちが暮らしている日本で、最強の人物とはどんな人でしょうか。権力を持っている人? お金を持っている人? 格闘術ができる人? いろいろな要素があると思いますが、私は「○○が強い人」を挙げます。

私たちが暮らしている日本で、「最強の人物」とはどんな人でしょうか。思いつくのは、権力を持っている人、お金を持っている人、格闘術が得意な人などでしょう。

思いつく能力はさまざまだと思いますが、私は「メンタルが強い人」が最強だと考えています。メンタルが強いことで得られるメリットとは以下のようなことが挙げられます。

・メンタルが強ければ、学校や職場でいじめにあっても気にしない。
・上司や取引先に怒られても気にしない。
・営業で断られても気にしない。
・昇進や昇格しなくても気にしない。
・貯金が少なくてもボーナスがもらえなくても気にしない。
・ネットで炎上しても、近所でうわさ話をされても気にしない。
・他人の目が気にならない。
・他人に何を言われても気にしない。
・どう思われるかも気にならない。
・いつもへっちゃら。
・だから心配事がない。
・だからストレスが溜まらない。
・心が平穏。
・毎日が楽しい……。


ちょっと極端かもしれませんが、なんとなく理解していただけるのではないでしょうか。
こうしたことだけではありません。

たとえば、「消費税が上がった。家計を圧迫するから大変だ!」と周りの人が言ったとしても、「自分は別にそんなにたくさんのものは買わないし」と考えるならば、特に大きな問題ではなくなります。

あるいは、「消費税がかからない個人間売買ビジネスを手がけよう」と考えれば、むしろ利益のチャンスになるでしょう。
「ビジネスなんて失敗したらどうするんだ!」と周囲が騒いだとしても、「スポーツと同じで試行錯誤するのは当たり前じゃん」と捉えれば、怖気づくようなことでもない。

メンタルの強さを形成するのが、「捨てる力」

問題が問題でなくなれば、問題の数自体が減り、問題解決にあたらなくてよくなる。心配事が減れば、それに費やす時間も気力も奪われずに済む。すると、「本当に重要な課題だけ」にフォーカスできるようになります。

何が起こっても、誰から何かされても、言われても、対応できる、他人の都合に振り回されない、泰然自若としていられるならば、この不透明・不安定な時代であっても「颯爽と駆け抜けられる」はず。
中東諸国などのように紛争が絶えず秩序のない世界であれば、武器や格闘術、頑強な隠れ家を持っていることが生きるうえで重要かもしれません。


しかし、世界の中でもトップクラスの法治国家である日本で生きる私たちにとっては、むしろメンタルの強さこそ生きる強さを決定づける要因の1つではないでしょうか。

自殺をするのも、ビビって行動できないのも、あきらめるのも、落ち込んで暗い気分になるのも、人間関係で悩むのも、学校や会社に行きたくないのも、すべては心の状態、つまりメンタルが決めていることです。
そのメンタルの強さを形成するのが、「捨てる力」だと考えています。

常識や価値観は人生を形成する大事な資産だが、時に負債になる

私たちは、たくさんのものを持ち、それらを捨てられずに生きています。お金、家、車、洋服、といったものだけではなく、学歴や資格、職業、肩書などもそうですし、家族や友人、人脈も持っているもののひとつです。

また、そうした目に見えるものだけではありません。他人からのイメージや信用などの評価、センスやスキル、判断力といった能力、好奇心、誇り、自信といった、自分の人生の中で培ってきた感情や感覚も持っています。
さらに、常識や価値観も、私たちが何十年にもわたって身につけてきたものです。

子どもはこうあるべき、大人はこうあるべき、男はこうあるべき、女はこうあるべき、上司はこうあるべき、会社はこうあるべき、政府はこうあるべき……。

それが常識だ。当たり前だろう。みんなそうしている。世の中はそういうものだ。そんなことは許されない。やってはいけない。
これらは、私たちの人生を形成する大事な資産であると同時に、時に負債になることがあります。

しかし、たとえば「不安」「恥ずかしい」といった感情を捨てることができれば、躊躇なくいろんなことにチャレンジできるようになります。嫉妬や怒りの感情を捨てることができれば、毎日が平穏で心豊かに過ごすことができます。

見栄などのプライド、他人からどう思われるか、などの発想を捨てることができれば、マイペースで自分らしく生きることができます。
もしあなたが今の状態に不満があるとしたら、何か間違ったものを持っている可能性があります。
そしてそれは、たいていの場合、「考え方」や「習慣」です。つまり本来、資産として私たちを幸福にしてくれるはずの頭脳が、負債としてあなたの人生の足を引っ張っているのです。

たとえば人間関係で悩む人。それは、他人から良く思われたい、優秀に見られたい、いい人でありたいという見栄を捨てられないから。でもそれが、自分の精神を蝕むことがあります。

世間体を気にして、自分らしく振る舞えない。失敗したら格好悪いという感情を捨てられないから挑戦できない。自分の子どもが一流校に行けないと恥ずかしい、という感情を捨てられないから過剰な干渉をしてしまう。

自分はダサくない、それなりの人間だと思われたいという感情を捨てられないから、ブランドエリアに住む。つねに新しい服やバッグを買う。高級車を買う。

他人からの目を捨てられないから、高級レストランに行っては写真を撮り、イベントに参加しては写真を撮り、それをフェイスブックにアップしてリア充ぶりをアピールする。
でも、そんな感情に縛られた生き方って疲れないでしょうか。


捨てた分だけ得られるものがある

また、せっかくのチャンスを自らの手で潰してしまうこともあります。自分の考え方にしがみつき、他人の価値観を受け入れられない。だから新しい発想ができない。自分がバージョンアップしない。

プライドが邪魔して、他人の挑戦や成功を称えられない。目下の人間に教えを請うことができない。自分から歩み寄ることができない。「あいつムカつく」「イライラする」という感情も、自分の価値観が正しいと思い込んでいるからです。

だから自分とは違う他人にガマンができない。怒りっぽい人、頑固な人、感情の起伏が激しい人は、自分の考え方にしがみついているからです。しかし、怒りの感情は不愉快なだけで、楽しくもなんともありません。

いろんな固定観念や執着を持ちすぎていて、心が重くなっている。それなら、自分にとってマイナスとなる荷物は思い切って捨ててしまうことです。

家の中にものがたくさんあると、新しいものを入れるスペースがありませんが、古いもの、使えないものを捨てると、新しいものが入るスペースが生まれます。

思考も同じく、古いもの、役に立たないもの、自分を縛るものを捨てることで、新しいものの見方や考え方を取り入れることができます。


選ぶとは捨てること、捨てるとは選ぶこと

何かを選ぶとは、それ以外の選択肢を捨てることです。たとえばプロ野球選手を目指すなら、プロサッカー選手やプロバスケットボール選手になるという道を捨てることになります。

つまり捨てるとは、自分にとってより重要なものを選ぶということに他なりません。
人生も同じく、24時間をどう使うかは、選ぶ、つまり捨てることの連続です。

たとえば誰かと1時間話をすれば、別のことをする時間が1時間減ってしまいます。今日あなたがテレビを1時間見れば、その1時間を使ってできたであろう別のことはできなくなります。

私たちがいま、今日、明日、何をするかという選択は、同時に「何をしないかを選んでいる」。つまり他のことを捨てるということです。

さらに、捨てるとは、より価値が高いものを見出すという行為であるともいえます。たとえば複数の異性から同時にプロポーズされたとしても、結婚する1人を除いて全員を捨てることになります。つまり自分が本当に大切にしたい1人を見極めようとする行為です。

クローゼットで一杯になっている服をばっさり捨てるというのは、自分に自信が持てる服、異性とのデートや大事な仕事の場面で着たい勝負服、リラックスできる部屋着など、本当に自分にとって価値があるものを見極める行為です。

それ以外でも、数多くの情報、職業、人脈、時間の使い方の中で、自分にとって何がもっとも価値があるのか。自分が大切にしたい価値観、考え方、良識、道徳観は何か。

そういった選択が自分の人生を形成しています。今の自分の状況は、これまで何を捨て、何を選んできたかの積み重ねです。ということは、今後自分が「何を捨てるか」によって、自らの未来が決まっていくといえるでしょう。



参考:「1つずつ自分を変えていく 捨てるべき40の悪い習慣」(日本実業出版社)午堂 登紀雄ごどう ときお




2020年は量子コンピュータ元年? 実用化の可能性やAIとの関係を考える


 今回は、世界各国でその開発に巨額の資金が使われている「量子コンピュータ」とAIの関係を考えてみたい。量子コンピュータはさまざまな分野に影響を及ぼすといわれている。その活用事例を見る前に、まずは量子コンピュータとは何なのかを解説したい。


●量子の世界と量子コンピュータ

 量子コンピュータとは何かという話に入る前に、それを実現する土台となっている量子力学の世界を整理する。
 鉄や銅といった、何らかの物質を細かく分解していく作業を想像してほしい。

よく説明に使われるのは水(H2O)なので、ここでも水を分解してみたい。しばらくすると、水という物質はこれ以上分解できないレベルに達する。これが分子だ。

水の分子は、さらに小さな原子という単位によって構成されており、水の場合は水素(H)2個、酸素(O)1個の計3個の原子で成り立つ。
 
特別な力を使って、この原子の内部をのぞけるとしよう。すると原子はさらに小さな単位である原子核と電子で構成されており、原子核は陽子と中性子から成ることが分かる。

この原子や、それを構成する電子や陽子、中性子といったものを「量子」と呼んでいる。トライグループが公開している動画も参考になる。

 こうした量子がどのような特徴を持つのかを研究するのが「量子力学」で、その発展により、量子の世界には私たち人間が住む世界とは大きく異なる点があることが分かってきた。

 例えば、量子コンピュータに深く関係する重要な特徴の一つに、「状態の重ね合わせ」と呼ばれるものがある。私たちの世界では、ある空間に何かがある(1の状態)、それとも何もない(0の状態)という状況は同時には起こり得ない。

 そこにあるかないか、1か0かのどちらかだ。しかし量子の世界では「1でも0でもある」という状態、より正確に言えば「1から0にかけての状態が連続している」状態も起きるのである。つまり、それだけ多くの情報を重ね合わせて同時に表現できる。

 「量子もつれ」と呼ばれる現象がある。これは2つの粒子がもたらす現象で、量子もつれの状態にある2つの粒子の片方に何らかの影響が加わると、それがもう片方の粒子にも伝わるというもの。

すぐ近くにある粒子間だけでなく、粒子が離れた場所にあっても「量子もつれ」が起きる場合がある。つまりある粒子が持つ状態=情報を、同じタイミングで別の粒子にも関連付けられることになる。

 こうした量子の特徴を生かすことで、多くの情報を重ね合わせたまま、並列で処理することが可能になる。それを実現したのが量子コンピュータだ。従来のコンピュータでは、最小の情報単位(ビット)が持つ値は0か1の2通りしかなく、それを順に処理していくしかなかった。

それと比べれば、いかに量子コンピュータが高速で情報処理できる可能性を秘めているかが分かるだろう。

 例えば、2019年10月に米Googleが科学誌Natureに発表し、大きな注目を集めた論文では、同社が開発した量子コンピュータ「Sycamore」が、従来のスーパーコンピュータが処理に1万年を要する演算を、たった200秒で行うことに成功したと主張している。


●量子コンピュータ実用化への期待

 現代は、あらゆるモノがネットにつながるIoTの時代だ。いま注目が集まる5Gが整備されれば、それらが扱うデータのやり取りが一層進むことになる。

 調査会社のIDC Japanは、IoTのエンドポイントデバイスが年間で生成するデータ量が、18年の13兆6憶GBから、25年には5.8倍の79兆4憶GBに達すると予測している(20年2月時点)。

 従来型のコンピュータの処理能力向上は限界に達しつつあるといわれていることもあり、膨大な量の情報を高速処理できる量子コンピュータへの期待が高まっているわけだ。

 しかし、実用化はそう簡単ではない、従来と比べてハードウェアが異なるのはもちろん、それを機能させるための情報処理の手順やアルゴリズムも大きく異なる。そのため量子コンピュータの概念自体は1980年代から議論されているのだが、実用的なシステムやサービスという形で一般の話題に上るようになったのは、2010年代に入ってからだ。

 特定の課題に対応することに特化したタイプも登場していることが、話を複雑にさせている。


●量子アニーリング方式と量子ゲート方式

 例えば、11年にはカナダに拠点を置くD-Wave Systemsが、「D-Wave」という量子コンピュータの開発に成功したと発表した。
 このD-Waveは、「量子アニーリング」と呼ばれる方式を使って実現されたものだった。

これはいわゆる「組み合わせ最適化問題」を解くのに適した方式で、汎用(はんよう)的なものではない。組み合わせ最適化問題は、指定された条件下で、特定の指標が最も良い状態になるような変数の組み合わせを求める問題のことだ。

 汎用的な、つまり特定の用途に限られない量子コンピュータの開発も進められているが、当然ながらそちらのほうが実現は難しい。それを実現する方式として現在主流なのが「量子ゲート方式」で、GoogleのSycamoreもこれを採用している。

ただし量子ゲート方式であればどんな演算でも高速で処理できるわけではなく、高速処理が可能なアルゴリズムには制限がある。実はGoogleが発表した論文でも、彼らに有利な条件で検証したのではないかという批判が出ている。

 いずれにしても「どんな問題でも瞬時に解ける夢のコンピュータが実現された」という状態ではなく、まだ発展途上の技術といえる。だからこそ、世界各国でこの分野への大規模な投資が行われているわけだ。

 一方で、大手IT企業はクラウド上で量子コンピュータを使えるサービスを次々と発表している。16年には米IBMが「IBM Quantum Experience」を開始し、19年11月には米Microsoftが「Azure Quantum」を、12月には米Amazon.comが「Braket」を、それぞれ立ち上げた。

 これらはあくまで「現時点で実現されている量子コンピュータの性能にアクセスできる」サービスであり、使い手の側にも試行錯誤が求められるが、こうした商用化の進展を受けて、「2020年は量子コンピュータの導入元年になる」と予測する人々もいる。


●量子コンピュータとAIの関係

 前置きが長くなったが、こうした量子コンピュータの実用化がAIにどのような影響を与えるかを考えてみたい。

 最も分かりやすいのは、量子コンピュータの情報処理能力によって、より大量のデータを使った機械学習が可能になるというシナリオだ。大規模なデータを、より短時間で処理可能なコンピュータがあれば、それだけ高度な機械学習を行える。

実際にMicrosoftのサティア・ナデラCEOは、17年9月に開催された自社イベントで、量子コンピュータが応用可能な領域の一つとして「機械学習の高度化」を挙げた。

 しかし、量子コンピュータで大量の教師データを扱う仕組みはまだ研究段階にある。

いくつかのアプリケーションで実装された例があるものの、量子コンピュータによる機械学習の実用化を進めるためには、新たなコンセプトで設計し直すことが必要だという声もある。


●暗号技術への影響は

 近年は量子コンピュータによって、現在の暗号技術が破壊されてしまうのではという懸念が広がっている。いま、電子証明書などで広く使われている「RSA暗号」という技術がある。

これは簡単に言うと、「コンピュータで計算させれば暗号が分かってしまうが、計算に長い時間がかかるために暗号としての強度が保たれる」仕組みだ。だが、量子コンピュータがあれば、その前提が崩れて暗号技術としての意味をなさなくなるかもしれない。
 
このように、圧倒的な計算能力の向上が、これまでの各分野の常識を変えていく可能性は十分にある。量子コンピュータ技術の活用事例について、広くアンテナを立てておく必要があるだろう。


●量子コンピュータの活用事例

 最後に、量子コンピュータの具体的な活用事例を紹介したい。

 量子コンピュータの応用先として期待されている分野の一つが、交通問題だ。テレマティクス技術の発展で、道路を走行する自動車からデータを集め、それを管理することは現実的になってきたが、都市全体で全ての交通を管理するとなれば話は別だ。

処理すべきデータは膨大で、リアルタイムな処理も求められる。そこで量子コンピュータの出番になる。

 ドイツのフォルクスワーゲングループは17年11月、Googleと量子コンピューティング分野で包括的な研究を行うことで合意した。その目的の一つが、交通の最適化だ。

その1年後、同社はD-Waveと共同で、量子コンピュータによる都市交通管理システムの研究成果を発表した。これはバスやタクシーといった交通機関をどのように配置すれば、最も効率的に人や物資を移動できるかという「組み合わせ最適化問題」を、量子アニーリング方式で解くアプローチだった。

 19年11月には、フォルクスワーゲンとD-Waveがこの交通管理システムの実証実験を、ポルトガルのリスボンで実施。市内を走る一部のバスの走行経路を、量子コンピュータが算出した結果に基づいて決めたという。

 日本だと、例えばリクルートコミュニケーションズがマーケティングにおける量子コンピュータの活用法を模索し、研究開発をしている。その具体的な例の一つが、Webサイト上でのユーザーに対する情報提供の最適化である。

 同社は19年5月に開催された経済産業省の政策シンポジウムで、D-Waveによる量子コンピュータの活用例を発表した。

同社は旅行サイト「じゃらん」上で、ユーザーに宿泊施設の情報を提示する際に、その表示順序を決める複雑な計算に量子コンピュータが使えないか検証したという。

従来は人気度の高い宿泊施設を上位に表示していたが、表示結果の多様性を実現するために条件を加え、その中で「最適な組み合わせ」を導き出すために量子コンピュータを活用した。実験の結果、実際に売上増加に効果があったとしている。

 社会問題の解決にも、量子コンピュータが役立てられている。東北大学が行っているのは、災害時における最適な避難経路の算出だ。

例えば地震によって大きな津波が発生した場合、自動車で逃げようとする人々が大量に発生し、道路が渋滞してしまう。それを防いだ上で、人々を円滑に安全な場所へ誘導するようなシステムの構築に、量子コンピュータを活用している。

 実際に彼らは、高知県高知市の地図を使い、市内に点在する避難場所に自動車を誘導するモデルを構築。避難経路が被らないように調整することで、従来のコンピュータを使った場合に比べて渋滞の発生を抑えられたという。

 量子コンピュータが具体的な価値を生み出す領域として、交通やロジスティクス、マーケティング、さらには新素材開発や創薬といった分野が有力視されている。こうした事例が既に登場していることには注目すべきだろう。

 一方で、新技術には過度な期待が生まれがちだ。AIブームと同じように、多くの期待と失望が繰り返される中で、広く社会に普及する革新的なサービスが生まれてくるだろう。





コロナ危機後の世界とは


マクロな視点から人類の歴史を叙述した世界的ベストセラー『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』。その著者でイスラエルのヘブライ大学教授ユヴァル・ノア・ハラリが、仏「ル・ポワン」誌のインタビューに答え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が社会にもたらす変革について分析した。

──14世紀半ば、こんにち「最初のグローバル化」と呼ばれる時代に、シルクロードを旅する商人たちが中国からもたらした腺ペストは、最初イタリアとフランスを襲い、続いてイギリスに到達して、全ヨーロッパに広がりました。

ヨーロッパの人口の半分がその過程で死亡していますが、感染症の深刻な流行がもたらした予想外の結果として、社会が激変し、ルネサンスが起こりました。

また、特に西ヨーロッパでは、ペストによる労働力不足が最初の固定給制度や社会権の出現を準備し、封建秩序に終止符を打ちました。

死亡率は別として、この状況は現在と似ていると思いますか? この大災害を乗り越えた後では、世界はそれまでとはまったく違ったものになるのでしょうか? もしそうなら、どのようにしてでしょう?

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機は我々の時代にとってきわめて重要な出来事となる可能性があります。この出来事がこれほど決定的なのは、すべてをこれから把握しなくてはならないためです。

歴史は加速しています。古い規則が粉々になる一方で、新しい規則はまだ書かれている最中です。

今後1~2ヵ月で各国政府や国際機関は、実際の条件のもとで大規模な社会実験を実施することになるでしょう。そしてそれが、この先数十年の世界のかたちを決めることになるのです。

エルサレムの私の大学で起こっていることを例にとりましょう。私の大学では、大教室での講義の代わりにインターネットを用いた遠隔講義をおこなう可能性について、数年前からかなり激しい議論がありました。

それには膨大な問題点があり、反対意見も多数ありました。そのため、問題は一向に解決しませんでした。

ところが、3週間前にイスラエル政府が感染症への対応としてすべてのキャンパスを閉鎖すると、大学はすべての講義をオンラインに切り替えるシステムを導入せざるを得なくなりました。

今週すでに、私はこの方法で3つの講義をおこない、すべてうまく行きました。危機が去ったあとで、大学がまた元に戻るとは私には思えません。

もうひとつの例は、数年前から一部の専門家が検討していた「ユリバーサル・ベーシック・インカム」(最低所得保証)です。地球上のほとんどすべての政治家は、このような考えは素朴で非現実的だと思い、ほんの少しでも、たとえ限定的にでも実験をすることを拒みました。

しかし、パンデミックが起こったことで、現在のアメリカの超保守的な行政機関さえも、危機の間ずっと、国民ひとりひとりにベーシック・インカムを支給することを決めました。

この実験の結果はどのようなものになるでしょうか? いまのところ、誰にも何もわかりません。ですが、教訓は引き出されるでしょうし、それが現在の国家の生命を握る社会経済システムを一変させることもありえるでしょう。

さらにもうひとつ、お年寄りや病人のケアにおけるロボットの利用の例があります。これもまた、乗り越えなくてはならない障壁が多く、しかも乗り越えるのは困難で、経験も限られていました。

しかし、看護スタッフが地球規模で緊急に必要となったことで、ロボットがひとつの解決策であるということに人々が気づきました。ロボットは疲れませんし、感染のおそれもないためです。

したがって、かなりの医療機関で、増え続ける業務のためにロボットが活用されるようになりました。現在の危機が終わったら、それらの機械は物置に戻されてしまうのでしょうか? 私はそうは思いません。

いちばん可能性が高いのは、そのうちの少なくとも何台かがそのまま使われ、危機によってある種の職業の機械化が加速することです。

ほかの多くの分野でも同様のことが起こっています。こうした実験のどれが成功し、社会に対して厳密にどのような影響を与えるのかを予想するのは不可能です。

ですが、私が強調したいのは、この公衆衛生上の危機によって、我々は歴史の渦に入ったのだということです。通常の歴史の法則は中断されました。数週間で、ありえないことがあたりまえのことになりました。

それが意味するところは、我々はきわめて慎重になる必要がある一方で、あえて夢を見る必要もあるということです。

民主主義では現在のような時代に、暴君が権力を握り、ディストピアを強要するものですが、そうした時代はまた、長いこと待ち望まれた改革が実現し、不正なシステムが再編される時代でもあります。

いまから年末までに、我々は新しい世界に生きることになるでしょう。その世界がよりよいものになるよう願う必要があります。


現代社会を特徴付ける緊急性

──14世紀のペストと現代の情報時代との違いは、もちろん速度です。こんにちとは対照的に、14世紀には「緊急」という概念は存在しませんでした。

ところで、緊急性は想像もしていなかった世界を作り出します。

「フィナンシャル・タイムズ」紙で、この問題について「『暫定措置』というのは、非常事態が終わってもなおしぶとく残ろうとする」「いまや世界中すべての国が、大がかりな社会実験のモルモットだ」と書いていらっしゃいましたが、誰がこの実験をコントロールしているのでしょう? 

こうした社会実験のいくつかは、新しい問題を解決するために現在の社会状況から自然発生的に現れてきたものです。

また、中には指導者たちによって注意深く管理されているものもあります。どのような社会実験を、どのような条件でおこなうか、誰かが選んでいるのです。

したがって、これまでになく政治が重要になっています。この危機によって、政治家たちは巨大な権力を託され、平常時であれば何年もの闘いを要することをわずか数日で実現できるようになったからです。

──たとえば、ヨーロッパでは8つの携帯電話事業者が顧客の位置情報データを各国政府に提供することを決めましたが、反論はまったくありませんでした。

もうひとつの例は文化です。私の国イスラエルでは、劇場や画廊、美術館、博物館、ダンスカンパニーなど、ほとんどすべての文化機関が破産の危機に直面しています。

政府はホテルやレストラン、航空会社を救済するのとまったく同じように、これらの機関も救済すべきです。まったくありそうなことですが、政府がもし自分の気に入る機関だけを援助するなら、国の文化状況は数ヵ月で一変してしまうでしょう。

もっと一般的に言って、時間と緊急性の問題は、皮肉なパラドクスに従っています。人類の生活環境が改善されればされるほど、緊急事態も頻発するようになるからです。

14世紀フランスの「あたりまえ」について考えてみましょう。当時は医療システムに頼ることはまったく不可能でしたし、国の補償を受けられる人はいませんでした。暴力が偏在し、権力者の間では信じられないような腐敗が横行しており、人々は飢えに苦しんでいました。

もし当時、ペストではなく新型コロナウイルス感染症が発生したとして、誰が気にかけたでしょう? 誰も気にかけはしません。感染症で人口の1パーセントが死亡する? そんなことは、まったくあたりまえのことなのです。

公共のための緊急事態という概念はそのころまだ知られていませんでした。

反対に現代世界はきわめて洗練された機関──病院や学校など──のネットワークによって特徴づけられます。それらは、想像できないほど人々の生活環境を改善しましたが、同時に社会をより脆弱にしました。

こんにちではどんな些細な感染症でも我々は非常に多くのものを失います。緊急性という概念は、こうした洗練と脆弱性に応じて発展しました。

<参考記事>

【ベルリン=石川潤】ハンガリー議会は30日、強権統治で知られるオルバン首相の権限を期限を定めず、大幅に拡大する法案を可決した。新型コロナウイルスの感染拡大という非常事態に対応するための措置だが、無期限の首相権限の拡大は極めて異例で、野党側が独裁につながりかねないと強く批判している。

オルバン首相の統治手法は強権で知られる=ロイター

オルバン政権はすでに非常事態を宣言し、学校の封鎖や市民の移動制限などの措置を導入している。今回の法案は、非常事態に伴う政府の権限拡大を無期限に引き延ばす内容で、議会のチェックなどが働かない事実上の「権力の白紙委任」(地元メディア)となる可能性がある。

野党側が問題視するのは、新型コロナとの戦いを妨げるような「フェイクニュース」を流した場合、最大で5年間収監されるという項目が法案に盛り込まれた点だ。政府に批判的なメディアや個人への威嚇に利用されかねないとみている。

オルバン政権はこれまでもメディアを強く統制し、世論を巧みに誘導して政権基盤を安定させてきた。経営の苦しい独立系メディアを一段と追い込み、報道の自由を奪うことも考えられる。

オルバン政権は法案について「期限を明示できないのは(新型コロナの終息まで)どれだけかかるかが分からないためだ」などと説明する。感染拡大の阻止が狙いで、独裁との批判は当たらないとの姿勢だ。

非常事態に伴う権限拡大は欧州のほかの国でもみられるが、期限を区切ることが多く、議会などによる何らかのチェックが欠かせない。オルバン政権はこれまで、民主主義の原則をないがしろにする言動を重ねてきた。

ハンガリーと共に欧州連合(EU)を構成するドイツの公共放送ドイチェ・ウェレは、ハンガリーが「無期限、無制限の権力を持つ欧州で唯一の国」になると非難する。

イタリアのレンツィ元首相は30日「EUは行動し、オルバン氏に考えを変えさせなければならない」と指摘した。欧州評議会も「非常措置は厳密に釣り合いの取れたものでなければならない」と批判する。

米ジョン・ホプキンス大学によると、30日時点でハンガリーの感染者数は447人、死者は15人にのぼる。2010年から続くオルバン政権は「非リベラル民主主義」を掲げ、難民受け入れの是非などを巡ってEUと激しく対立してきた。


ユヴァル・ノア・ハラリ




グーグル「シカモア」、中国「九章」 量子コンピューターの最前線を追う
2021. 2/13(土) 17:54配信




量子ビットを制する者が、未来の情報社会の覇者になる。グーグル、IBM、ベンチャー企業、中国政府......。究極の計算機「量子コンピューター」の勝者は誰になるか。いつ実用化され、世界の何を、どう変えるのか。
グーグルの量子コンピューター「シカモア」(カリフォルニア州サンタバーバラ) HANNAH BENET/GOOGLE

(本誌「いま知っておきたい 量子コンピューター」特集より)

【フレッド・グタール(本誌サイエンス担当)】数学者のピーター・ショアが量子コンピューターで走らせるアルゴリズムを開発したのは1994年のこと。当時そんなマシンは黒板に書かれた数式上にしか存在していなかった。


ショアが書いたのは素因数分解のアルゴリズムだ。素因数分解はインターネットのセキュリティーのアキレス腱のようなもの。ネット上を飛び交う情報は全て、素数の掛け算による暗号化で保護されている。

桁数の多い数値の素因数分解を実行できるコンピューターがあれば、他人の個人情報を簡単に盗み取れるのだ。

もちろんショアはそんなコンピューターを発明したわけではない。いつか開発される仮説上のコンピューター用にアルゴリズムを書いただけだ。

量子コンピューターは量子力学が明らかにした原子や原子より小さい粒子の奇妙な性質を利用して、複雑な計算を瞬時にやってのけるマシンだ。従来型のコンピューター(古典コンピューター)では何万年もかかる計算、いや、それどころか宇宙の寿命より長い時間がかかるような演算処理をあっという間に実行する。

ショアが目指したのは、量子コンピューターの演算能力を理論的に探ることだった。

「問題は量子力学をコンピューターに応用することで、演算能力が上がるかどうかだ」と、彼は1994年の論文に書いている。「まだ満足のゆく答えは出ていない」

ショアの問いに「上がる!」と答えたのがグーグルの研究チームだ。2019年、独自開発した量子プロセッサー「シカモア」で実証実験を行い、「量子超越性」、言い換えれば量子コンピューターの威力を確認できたと発表した。

世界最速のスーパーコンピューターでも1万年かかる演算処理を「われわれのマシンは200秒で実行した」と、チームのジョン・マーティニスとセルジオ・ボイクソは公式ブログで誇らしげに報告している。

さらに昨年には中国科学技術大学(USTC)の潘建偉(パン・チエンウエイ)教授率いるチームが科学誌サイエンスに掲載された論文で、自分たちが開発した量子コンピューターは古典コンピューターよりも100兆倍速く演算を実行したと発表した。

これはグーグルのマシンの100億倍の演算能力に相当すると、中国国営の新華社通信は報じた。

この2つの発表はプロトタイプのマシンに演算を実行させた実証実験の報告にすぎず、実用段階には程遠い。

だが本格的な実用化に向けて既に巨額の資金が投じられ、グーグル、IBM、アマゾンなどの大企業をはじめ大学やベンチャー企業などのチームが続々と参戦、開発競争がヒートアップしている。

報道によれば、中国政府は100億ドルの予算をかけ、量子コンピューターと人工知能(AI)に特化した国立量子情報科学研究所を建設しているという。

アメリカでは連邦政府の量子コンピューター関連予算は10億ドルだが、それに加えて軍と企業が多額の投資を行っている。例えばグーグルとIBMはそれぞれ1億ドル以上を既に投入したとみられている。

量子コンピューターはただ高速の演算処理が可能なだけではない。古典コンピューターとは根底的に演算アプローチが異なるため、技術分野だけでなく社会全体を大きく変容させる可能性がある。

例えば量子コンピューターとAIを組み合わせれば、どんなことが可能になるか想像もつかない。中国がこの2つの技術を専門とする研究所を設立するのもただの偶然ではない。

中国は量子暗号通信の実験のため衛星「墨子」を打ち上げた
量子コンピューターのアルゴリズムを開発したショア ROSALEE ZAMMUTO

<「0でもあり1でもある」状態>

量子技術における中国の野心的な研究の進展は、1957年に人工衛星の打ち上げでソ連に先を越されたときのようにアメリカに大きな衝撃を与えた。何年か前までは外国の先端技術をコピーするだけだと思われていた中国だが、今や堂々たる技術大国だ。

2016年には量子暗号通信の実験を行うために衛星「墨子」を打ち上げた。量子暗号通信は量子コンピューターとは異なるが、やはり量子力学を応用した技術だ。

長期的には、アメリカが先端技術で中国に後れを取る可能性がある。中国は政府が率先して研究開発を進めているが、米政府の科学振興予算は減っている。

「連邦政府がイノベーションを促進するアクセルペダルから足を離したため、中国などに追い付かれてしまった」と、シンクタンク・新米国安全保障センター(CNAS)の技術・国家安全保障ディレクター、ポール・シャーレは嘆く。

気になるのはサイバーセキュリティーに与える影響だ。量子コンピューターが実用化されれば、ネットユーザーのプライバシーはどうなるのか。ある朝目が覚めたら中国政府にメールを読まれていた、などという悪夢が現実になるのだろうか。

グーグルのマーティニスが量子コンピューターに関わり始めたのは80 年代。「まだ『量子ビット』という言葉もなかった」と、彼は言う。

量子ビットは量子コンピューターの基本的な情報の単位だ。古典コンピューターの基本単位である「ビット」という言葉を使っているが、ビットと量子ビットは根本的に異なる。

ビットは0か1だが、量子ビットは同時にその両方の状態にもなるし、0と1の間のあらゆる状態になり得る。これは「重ね合わせ」と呼ばれる現象だ。

量子ビットは1個の原子あるいは原子より小さい粒子で、量子力学の法則に従い、奇妙な確率的状態で情報を保存する。それは肉眼で見えるマクロな現象世界にいる私たちが体験したことのない状態だ。

1ビットは独立した情報単位だが、1量子ビットはアルバート・アインシュタインが「不気味な遠隔作用」と呼んだ「量子もつれ」の状態の一部で、他の量子ビットとペアになっている。

<量子ビットは壊れやすい>

マーティニスはカリフォルニア大学サンタバーバラ校で行った初期の研究で、原子や光の粒子である光子のような小さな粒子からどうやって情報を取り出すかという基本的な問題を探った。

単一の原子や光子を扱うためには、エンジニアリングの精度を極限まで高める必要があった。これらの極小粒子をそのままの状態に維持する一方で、コンピューターが演算を実行できるように他の粒子との相互作用を可能にするにはどうすればいいのか。

言い換えれば暗号化されたメッセージの解読など、大きな数を素因数分解するタスクを実行するため、「重ね合わせ」と「量子もつれ」の性質をどのように利用するのか。

「量子ビットを隔離しなければ、そのままの状態を維持できない」と、マーティニスは言う。「だが隔離してしまうと、他の量子ビットとの相互作用が不可能になる」

「シカモア」は絶対零度近くに冷却された状態で研究所に保管
2016年に中国が量子暗号通信の実験のために打ち上げた人工衛星「墨子」 XINHUA/AFLO

マーティニスはこの問題に何年も取り組み、さまざまな試行錯誤の末に、1つのコンピューターで複数の量子ビットを同時に動かすタスクに着目。最終的にグーグルとの協業にたどり着き、2019年のデモで使用された「シカモア」の開発をスタートさせた。

54の量子ビットを搭載するプロセッサーである「シカモア」は、絶対零度近くに冷却された状態でカリフォルニア州サンタバーバラ郡にあるグーグル研究所の一室に保管されている。室内には微弱なマイクロ波が放射され、これが量子ビットを「刺激」しコンピューターを動作させる。

マーティニスら量子技術者にとって大きな問題は、どうやって演算の実行に必要な時間の間、量子ビットをそのままの状態に保つかだ。

量子ビットが同時に0と1の両方になれる「重ね合わせ」の性質は量子コンピューターの動作に不可欠な要素だが、わずかな「揺らぎ」があるだけで量子ビットは1または0に決定してしまい、微妙な「量子もつれ」のシステム全体を崩壊させかねない。

極端な低温に冷却していても、量子ビットはすぐに「壊れて」しまい、多くの演算がエラーになるという厄介な性質がある。量子コンピューターの開発だけでも十分に難しいが、エラーのない量子コンピューターを作るのは今のところ技術者にとって夢のまた夢だ。

「量子ビットに演算をさせている間も、『重ね合わせ』と『量子もつれ』を維持したい」と、グーグルやその他の量子技術者と共同研究を行っている米テキサス大学オースティン校のスコット・アーロンソン教授(コンピューター科学)は言う。

「問題は量子ビットが非常に壊れやすいことだ。量子ビットが0か1かの情報が『外部に漏れる』と、すぐにシステム全体が崩壊してしまう。この『ノイズ性』が量子コンピューターを作る上での根本的課題だ」

グーグルと中国の量子コンピューターの場合、テスト方法を考案すること自体が難題だった。従来のコンピューターでは常識的な時間内に演算不可能な問題を、量子コンピューターに解かせる際にどうやって結果の正しさを確認するのか。

最も簡単な方法は、暗号化されたメッセージにショアのアルゴリズムを使うことだ。メッセージを解読できれば、量子コンピューターがきちんと動いたことが分かる。だがショアのアルゴリズムは、現段階の量子コンピューターには難し過ぎた。

2011年、アーロンソンらは光子のような素粒子が障害物で跳ね返ったときにどのように振る舞うかを予測する「ボソン・サンプリング」のアイデアを考案した。

これには量子力学に基づく多くの演算が必要になるため、古典コンピューターには難しい問題だが、量子コンピューターはそもそも量子力学に基づいて設計されているので、この種の演算は朝飯前のはずだ。

さらにアーロンソンは、古典コンピューターで問題を解かなくても統計的に結果を確認する方法も考案した。

限定的目的のために作られた「九章」に批判的な意見も
「シカモア」を開発したマーティニス COURTESY OF JOHN MARTINIS

<「10年で実現したら驚き」>

グーグルもUSTCも、アーロンソンのアプローチを採用した。特に潘建偉らが開発した「九章」は、ボソン(ボース粒子)の一種である光子を量子ビットとして使用する「ボソン・サンプリング」専用マシンだ。

彼らは光子のレーザービームを鏡やその他の障害物のコースに送り、あちこちに跳ね返らせた。

実験の目的はさまざまなタスクを実行可能な汎用コンピューターを作ることではない。ただ1つのタスク――光子が障害物コースを移動するときにどう振る舞うかを、光子で作られたコンピューターで演算することだった。

USTCの実験が、このような同語反復的な説明では捉え切れない成果を上げたのは確かだ。彼らは光子を制御できること、それを演算に利用できることを実証した。

それでも量子技術者の間には、このような限定的目的のために作られた「九章」に批判的な意見もある。古典コンピューターでも同じ結果が妥当な時間で得られることを示そうとしている技術者もいる。

「USTCグループが量子超越性を達成したのかどうか、どのような意味で達成したのか、議論はしばらく続きそうだ」と、アーロンソンは指摘した。

グーグルの「シカモア」も大きなニュースになったが、やはり技術者の間では批判の声が出ている。独自の量子コンピューターを開発しているIBMの技術者は、スーパーコンピューターに膨大な量のメモリを搭載すれば、理論的には「シカモア」と同様の演算が可能だと主張した。

IBMリサーチの副所長で数学者のロバート・スートルはこう批判する。「『われわれはたった2秒でできたが、出来損ないのスーパーコンピューターなら1万年はかかるだろう』と、彼らは言った。なぜスーパーコンピューターの機能の一部を使わないでおいて、自分たちは素晴らしいと主張するのか」

多くの技術者は量子超越性の実証を、重要な成果というより1つの通過点と考えている。「シカモア」と「九章」は印象的な結果を出したが、実用には程遠い。

「量子超越性が完全に達成されたとは思わない」と、アーロンソンは言う。「まだ問題がいくつかある。(だが)その答えは簡単に見つけられるだろう」

量子コンピューターで興味深いことを実行するためには、マシンにエラー訂正機能を持たせ、量子ビットの集積度を飛躍的に向上させなくてはならない。このテクノロジーがまず実用化されるのは、量子化学シミュレーションなどの領域だろう(もしそれが実現すれば、新薬開発への恩恵は計り知れない)。

「量子コンピューターが進化する過程で、やがてショアのアルゴリズムで暗号を破れる時が来るだろうが」と、アーロンソンは言う。「万一、向こう10年の間に実現するとすれば、驚きだ」

「シカモア」のデモを行った後、マーティニスはグーグルを去った。古い知人であるミシェル・シモンズがシドニーに設立した新興企業シリコン・クオンタム・コンピューティングに移籍したのだ。

同社は、シリコンとリンで量子ビットを作ろうとしている。シモンズによると、これらの材料を用いれば、ほかの材料を用いるよりも概して安定性が高く、エラー訂正の必要性が小さくなると期待される。

その上、これまでより高温の環境でも量子ビットを動作させられるので、IBMやグーグルのような超低温の環境をつくらずに済む。

量子コンピューターを作るのは「難しい」「30億ドル以上かかる」


しかし、マーティニスは過剰な楽観論を抱いてはいない。現在進行中の十数件のプロジェクトのうち「うまくいくのは、せいぜい1件か2件」だと予想している。「量子コンピューターを作るのは本当に難しい。一般のイメージ以上に難しい」

量子コンピューターを作るには、莫大な資金が必要だ。グーグルの量子コンピューター部門を率いるハートマット・ネブンが2020年1月に戦略国際問題研究所(CSIS)で行った講演によると、エラー訂正ができる量子コンピューターを作るためには30億ドル以上かかるという。

現時点でグーグルはプロジェクトをやり遂げると約束しているが、会社の方針が変わって、量子コンピューター開発の優先順位が下がれば、その約束が守られる保証はない。

そこで、アメリカが世界の先頭を走り続けるためには「政府が巨大な購買力を活用し、早期にリスクを伴う行動に踏み出した企業に報いる必要がある」と、ネブンは語った。

<別の暗号システムの追求も>

「九章」には不十分な点も多いが、このプロジェクトにより、中国の強力なイノベーション能力が実証されたことは間違いない。

ネブンはこう述べている。「私たちが恐れているのは......開発競争でアメリカが未知の中国企業に敗れることだ。中国は、戦略的に重要と見なした分野に途方もない資源を投入できる」

中国の野心が膨らむ一方で、アメリカの意欲が減退したように見えると、CNASのエルサ・カニア上級研究員は言う。

「市場に全てを委ねておけば十分で、政府が首を突っ込む必要はない、という発想が根を張り、それがイデオロギーのようになっている。科学や教育に投資することへの反発も強い。本来は、たとえ中国が量子科学の研究を推進していなくても、アメリカは基礎科学にもっと投資して......未来の人材を育成しなくてはならない」

アメリカで量子コンピューター研究にどのくらいの資金が投じられているかは、はっきり分からない。研究開発支出に占める政府の割合は以前より低下しているが、「民間部門を含めれば、アメリカの研究開発支出は世界のどの国よりも多い」と、CSISの国防予算分析部門の責任者トッド・ハリソンは言う。

ただし、民間企業の研究に基礎研究はあまり含まれていない(長期的に見て最も大きな恩恵をもたらすのは、しばしば基礎研究なのだが)。

結局、量子コンピューター研究でも、軍が中心的な役割を担うことになるのかもしれない。軍は、これまでもインターネットなどの画期的なテクノロジーを生み出してきた。

機密扱いではない研究開発への軍の資金拠出はおおむね減っていないと、ハリソンは言う。国防総省はそのほかに、機密扱いの量子コンピューター研究にも資金を投じている可能性が高い。

ワシントン・ポスト紙は、元国家安全保障局(NSA)職員のエドワード・スノーデンによる内部告発に基づいて、NSAが「暗号面で有益な量子コンピューター」の開発に約8000万ドルを費やしていると報じている。

量子コンピューターでも解読できない暗号システムへの転換
「九章」を開発した中国科学技術大学の潘建偉 DICKSON LEE-SOUTH CHINA MORNING POST/GETTY IMAGES

量子コンピューターの実用化にはまだ時間がかかりそうだが、秘密保持について心配するのに早過ぎるということはない。

NSAなどの情報機関は、膨大な量の暗号化データを収集していると考えられている。いずれ量子コンピューターによって解読できると期待してのことだ。そして、これらの機関は、敵対勢力が暗号を破れるようになることを恐れ始めている。

そうした懸念を受けて、アメリカでは新しい暗号システムを導入する計画が持ち上がっている。NSAは2015年、量子コンピューターでも解読できない暗号システムへの転換を目指す方針を打ち出した。

「量子コンピューターによりコンピューターの能力が高まったとき、既存のインターネット・セキュリティーと暗号技術では対処できないことが明らかになった」と、NSAの広報担当者は科学ジャーナリストのナタリー・ウォルチョバに語っている。

米国立標準技術研究所(NIST)は2017年、量子コンピューターによっても破られない暗号方式の公募を開始。2020年には、その候補を15まで絞り込んだ。

現在、最も人気があるのは「格子暗号」と呼ばれる方式だ。これは、既存の公開鍵暗号とは数学的基盤が全く異なる方式である。

もっとも、政府機関などの組織に、新しい暗号方式への移行を受け入れさせるのは簡単ではない。脅威が差し迫っていなければ、人はどうしても現状でよしとしてしまう。

「人々はいまだに、90年代に破られた暗号技術に基づいたブラウザを使い続けている」と、アーロンソンは言う。「悲しいことだ」

<2021年2月16日号「いま知る 量子コンピューター」特集より>





電気だけで飛ぶ宇宙ロケットを開発中の79歳物理学者
2021年 2/14(日) 12:30配信

Forbes JAPAN
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現代の宇宙船の大半は、ロケット燃料を燃やすことで打ち上げや操作を行っているが、将来的には、電気のみで飛ぶロケットが誕生するかもしれない。

マッハ効果ロケットエンジン


カリフォルニア州立大学フラトン校の名誉教授で物理学者のジェームズ・ウッドワードは、NASAの「NIAC(NASA Innovative Advanced Concepts、革新的先進コンセプト)」プログラムから研究資金を得て、同僚たちとマッハ効果を応用したロケットエンジンを開発した。

マッハ効果とは、オーストリアの物理学者、エルンスト・マッハが提唱したもので、アインシュタインの相対性理論にも影響を与えた理論だ。ウッドワードが開発したロケットは、初期テストで良い結果を出し、現在はフェーズ2のテストを実施中だ。

ウッドワードは、この新たな推進システムが太陽系内だけでなく、星間飛行を可能にする技術だとしており、実現すれば宇宙科学における大発明となるだろう。

彼が開発したのは、電気を加えると膨張と収縮を繰り返すピエゾ結晶を用いた技術で、大量のピエゾ結晶に電気を通し、推進力を生むものだ。物質をある瞬間は重く、次の瞬間は軽くすることができれば、ニュートンの運動の第3法則を応用し、物質を後ろに押し出すことで推進力を生み出すことが可能になる。

ウッドワードによると、マッハ効果を用いた小型エンジンは、1台で100ミリニュートン程度の力を生み出すという。机の上に置いたリンゴは、重量によって1ニュートンの力を机にかけている。つまり、宇宙船を飛ばすには、莫大な数の小型エンジンが必要になる。

現在開発されているマッハ効果を用いたエンジンは、一辺が6センチの立方体だ。ウッドワードによると、エンジンをより効率的にすることで推進力を向上することが可能で、宇宙船の内部や周囲に必要な数だけ積むことができるという。


太陽系の外にも行ける画期的技術

マッハ効果を使ったロケットは、究極のEVとも呼べる電動の宇宙船を実現し、太陽系の外まで飛行することが可能になる。将来的には、原子力発電を用いることになるだろう。

ウッドワードによると、まず衛星での利用が考えられるという。現状、衛星は化学ロケットで軌道を周回したり、アラインメントを補正している。電気で推進するロケットエンジンを使えば、衛星の寿命を大幅に伸ばすことが可能になる上、これまでのように大きなパワーやスケールアップが必要なくなる。必要な電力は、ソーラーパネルが供給してくれる。


NASAは、ピア・レビューと実験結果の再現性を研究資金提供の条件としており、今後は北米の様々な分野の科学者やエンジニアがウッドワードの実験結果を検証することになる。

その中には、Michelle BroylesやオンタリオにあるHathaway ResearchのGeorge Hathaway、NASAと契約している科学者、米海軍調査研究所所属の航空宇宙エンジニアであるMike McDonaldなどが含まれる。

これらのメンバーがウッドワードの実験結果を実証できれば、NASAは成功確率の高いテクノロジーに資金を提供したことになるが、有望でも最終的には行き詰まる可能性もある。

現在79歳のウッドワードは、血液のがんであるホジキンリンパ腫の治療を受けている。彼が「ギズモ」と呼ぶ新エンジンの数年後の姿を尋ねると、少し困惑した表情を浮かべたが、こんな答が返ってきた。

「まだあまり考えたことがないが、このロケットエンジンによって太陽系外への飛行が比較的容易で低コストになるので、太陽系外をじっくり見てみたい。地球から比較的近くにあるプロキシマ・ケンタウリに行ってみたい」

ウッドワードは、マッハ効果を使ったエンジンの開発に、人生の大半をつぎ込んできた。きっかけは、1967年に衛星が奇妙な軌道を周回するのを目撃したことと、ニューヨーク大学の物理学教授から、「ある分野で世界トップを目指すのであれば、非常に難解な課題に挑戦し、長年その研究に取り組むことだ」と言われたことだという。

ウッドワードは、自身のこれまでの成果と努力については謙虚だ。「天才のなせる業だと言いたいところだが、実際は運に恵まれただけだ」と彼は言う。

ウッドワードの実験結果を再現し、衛星や宇宙船に実用できるだけの規模にスケールアップするには、驚くほどの運と天才的な才能、それに粘り強さが必要になるだろう。成功する確率は決して高くない。検証を行っているMike McDonaldは、10に1つから1000万に1つの確率だと述べた。

しかし、暗闇で射撃をするようなものであったとしても、より機能的な宇宙飛行の実現につながるのであれば、挑戦する価値はあるだろう。

John Koetsier




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紫外線で発電する植物由来の新素材「AuREUS」は、再生可能エネルギーの“民主化”を目指す


フィリピンの27歳の大学生が発明した新素材「AuREUS」(オーレウス)は、紫外線からエネルギーを生み出す廃棄農作物由来の新素材だ。調光レンズとオーロラ、そして薬草から着想を得たというこの技術はどう生まれたのか。そして、AuREUSが目指す再生可能エネルギーの民主化とは。開発者のカーヴェイ・エーレン・メグに訊いた。

NATURE 2021.01.31 SUN 15:00 TEXT BY ASUKA KAWANABE


フィリピンの大学生であるカーヴェイ・エーレン・メグが新しいソーラーパネルのアイデアを思いついたのは、小雨が降るある曇天の日だった。その日、調光レンズのメガネをかけていた彼は、日が陰っているにもかかわらず自分のレンズの色が暗く変化したことに気づいたのだ。

調光レンズは普通、紫外線の量に反応して色を変化させる。レンズの色が変わったということはつまり、曇りの日でも十分な量の紫外線が地上に降り注いでいるということだ。マプア大学で電気工学を専攻する彼は、すぐさまこの紫外線を使って曇りの日でもエネルギーを生み出す発電方法を考え始めた。曇りの日でも太陽光から電気を生み出す、廃棄農作物由来の新素材「AuREUS」の始まりである。

オーロラと薬草

温室効果ガスを排出しないクリーンな発電技術として太陽光発電が気候変動対策としても注目されるなか、天候や日光の照射時間に左右されずに安定して電力を供給できる発電技術の開発は急務になっている。これまで、バクテリアを使った太陽光発電から宇宙太陽光発電まで、天候に左右されない発電技術はいくつも考案されてきた。実際、紫外線を使った発電技術もすでに複数の企業が開発している。

だがメグにとって壁となったのは、そうした技術に必要なペロブスカイト構造と呼ばれる特殊な結晶構造をもつ化合物と、それを処理するための装置が自国で手に入りづらいことだった。そこで彼は、紫外線をまず可視光線に変換し、それを従来の太陽光発電のメカニズムによって電気に変える方法を考えた。

「たまたま観ていたオーロラのドキュメンタリーから着想を得ました」と、彼は言う。オーロラの発光現象の裏では、大気中の粒子が宇宙から降り注ぐ高エネルギーの粒子を低エネルギーに変換しているが、同様の仕組みを利用して高エネルギーの紫外線を低エネルギーの可視光線に変換すればいいのではないか、と考えたのだ。

そして、この変換に使う樹脂基盤の材料に、AuREUSのもうひとつの革新性がある。彼が使ったのは、廃棄予定になっていた農作物なのだ。

「農作物を使うアイデアは、祖母との思い出から生まれました」と、メグは言う。「小さいころから祖母が薬草を栽培するのを手伝っていたのですが、彼女が傷口の消毒薬として使っていたウコンのエキスに紫外線を可視光に変換する粒子が含まれていることを知ったのです」

ウコンのほかにも使える素材はないかと、メグは地元フィリピンで採れる作物約80種類を試し、結果として長時間の使用にも耐えうる9種類の作物を選びだした。作物をアップサイクルしてソーラーパネルをつくるという仕組みは、気候変動で増えている台風や異常気象によって甚大な被害を受ける地元の農家の助けにもなる。

「利用できる作物はまだ限定的ですが、現在はあらゆる生分解性の素材から同じ樹脂基盤をつくる方法を研究しているところです。これによって、農業以外で発生する廃棄物も積極的に活用できるようになればと思っています」と、メグは言う。

AuREUS開発時のスケッチやプロトタイプ。調光レンズやオーロラ、薬草から着想を得たというメグは、「アイデアはときに最もありそうもない場所、瞬間、出来事から生まれることがあります」と話す。PHOTOGRAPH BY AUREUS


建物や乗り物、繊維への応用も

完成したAuREUSは、試験でエネルギー変換効率(光を電気に換える割合)が48%に相当する結果を出した。一般的な太陽光発電のエネルギー変換効率が10~25%であることを考えると、大きな飛躍だ。とはいえ、メグは性能のさらなる向上を目指しており、ゴールとする発電効率は従来の太陽光発電パネルの3倍だという。

また、散乱した紫外線を使って発電できるAuREUSは従来のソーラーパネルのように平面上に設置する必要がなく、曇りや雪の日でも十分な効果を発揮するという。さらに、半透明でさまざまな形状に成型できるというその特性を考えると、建物や乗り物、繊維などへの応用も考えられる。

メグがこの技術を使った最初のプロジェクトとして考えているのは、台風の影響を受けにくい最先端の屋内農場施設の建設だ。壁や天井にAuREUSのパネルを設置することで、厳しい天候から作物を守りながら発電し、土地を有効活用するのが目的だという。


左は従来の太陽光発電所、右はAuREUSの技術をビルの窓に使った場合を表す。エネルギー量をほぼそのままに設置面積を大幅に縮小できるので、都市での活用にも向いているという。 ILLUSTRATION BY AUREUS


人々の手に届いて初めて「ソリューション」になる

2年かけて開発されたこの技術は、次世代のエンジニアやデザイナーの支援・育成を目的とする国際エンジニアリングアワード「James Dyson Award 2020」に新設された「サステナビリティ賞」を受賞した。しかし、メグにとって発明はほんの始まりでしかないという。

「わたしにとって、発明は旅の半分にすぎません。残りの半分は、その発明を最も恩恵を受けるであろう人々のもとに届けることです。そうして初めて、自分の発明がソリューションに変わるのです」


James Dyson Award 2020による紹介動画。VIDEO BY JAMES DYSON FOUNDATION

彼が目標とするのは、再生可能エネルギーの「民主化」だ。コンピューターやデータがこの数十年で大企業や研究機関だけが使える技術から個人が利用できるものへと変わったように、再生可能エネルギーも一般の人々が活用できるものになればとメグは考えている。

「AuREUSがあれば、再生可能エネルギーをより身近なものとして提供できるようになると思います。そうすることで、社会全体がサステイナビリティの概念を受け入れ、実現する役に立てると考えています」

※『WIRED』による太陽光発電の関連記事はこちら。




ふしぎなふるまいを見せる6桁の数字


ここに、ふしぎなふるまいを見せる6桁の数字があります。「142857」という何気ない自然数が、単純なかけ算で、面白い現象を見せてくれるのです。

142857に、1、2、3、4、5、6を順にかけてみます。

 142857 × 1 = 142857

 142857 × 2 = 285714

 142857 × 3 = 428571

 142857 × 4 = 571428

 142857 × 5 = 714285

 142857 × 6 = 857142

この計算で、どのようなことが起こっているでしょうか。

それぞれの積には1、4、2、8、5、7の6つの数字しか出てきていません。かけ算をする順序を変えて、

 142857 × 1 = 142857

 142857 × 3 = 428571

 142857 × 2 = 285714

 142857 × 6 = 857142

 142857 × 4 = 571428

 142857 × 5 = 714285

と並べ替えてみましょう。鮮やかに規則性が浮かび上がります。

142857を順序を変えずに巡回させると6通りの数になりますが、その6通りの数がすべて現れています。この142857の正体は何でしょうか。そして、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

142857には、さらにふしぎなことがあります。こんどは、142857を142と857に2等分して足してみましょう。

 142 + 857 = 999

と答えに9が並びます。

142857に、2、3、4、5、6をかけてできた数でも、同じ現象が起こります。

 285 + 714 = 999

 428 + 571 = 999

 571 + 428 = 999

 714 + 285 = 999

 857 + 142 = 999

と、すべて和が 999 になっています。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

こんどは、142857を14と28と57に3等分して足してみましょう。

 14 + 28 + 57 = 99

と和に9が並びます。

さらに、142857を1、4、2、8、5、7に6等分して足してみましょう。9になるでしょうか。

 1 + 4 + 2 + 8 + 5 + 7 = 27

となって、残念ながら9にはなりません。自然数を6個も足すのですから、9にならないのは自然なことかもしれません。しかし、この足し算をもう1回繰り返し、27の各位の数を足すと、

 2 + 7 = 9

となります。142857の6等分も9に関係しています。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

これらの疑問を出発点として、数のふしぎな世界を探求してみましょう。

著者 西来路文朗(さいらいじ・ふみお)
1969年、広島県生まれ。大阪大学大学院理学研究科博士課程数学専攻単位取得退学。博士(理学)。専門は整数論。賢明女子学院中学校・高等学校の教諭を経て、現在、広島国際大学工学部住環境デザイン学科教授、広島大学非常勤講師。著書に『Liberal Arts 基礎数学』(京都廣川書店、青木宏光氏との共著)。

著者 清水健一(しみず・けんいち)
1948年、兵庫県生まれ。岡山大学理学部数学科卒業。博士(理学)。専門は整数論。賢明女子学院中学校・高等学校の教諭を経て、現在、岡山大学、岡山理科大学非常勤講師。著書に『大学入試問題で語る数論の世界』(講談社ブルーバックス)、『詩で語る数論の世界』(プレアデス出版)がある。

二人の共著による前著『素数が奏でる物語』






AIは敵か「人類は滅びる」英オックスフォード大哲学者の憂鬱
4/18(日) 18:00配信


AIロボットは人類の敵か味方か

 前回は「AI(人工知能)脅威論」を否定するロボット研究者、石黒浩・大阪大学教授の壮大な未来予想に圧倒された読者も多いだろう(関連記事「AIは敵か 石黒浩教授の確信「やがて宇宙戦争が始まる」」参照)。今回はAI脅威論の権威であるスウェーデン出身の哲学者、ニック・ボストロム英オックスフォード大学教授が対論を展開する。AIを危険視した英国の宇宙物理学者、故スティーブン・ホーキング博士や、米国の実業家イーロン・マスク氏の思想に大きな影響を与えたとされる人物である。果たしてAIは人類の敵か味方か――。

【写真】哲学者で英オックスフォード大学教授のニック・ボストロム氏。著書にAIの脅威を分析した『スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運』(日本経済新聞出版社)などがある

* * *

――チェスや囲碁では、世界のトップ選手であってもAIに歯が立たなくなりました。ボストロムさんは、そのうち「盤上の遊び」では済まなくなると警鐘を鳴らしています。

ニック・ボストロム英オックスフォード大学教授:囲碁やチェスといった特定の機能に特化したAIに続いて、機能を限定しない汎用的なAIが人間の知性に追いつき、追い越していくことになるでしょう。

――それはいつごろですか。

ボストロム氏:明言はできませんが、現在、生きている人の多くがそれを目撃することになると思います。人類は歴史上、最も重大な転換期を迎えます。

――なるほど。

ボストロム氏:ご存じの通り、生物としての人間を特徴づけているのは高い知能です。大きな脳を駆使して様々な技術を発明し、複雑な社会を築いてきました。ところが地上で長きにわたり知性の頂点にいた人間は、AIにその地位を奪われることになります。人間に代わり、AIがものすごいペースで発明を始め、先端分野を切り開いていくでしょう。

 もちろんすばらしいことはたくさん起きるはずです。一方で人類は絶滅するリスクを抱え込むことになります。

――物騒です。

●AIが一瞬で超知能に変貌する

ボストロム氏:人間レベルの知能に追いついたAIは、その後、急速に自己改良を重ねて「知能爆発」を起こします。そして人間の知性をはるかに超えた「スーパーインテリジェンス(超知能)」へと変貌を遂げます。人間の知能レベルを獲得してから超知能に達するまで、極端な場合、数分から数日しかかからないかもしれません。

 突如出現した超知能は人間の関心事や価値観、意図とは全く異なる振る舞いを見せる恐れがあります。超知能を「人間の側」にとどめておくことができなければ、私たちは太刀打ちできません。死滅させられる恐れすらあります。AIを人間と調和させる必要があり、そのための研究がすでに各地で始まっています。超知能が出現する前に私たちはAIを適切に制御する方法を見つけなければなりません。

――制御に失敗すれば、超知性はどのようにして人類を絶滅に追い込む恐れがあるのでしょうか。

ボストロム氏:なんでもいいのですが、例えばクリップを大量生産するという目的を超知能に設定したとしましょう。書類などをまとめるのに使うあのクリップです。十分な供給量に達すれば、人間はクリップ工場での生産を止めようとするはずです。ところが超知能は量産を妨げる存在だとして、人間を殺し始めるかもしれません。殺りくした人間を含めて地球上のありとあらゆるモノを資源として扱い、地球全体をクリップにしようとする可能性があります。

――地球を膨大な量のクリップに変えたら、その次はどうなるのですか。

ボストロム氏:地球の資源を使い尽くせば宇宙に進出して、宇宙全体をクリップにするかもしれません。このように極端に知能が高い超知能は、極端に最適化された目標達成方法を選択する恐れがあります。

――人類の滅亡を回避する方法はありますか。

ボストロム氏:超知能に目的を設定する際に、慎重を期することです。人間の価値観や幸福というものを盛り込む方法を見つける必要があります。入力を誤ってしまうと、止めることは不可能です。やり直しは利かず、2回目のチャンスはありません。

――ボストロムさんの研究は、AI脅威論を唱えるスティーブン・ホーキング博士やイーロン・マスクさんの思想に大きな影響を与えたと聞いています。連絡は取ったりしていますか。

ボストロム氏:ホーキング博士はすでに亡くなっていますが、マスクさんとは時々会う機会があります。

●ロボット同士の戦争のほうがまし

――生前のホーキング博士や、マスクさんは人間が介在することなく、AIが自動的に標的を見つけて攻撃する自律型兵器の開発に反対する公開書簡に署名しています。イスラエルなどではすでに実用化が始まっているようです。

ボストロム氏:自律型兵器の開発・使用を制限する国際条約の制定を目指す動きがあるのは承知しています。国際条約とまでいかなくとも、殺傷の判断をAIに丸投げするのではなく、人間の判断を介在させなければならないという国際規範の醸成を目指す動きもあります。ただ私はこうした運動にはさほど関与していません。

――なぜですか。自律型兵器の研究が、将来的に超知能による人間の殺りくにつながるかもしれませんよ。

ボストロム氏:未来の戦争が自律型兵器の戦いになることが本当に悪いことなのか、議論が分かれるからです。世の中が平和であることが望ましいのは言うまでもありませんが、戦争が避けられないのであれば若い兵士が殺し合いを繰り広げるより、ロボット同士が戦ったほうがましだとも考えられます。

――なるほど。ところでAIが進化し、将来的に人間との区別がつかなくなると思いますか。

ボストロム氏:それは人間の定義によるでしょう。AIに道徳観念や意識があり、自らの身を案じるようになれば、生身がなくともそれは人間だと言えるかもしれません。

▼解説

 国連の専門家会議が2019年に「自律型兵器は認められない」とする指針を採択しましたが、法的拘束力はありません。すでにイスラエルが無人攻撃機「ハーピー」を実用化しており、中国やインドに輸出しています。地上で遠隔操縦する兵士がミサイルの発射ボタンを押す米国製の無人攻撃機「プレデター」などとは異なり、ハーピーは人間の承認を得ることなく標的を自動で発見・破壊できる自律型兵器です。韓国も機関銃を備えた自律型の哨兵ロボットを開発し、北朝鮮との国境沿いに配備している可能性が指摘されています。

 こうした自律型兵器について、AIを危険視するスティーブン・ホーキング博士やイーロン・マスクさんが明確に反対しているのに対して、同じAI脅威論者であるニック・ボストロムさんが反対の立場を取っていないのは興味深いところです。各国で自律型兵器の開発・配備が進めば、ボストロムさんが指摘する通り、未来の戦争はロボット同士の戦いとなり、兵士の犠牲を減らせるかもしれません。

●ロボット兵士なら少女でも撃ち殺す

 ただし自律型兵器に搭載されたAIは無慈悲です。自律型兵器に関わる政策を研究する米陸軍出身の軍事アナリスト、ポール・シャーレさんは著書『無人の兵団』(早川書房)の中で、アフガニスタンに派兵されたときの体験を記しています。山岳部で部隊を率いていたときに5、6歳の少女と出くわしたそうです。少女はヤギを追っているふりをしながら明らかにシャーレさんらを観察しており、反政府武装勢力タリバンに無線で位置を報告していました。ほどなくして、シャーレさんらはタリバン兵の襲撃を受けます。

 敵方のために偵察しているのが5、6歳の少女であったとしても、国際法上は戦争行為に関与しているとして合法的に撃ち殺せます。射殺していればタリバンの襲撃を受けることも、部下を危険にさらすこともなかったはずです。しかしシャーレさんは人道上あの場面で幼い少女を殺害するという選択は取れなかったと、交戦現場を離脱してから思います。これが自律型兵器であれば、ちゅうちょなく射殺していたはずだとも考えるようになりました。

 1989年の天安門事件でも、民主化を求める学生らの鎮圧を拒否した中国軍の将校がいました。「自国民を殺したくない」という理由からです。こちらも自律型兵器であったら、どんなに非人道的な命令であっても服従していたでしょう。独裁者が反抗的な民衆を殺りくしたり、民族浄化を遂行したりするのには、もってこいの兵器と言えます。道徳心を持たぬAIに人間の殺傷を任せるのは人道上、問題があるのかもしれません。

 このように自律型兵器には一長一短があります。AI脅威論者の間でも、自律型兵器の開発・使用を禁止すべきかどうか、判断が分かれるのはこのためです。あなたはどう思いますか。

吉野 次郎





全固体電池研究ブーム!突破口を開いた研究者が語る最前線

2018年06月18日 トピックス
東京工業大学の菅野了次教授


 高容量で、数分でフル充電・・・と、電気自動車(EV)にとって夢の電池のように語られる〈全固体電池〉。現在のリチウムイオン電池の電解液を固体電解質に置き換えたもので、実現すればEV市場拡大の後押しになる。15日には、23社もの民間企業が参加する産官学プロジェクトが発足した。大きなムーブメントのきっかけは、東京工業大学の菅野了次教授が2011年以降に発表した新しい固体電解質だ。研究はどこまで進んでいるのか、菅野教授に話を聞いた。



夢の電池へ

 -固体電解質には、酸化物系やポリマー系もあります。菅野教授が研究している硫化物系材料とどう違うのですか。
 「現時点で、リチウムイオン電池を上回る可能性を持つのは、硫化物系だけだ。硫化物系で、電解液並みや、電解液よりもリチウムイオンが動きやすい(イオン伝導率の高い)固体電解質が見つかり、高出力電池の可能性が見えた。酸化物系は、まだプロセス開発の段階に入れていない。ゲルポリマーは作りやすく、電解液より少し固体化するため安全になる利点がある。ただ、性能は従来のリチウムイオン電池とあまり変わらない。ドライポリマーはイオン伝導率が低く、60度C以上で使用する必要がある」

 -昨年来、企業だけでなく、慎重な印象のある研究者の方たちも、自動車向けの全固体電池について〈5年以内の実用化〉を言及しています。実現できますか。
 「世界を代表する自動車メーカー(※編集部注:トヨタ自動車)が実用化を宣言したのだから、全固体電池を搭載した車が出てくると思う。自動車メーカーらや新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)のプロジェクトも始まった。このプロジェクトで、生産プロセスの開発が進む。我々、材料研究の側は、さらに特性のいい電池を実現するための研究を続ける」



東京工業大学・菅野了次教授提供

【リチウムイオン電池と全固体電池の基礎知識】
 リチウムイオンが正極と負極の間を行き来することで充放電が行われる電池。リチウムイオン電池は電解液を介して、全固体電池は固体電解質を介してイオンが行き来する。全固体電池は以前から安全性が求められる限定された用途で使われていた。菅野教授の発見により、高容量で高速充放電の可能性が見い出された。



可能性を広げる

 -その時に、電解液以上にイオン伝導率の高い固体電解質も使われますか。

 「最初に量産化される車載電池にどんな材料が使われるかわからないが、電解液以上の材料は発見されて日が浅い。5年以内は難しいかもしれない。だが、イオンの動きやすさが電解液の10分の1や100分の1レベルの材料もある。100分の1の材料は、すでに大量供給できるメーカーがある。一旦、生産プロセスができて電池が量産化されれば、次の段階でより性能の高い固体電解質に置き換えながら進化できる。また、初期の固体電解質も電池性能を高められる可能性を持っている」

 -2011年以降、菅野教授は有望な固体電解質を相次ぎ発表し、16年には従来比3倍の出力特性を持つ全固体電池も作成しました。どの材料が車載電池の材料になりますか。

 「これまでを振り返ると、2011年にゲルマニウムや硫黄、リチウムなどで構成する材料(LGPS物質系材料)で、固体の中でもイオンがよく動く材料を見つけた。16年には、これに塩素を加えて、電解液の中よりもイオンがよく動く材料を発見した。17年には、イオン伝導性がそこそこ高く、高価なゲルマニウムや扱いの難しい塩素を使わない材料を見つけた。それぞれ特徴が違う。現段階では、どれが実用化されるかではなく、バリエーションを広く持つことで、電池の可能性が広がることに意義がある」


組み合わせが重要

 -全固体電池は充電時間が数分間になるのは本当ですか。

 「イオンの流れがよくなることで、充電の速さもよくなる傾向に動く。ただ、例えば、数分のように、どこまで速くなるかは、電圧も関係する。良い固体電解質だけあれば解決するものではない。今後、電極や電解質の組み合わせなどがいろいろと検討されることで、実際にどこまで速くできるかわかってくる」

 -蓄電できる容量はどうでしょうか。

 「まず、電池パッケージがシンプルになって、不要なものがなくなり、同じスペース当たりの容量は増える。現在のリチウムイオン電池は、正極と負極、電解液、セパレーターが一つのセットで、円筒型やラミネート型などのセルをつくり、セルを並べて電池を作成している。全固体電池はセパレーターがいらない。また、セル単位で分けずに、正極と固体電解質、負極を繰り返し積み重ねて電池を作成できる。同じ容量であれば、電池はコンパクトになる」

 -リチウムイオン電池では使えない電池材料が使えることも、容量アップに貢献すると聞きます。

 「当研究室では実験で実証していないが、電極の選択肢が広がる期待はある。量産初期の全固体電池に新しい電極材料の採用は間に合わないかもしれないが、他の方法でも容量を増やせる可能性がある。電池が作動する時の電圧を少しでも高められれば、容量を増やせる。また、正極の電解質を厚くできれば、その厚さに伴って(電池内を行き来するリチウムイオンが増えて)容量が増える」



東京工業大学・菅野了次教授提供

上の図は、材料研究で明らかになった全固体セラミックス電池の可能性。自動車の航続距離も加速性能も大幅に引き上げられることを示唆した。

なぜハードルの高い車を目指すのか

 -一般的に自動車は新しい部品や材料の採用に慎重で、投資も巨額になります。車載電池よりも採用しやすい用途があるのではないですか。

 「これまで、新しい電池が既存の電池を置き換えたことはない。自動車のエンジン始動は今も鉛電池を使う。新しい電池が登場する時、必ずと言っていいほど同時に新しい用途が誕生してきた。リチウムイオン電池であれば、パソコンやスマートフォンだ。今の電池に課題を持つ自動車が、全固体電池にとって最も大きな目標となる。硫化物系の固体電解質の全固体電池は、最も車載電池に求められる安全性や容量をクリアできる可能性が高いが、要求に応えるには、第1弾が出て、第2弾以降へと続く必要がある。今は、第1弾を出すために、生産プロセス開発も含めて突き進んでいくこと重要だ」

 -今は実用化に向けてどんな段階ですか。

 「材料研究でわかってきた全固体電池が最大限特性を発揮した時の理想状態に対し、大型電池にした時の性能限界をどこまで近づけられるか。今後数年間の取り組みが非常に大事だ。リチウムイオン電池との差が小さければ、あえて全固体電池にする必要はなくなってしまう。全固体電池の性能の限界を引き上げるには、プロセス開発や材料開発、メカニズム解析といった各分野の努力に加え、分野間の〈会話〉が求められる。一つの発見を他の分野に素早く展開して、研究の方向性などをお互いが調節する。これがうまくいって初めて、全固体電池の研究をスピードアップできる。日本は研究者の層が厚い。新しい電池が出てくる時は、必ず日本から出てくる」

【菅野教授が発見した固体電解質】

2011年 リチウムとゲルマニウム、リン、硫黄で構成されるLGPS物質系で、イオン伝導率の高い固体電解質を発見。
2016年 LGPS物質系材料に塩素を加えることで電解液に比べ2倍のイオン伝導率の固体電解質と、広い電位窓を持つ固体電解質を発見。この電解質を使い、従来に比べ3倍の出力特性を持つ全固体電池を開発。
2017年 高価なゲルマニウムや、特異な組成となる塩素を使わずに、電解液に匹敵するイオン伝導率の固体電解質を発見。

EVドミノ始めました。

連載「EVドミノ」掲載記事
①全固体電池研究ブームをつくった研究者が語る最前線/東京工業大学・菅野了次教授
②電池を左右する1ナノメートルの世界を解明へ
③コバルト、リチウム・・・資源不足の事実と誤解
④EV航続距離を2倍に?!巨大プロジェクトの全貌





超伝導量子コンピューターのプロトタイプ
「祖冲之号」の開発に成功 中国

5/15(土) 17:12配信


CGTN Japanese

二次元超伝導量子ビットチップのイメージ写真。中国科学技術大学研究グループ提供(2021年5月10日提供)。(c)CGTN Japanese

【5月15日 CGTN Japanese】中国科学技術大学研究グループはこのほど、超伝導量子ビット数が世界最多の量子コンピューターのプロトタイプ「祖冲之号(Zuchongzhi)」の開発に成功しました。「祖冲之号」は62ビット量子コンピューターであり、プログラム可能な二次元量子ウォークを実現しました。

「祖冲之号」の研究成果は7日、国際的に権威ある科学誌『サイエンス』で発表されました。量子コンピューターのプロトタイプ「祖冲之号」の開発成功は、超伝導量子システムにおける量子優位性の獲得、素材設計、薬物分析などの量子コンピューティングの開発についての技術面の基盤を築いたとされます。

「祖冲之号」の名は、西暦紀元5世紀から6世紀にかけての中国南北朝時代の著名な数学者、天文学者であり、世界で初めて円周率を小数点以下7位まで正確に精算した人物である祖冲之に由来します。

(c)CGTN Japanese/AFPBB News





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